ジャコのDNA、名器と共に

Tuesday, June 4th 2013

オリジナル・メンバーであるジミー・ハスリップに代わり、ジャコの息子フェリックス･パストリアスが参加したイエロージャケッツ新作。ジャコの「あの」ベースも使用。



イエロージャケッツは1981年に結成。ロベン・フォード(g)の1978年アルバム『The Inside Story』に、ラッセル・フェランテ(key)、リッキー・ローソン(ds)、ジミー・ハスリップ(b)が参加したのがきっかけとされる。この4人をオリジナル・メンバーとして、1981年にアルバム『Yellowjackets』をリリース。

その後、サックス奏者マーク・ルッソが1985年〜1989年在籍し、1990年からはボブ・ミンツァ−が加入し現在に至る。

一方、ドラマーはリッキー・ローソンが1987年まで在籍し、その後ウィリアム・ケネディーが1999年まで参加。ピーター・アースキン、テリ・リン・キャリントンを経て、2001年よりマーカス・ベイリーが正規参加。2010年にはウィリアム・ケネディーが復帰し現在に至る。

そして、結成以来長きに渡りベースを担当したジミー・ハスリップが2012年をもって休養するにあたり、あのジャコ・パストリアスの息子であるフェリックス・パストリアス(1982年生まれ)が参加する事になった。

そんな活動歴32年を誇る、ジャズ･フュージョン界における老舗バンド、イエロー･ジャケッツのMackAvenue第2弾となる新作『A Rise in the Road』でのメンバー･チェンジは、イエロー･ジャケッツにとっての新しいマイルストーンと言えるだろう。バンドのメンバーは一同ハスリップが去ったことを残念がる一方で、これをグループの新しいステップとし、新メンバー、フェリックスを歓迎している事が伺える。

基本路線のイエロー･ジャケッツのサウンドは変わらず。近年のPOPでカラフルなコンポジションと演奏は往年のフュージョン･ファンの方にはど真ん中であり、イエロー･ジャケッツのイエロー･ジャケッツの音。ウエザー･リポート的な世界観も感じさせるM- 5あり、また、ハンコックの名曲“カンタロープ･”をもじったM-3 のようなナンバーも新鮮。タイトルはダジャレみたいですが、カンタロープのリズムと基本ラインをイエロー･ジャケッツ流にアレンジした演奏は、クールなグルーヴ感が粋。

またオーバー･ダブを極めて控え、ライブ感を重視した作品作りも注目。各曲の演奏も、作曲者のディレクションではなく、演奏者のインスピレーションを重要視したのだとか。また3曲では、話題のアンブローズ･アキンムシーレをフィーチャー。アキンムシーレはセロニアス･モンク･コンペで優勝して以来、話題を集めているが、その参加によって、本作がジャズな風合いも加えている。

従来からのコアとなるものは揺るぎなく、新たなる展開をみせる新作。ラストのI Knew his Fatherはジャコへのトリビュート、そしてフェリックスへの歓迎の気持ちを込めた楽曲。受け継がれるクロスオーバー･ミュージックがここにある。

ジャコの息子フェリックスが、蘇ったBass Of Doomをプレイ

ベースの美しいラインをフィーチャーしたスロー･バラード曲「（You Know）When it’s Time」で、フェリックス・パストリアスは父親ジャコが使っていたベースでプレイしている。

このベースは、1962年製のフェンダー・ジャズ・ベースで、サンバースト・カラーの、あの一番有名な「Bass Of Doom」と呼ばれる固体だ。これは、ジャコが19歳の時に質屋で90ドルにて購入し、自らの手でフレットレスに改造された。80年代にこのベースはボディがいくつもに粉砕され、ネック、ヘッド、指板も大きく損傷。それをリペアマンであるケヴィン・カウフマンとジム・ハミルトンが修復。マイク・スターンのアルバム『Upside Downside』でジャコはこの修復されたBass Of Doomを使用しているという。



その後、このベースは行方不明となり、現在はメタリカのベーシスト、ロバート・トゥルージロが所有している。今回のイエロージャケッツのレコーディングの為に、ロバートがフェリックスに貸したのである。ジャコのベースがこのように演奏、録音されるのは、ジャコの死後20数年経ってほぼ初めてのことのようだ。あの名曲「Remark You Made」を想起させる、紛れもないロマン溢れるジャコの音色、遺伝子が滲み出た感動の楽曲と言えるだろう。

Track List

• 1. When the Lady Dances (Bob Mintzer)
• 2. Civil War (Bob Mintzer)
• 3. Can’t we Elope (Russell Ferrante)
• 4. An Informed Decision (Russell Ferrante)
• 5. Longing (Russell Ferrante)
• 6. Thank You (Bob Mintzer)
• 7. Madrugada (William Kennedy)
• 8. An Amver Shade of Blue (Russell Ferrante)
• 9. (You’ll Know)When it’s Time (Russell Ferrante)
• 10. I Knew his Father (Bob Mintzer)

Personnel

Bob Mintzer (sax)
Russell Ferrante (p, key)
Felix Pastorius (b)
William Kennedy (ds, kep)

Ambrose Akinmusire (tp, M-3, 4, 8)