Mary's Blood/Saki コラム後編!
Wednesday, July 24th 2013
Mary's Bloodメンバーからコメント!
HMV ONLINE をご覧の皆様、こんにちは!
Mary's Blood のちゃっきーこと SAKI です。
思いの丈を語りまくった 聖飢魔II コラムですが、余りの長さに前後編に分けて頂きました。
前編(前編はコチラ!)では 聖飢魔II 結成から ACE さんにまつわるお宝話まででしたが、後編はプログレッシブハードな有害から語ります。
蒸し暑い毎日のおともに読んでみて下さい!
では、後編スタートです!
7、ミュージシャンシップの充実
個人的には 『THE OUTERMISSION』では"害獣達の墓場" が好きだったりします。ヘヴィなリフに物悲しいメロディがなんとも言えず、胸に迫ってきます。大教典ではパーカッションによる間奏、通常ミサではエース清水による語りが間奏部で披露されていましたが、1999年の解散ミサ時においてはギターソロが挿入されています。エース清水独特の緩急の付いた美しいギターソロを堪能出来ますよ。
続いた 『有害』 はエロティックな歌詞をコンセプトに制作された大教典で、ミサツアーのセットのモチーフもそうした内容になっています。この大教典の中で特筆すべきは "嵐の予感" という名バラードの存在でしょう。これは解散ミサの際も2005年の再集結時にも演奏された曲で、基本的には切ないメロディの美しいバラードなのですが、その間奏におけるプログレッシヴさと間奏が終わる瞬間のギターの美しいハモりフレーズは必聴です。この大教典もキャッチーさのある "有害ロック" がしっかりと分かり易い部分を担う一方で、こうしたプログレッシヴで挑戦的な、ミュージシャンシップを発揮しているとも言える曲が多く収録されています。"ファラオのように" もシングルカットされた曲でしたが、こちらは "有害ロック" のようなストレートな曲ではなく、ゼノン石川のスラップの映えるファンクロックです。スラップと言えばベースが全編スラップで演奏する"THUNDER STORM"というシャッフルビートの曲も収録されているのですが、この曲のソロ明けにおいてライデン湯沢が金物のフィルで雷鳴を表現しているように聴こえます。そんなあたりにも表現力の高さを感じられるのではないでしょうか。
聖飢魔II といえばその見た目からしていわゆるイロモノバンドとして見られがちですが、通常のハードロックバンドであまり取り入れられなかった手法やアプローチを貪欲に取り入れてそれぞれが音楽性の高さをもって取り組んでいたのです。『BIG TIME CHANGES』 の時からそうした主張は盛り込まれていましたが、『有害』 をもってある種詰め込みがちなテクニカルさから、更に洗練された複雑さや計算された曲構成へ移行していく様子が少しずつ分かるような気がします。
8、PONK!!〜インテリジェント・メタルへの道程
9、原点回帰、魔王凱旋
そして 『PONK!!』 の次に制作されたのが 『メフィストフェレスの肖像』(B.D.3) で、B.D.4(1995年)にダミアン浜田やジェイル大橋、ゾッド星島といったかつての構成員を呼び集めて行った THE SATAN ALL STARS と題した黒ミサ(『オール悪魔総進撃 Satan All Stars』)の流れを受け、ジェイル大橋とダミアン浜田の楽曲も含んで制作されたのがこの 『メフィストフェレスの肖像』 です。『PONK!!』 とは対照的に、ハードロック調の曲で固められているという印象で、意識して様式美メタル的アプローチを取り入れているのが分かります。最初期の楽曲である "地獄の皇太子" をタイトルからも彷彿とさせる "地獄の皇太子は二度死ぬ" はツインギターが映える曲で、ルーク参謀の早弾きがギターソロでは炸裂しています。ただ速度のみを追求しているのではなく、きちんと早弾きの中にもメロディを感じさせるのは稀代のメロディメーカーたる本能を感じます。この大教典からは "野獣" が小教典としてカットされますが後に出版された 『ひとでなし』 で複数の関係者が述べていることとして、曲としての完成度はより高い曲があったのにこれがカットされたのが不思議であった、という記述があります。この曲はそもそもアマチュア時代の曲であって、もちろん確かにこの大教典では他にもよりメロディがはっきりしていて分かり易いものがあります。しかし、自分が推測することとして、この曲がカットされた背景としては先述の THE SATAN ALL STARS の模様を収録した活動絵巻での閣下とダミアン浜田の対談時に、最も思い入れの深い曲は、と尋ねられたダミアン浜田が "野獣" と述べていることから、この小教典カットは構成員からのある種恩返しの様なものがあったのではないでしょうか。これは特に閣下による比重が大きいと思いますが愚直なまでに悪魔の世界観を貫き通したことによって、大教典ごとのブレはあれども、地球デビューから地球征服を完了して解散するまでこのバンドは存続し、多くの支持者を今もなお得ているのでしょう。ダミアン浜田という悪魔が作り出した世界観があったからこそ、様々な音楽的アプローチ、様々なジャンルの曲を演奏したといえども、聖飢魔II に還元し帰結出来たのではないでしょうか。
この辺りからルーク篁の作曲比率が上がり、またそのメロディもよりキャッチーなものになっていきます。"GREAT DEVOTION" は様式美的なギターメロディで幕を開ける曲で、疾走感のあるサビが聴きどころであると思います。"HOLY BLOOD 〜闘いの血統〜" も同様に疾走感のある曲で、クリシェ進行の上で切なく進んでいくメロディが胸を打ちます。
10、ルーク篁というギタリスト
このルーク篁という悪魔について特筆すべきことは、そのメロディセンスであると言って間違いないでしょう。"WINNER!"、"MASQUERADE"、"BRAND NEW SONG"などキャッチーなメロディや"El.Dorado"、"1999 SECRET OBJECT"の様にギターロックの王道的なリフから始まる、ミサに欠かせない曲を多く書いたギタリストです。エース清水の作るリフとはまた違う雰囲気でもってストレートにギターのかっこよさを教えてくれる曲が多い様な印象です。激しさの中にも切なさや哀愁を感じさせるメロディが多く、後期の聖飢魔IIにおけるハードであってもきちんとメロディがあるという音楽的志向はルーク篁によるところが大きかったのではないでしょうか。"エガオノママデ"のように内省的でありながらも聴く者をその世界観に取り込んでいくような歌詞もその作詞の特徴であるでしょう。
ギタープレイに関してはオルタネイトの早弾きやスウィープを随所に織り込むテクニカルでフラッシーなプレイがよくクローズアップされますが、あくまでもメロディを生かすためのプレイであることがわかります。そうしたフラッシーなプレイばかりがクローズアップされがちですが、テクニカルな面で言えば早弾きも素晴らしいですがアルペジオの上手さに注意して聴いてみるべきでしょう。『BIG TIME CHANGES』に収録されている"NEVER ENDING DARKNESS"や小教典として発布された"悪魔のメリークリスマス"のイントロなどは非常に難易度が高いアルペジオです。元々フォーク好きでギターを弾いていたという背景からか、コードワークもアコースティックギターで用いるようなものも多く見受けられます。聖飢魔II以外の作品ですとCANTAの『流星と春の嵐』に収録されている"Rolling Days"のアルペジオはそのテクニックが惜しみなく披露されています。
ズバリ!ピックです!私は少し前からKiller Guitarsさんにエンドーサーとしてお世話になっていまして、日頃のメンテナンスもKillerさんでやって頂いてます。そしてもちろん私が重度の聖病患者であるのはもう皆様ご存知です(笑)そんなある時ギターを預けたら、ケースのポケットにこのピックが入っていたんです!なななんと、リペアの方が気を効かせて入れて下さったんです〜!

すっかり字がぼけてしまっていますが、これはそれからなんとなくお守りのように財布に入れて毎日持ち歩いているからです。するとなんだか自分まであんなに華麗に弾けてるかのように錯覚します。ルークさんのように全身から感情が迸るような熱いギター、弾けるようになりたいですネ。
11、『NEWS』、『MOVE』洗練された激しさへ
『メフィストフェレスの肖像』の次にリリースされた 『NEWS』(B.D.2) はハードロックが基調であることは変わらず、その上でコーラスが多用されたり、デジタリックな打ち込みが多用されるなどよりポップな面に対して振り幅を振った大教典です。これは10曲中7曲がルーク篁のペンによる大教典で、メロディがどれも洗練されていてサウンドのバランスも歌に比重が置かれ、ハードロック、ヘヴィメタルを聴いたことのない人でもすんなりと聴くことの出来る作品であるように自分は考えています。1曲目の "DEPATURE TIME" からいきなりデジタルなドラム打ち込みから始まり、それまでのものとは大きく雰囲気の変わった大教典です。"BRAND NEW SONG"、"真昼の月 〜MOON AT MID DAY〜" と小教典カットされた2曲はいずれも爽やかで耳に残る曲です。他の曲もバラードである "火の鳥 〜FIRE BIRD〜" を除いて、疾走感のある曲ばかりで一気に聴けてしまう印象です。ギターに着目すれば、アレンジ自体は以前にも増してシンプルであったりするのに、耳触りがよくそれでいて印象的なフレーズが増えたような印象です。"SAVE YOUR SOUL 〜美しきクリシェに背をむけて〜" のイントロフレーズなどもその代表と言えるでしょう。シンプルなアレンジ故にメロディのセンスが際立っているのではないでしょうか。ミサではルーク篁、エース清水両悪魔がコーラスをとり、圧巻のコーラスワークをみせる曲です。"真昼の月 〜MOON AT MID DAY〜"も同様にミサでは教典同様に3声の美しいハーモニーから始まるなど、それまでの楽曲とは違うアプローチや空気感が味わえます。そうした歌をメインに押し出したアレンジによってこの『NEWS』と『MOVE』はハードな音楽を聴いた事がないというリスナーの人にも受け入れ易い教典となっているのではないでしょうか。
この流れを受けて制作された 『MOVE』(B.D.1) も非常に曲のレベルが高く、ハードポップ的で聴き易い曲が多いのが特徴でしょう。今作はルーク篁が5曲、エース清水が4曲、ライデン湯沢が1曲というバランスです。このアルバムはジョー・リノイエらがプロデューサーとして関わったことからも、キーボード、ピアノの多い作風からも分かるように、『NEWS』 よりもよりポップな面が強調されていると言えます。バラードで始まってバラードで終わるというなんとも挑戦的な構成ですが、その "エガオノママデ" と "STILL ALIVE" のどちらも、ルーク篁のその後のバンドである CANTA に通ずるような胸を鷲掴みにされるような痛いくらいに感情を吐露する歌詞とメロディが刺さり、全くもって冗長な印象を与えることなく聴かせてくれます。イントロからフックのある変拍子で幕を開ける"人生ゲーム"もサビはスリリングなメロディ、リズムで胸にグッときます。そしてエース清水のセンス溢れる名バラード "サクラちってサクラ咲いて"、シャッフルのリズムが爽快でいてメロディに哀愁漂う疾走曲"スキャンダラスな絆"など、エース清水もその非常に高いポップセンスを見せつけてくれます。"サクラちってサクラ咲いて"では、ライデン湯沢独特のタメの効いた、というよりも休符を完璧に操ったような空間を生かしたドラミングも気持ち良いです。ジャジーな雰囲気のギターソロからラストのサビに入る直前のギターとキーボードのハモりの駆け上がっていく様子はこれ以上のギターハーモニーはないだろう、と思わせるほどの完成度です。ギターソロが全曲かっこいいのは当たり前ですが、"スキャンダラスな絆" のリフのかっこよさたるや。シャッフルの上で小難しく展開しているリフは計算されつくしていて、非常にかっこいいです。12、地球征服の完遂
そして解散の年、その集大成として発布されたのが 『LIVING LEGEND』(B.D.1) です。原点回帰として非常にストレートなヘヴィメタル的アプローチの曲から、"嵐の予感" を彷彿とさせるプログレッシヴパワーバラード "GO AHEAD!" も収録されています。とにかく純度の高いメタルアルバムであると言って間違いが無いと思います。それまでの活動や大教典での取り組みを高いレベルでヘヴィメタルにまとめています。もう、これは聴いてご覧なさいよ、という他にないんですけれど。特にギターに関して感じるところとして長官も参謀も互いに少しずつセンスが歩み寄っていったのではないかな、ということです。イントロからエース清水らしい豊かな響きのアルペジオで始まる幻想的な雰囲気の"FROM HERE TO ETERNITY"、ギターの高速駆け上がりのハモリが印象的な疾走曲"CENTURY OF THE RASING ARMS"、まさにルークの曲だ、とすぐ分かる明快なリフと悲しげで疾走していくサビの"REVOLUTION HAS COME"や"SILENCE OR VIOLENCE?"などそれぞれの曲が混ざり合って非常にバランスが取れていると思います。それぞれの曲が混ざり合って、非常に上手くバランスが取れていると思います。バンドではよくあることですが、それぞれの持ち寄る曲、アプローチといったものがそれぞれが予期せずに活動を経てそれぞれの血肉になっていくわけです。この大教典はまさにもう集大成という他ない作品でありと思っています。"HEAVY METAL IS DEAD" というタイトルとは裏腹にヘヴィメタル然とした曲のギターソロなんて、こんなソロ、一体エース清水以外の誰が考えつくだろう?というソロです。"GO AHEAD!" もスパニッシュなイントロ、リフ、雰囲気からプログレッシヴな間奏、メッセージ性の強い歌詞とメロディ、どれを取っても一分の隙もなく実にかっこいいのです。13、悪魔への恋文に寄せて
私は QUEEN が 聖飢魔II と並んで大好きというか愛していますが、どちらも最後のオリジナルアルバム(片方は大教典)にスパニッシュな雰囲気の大曲があるなんて、なんとなく運命を感じてしまいます。そして、どちらのバンドも最後の作品が最高傑作だと私は信じて疑いません。構成員、メンバーの活動してきた中での苦悩や来るべき解散、嫌が応でも感じるボーカルの死を前に、彼らはどんな想いでこの作品を作ったんだろう、って思ったら歌詞もメロディも違って聴こえませんか?それぞれが非常にレベルの高いミュージシャンであったことを裏付けるように、RX、face to ace、CANTA、デーモン閣下、大橋隆志、ダミアン浜田、そのいずれのソロ作品も最高にかっこいいですよ。もう 聖飢魔II は見られませんが、これを読んで少しでも興味を持って貰えていたらとても嬉しいです。そして構成員の皆様の各活動、是非応援して下さい。どれでもいいからCDを買ってみて下さい、全部かっこいいから!
聖飢魔II の大教典はリマスター版が4月と7月にリリースされることになっていますので、是非この機会に HMV ONLINE 様でお買い求め下さい。そして、そのギターワークの妙に、バンドのかっこよさに痺れてみてください。もう既に昔に発布された大教典をお持ちでも、当時の教典と比べてみるのもまた新たな発見に満ちています。それからついでに Mary's Blood の 『AZURE』 も是非よろしくお願い致します(笑)。
Saki
•2013/06/15(土)
会場 : 宮前市民館 大ホール※終了しました
•2013/06/17(月)
会場 : 目黒 鹿鳴館
•2013/06/28(金)
『KING KONG FESTIVAL IN SAITAMA』
会場 : HEAVEN‘S ROCK さいたま新都心 VJ-3※終了しました
•2013/07/27(土)
3rd MiniAlbum発売記念イベント「Birth of Queen Vol.2」
会場 : 渋谷 DESEO
•2013/08/03(土)
音食フェス『真夏の戦慄』
会場 : 心斎橋 KING COBRA
•2013/08/24(土)
"Electric Lady Loud"
会場 : 名古屋 ElectricLadyLand & ell.FITSALL & ell.SIZE
•2013/09/15(日)
『nonLinear Metal DynamiX Vol.23 in TOKYO』
会場 : 吉祥寺CRESCENDO
※終了しました
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