【HMVインタビュー】 THA BLUE HERB
Tuesday, May 1st 2012
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2011年2月、THA BLUE HERBのLIVEに焦点を当てた映像作品『PHASE3.9』のリリースと共に幕を閉じた活動第3段階目 PHASE3。それから10ヶ月、2012年が明けて間もなくTHA BLUE HERB RECORDINGSのオフィシャルサイト内に更新されたILL-BOSSTINOによるMONTHLY REPORTにより、活動第4段階目 THA BLUE HERBの再始動が宣言された。その10ヶ月の間に起こった筆舌に尽くせぬ出来事。誰もがその出来事以降それぞれに思考を繰り返し、もがき、少なからず生活を変容させてきた2011年。それはTHA BLUE HERBもまたしかり。その2011年を経て、THA BLUE HERBが再び姿を現す。また研ぎ澄まされた言葉とビートを携えて。 完成されたアルバム『TOTAL』は、これまでリリースしてきた作品以上に力強く、攻めている作品だ。ゲストはなし。ILL-BOSSTINOとO.N.Oの2人だけで作り上げられた。この作品は、どのような環境で、いかなる意識のもと作りあげられたのか? 今回は、ILL-BOSSTINO氏とO.N.O氏、両名揃ってお話を伺う事が出来た。お二人の『TOTAL』と名付けられたこの作品に対する熱い想いが伝わってくるはずだ。最後まで腰を据えてお読み頂きたい。 取材・文:松井剛
協力:ULTRA-VYBE BOSS: そうだね。それは大きいよね。 --- その日々を振り返り、BOSSさんはマンスリーレポート、そして3月11日に出された特別声明で語っていますが、O.N.Oさんはどのように過ごされていたのでしょう? O.N.O: 僕も震災直後は、音楽を作れなくなっていた時期はありましたね。でも色々考えても音を作る事しかなかったですからね。逆に音楽を作る事で救われたと感じる部分もありましたし。あと、THA BLUE HERBでは表立って動いてはいなかったですけど、ソロでは各地でライブをやったりしてたので。そうしながらトラックを作っているような状態でしたね。 --- THA BLUE HERBとして曲を作る時って、O.N.Oさんのトラック制作とBOSSさんのリリック制作は、別で行われる事が多いですか? O.N.O: そうですね。 --- あらかじめ楽曲のイメージをすりあわせて? BOSS: いや、制作始めるときに「かっこいい曲作ろうよ」っていうのが一番最初に話した言葉だね。かっこいい曲をお互い書いて、アルバム全体に関してはそれから決めよう、と。「かっこいい曲作ろう」っていうシンプルかつ明快な感じでスタートしたね。 --- 枠を大きくって感じですね。 BOSS: そうだね。 --- O.N.Oさんが作ったトラックを聴いて、リリックを書くという事は? BOSS: 最初の段階では、まだないね。 O.N.O: 僕も僕で一人で曲を書いてって。 BOSS: 途中お互い7〜8曲出来た段階で合わせて、それでも収まりきらなかったもの、またアルバム全体の流れをみて繋がり的に必要だと思う部分を、今度はリリック先行 or トラック先行で、あるいは同時に作っていく感じだね。 --- THA BLUE HERBの作品は、トラックとリリックのイメージがばっちりハマった心地良さを含んでると思うのですが、それはお互いが持ちよったトラックとリリックを合わせて、ブラッシュアップする作業の中で生まれるものなのでしょうか? O.N.O: そうですね。リリックのイメージによって曲も変わってくるし、逆にトラックの進行の仕方でBOSSの言葉の運び方も変わってくるんで。そこには僕等は、もの凄い時間をかけますね。 --- 二人での作業は、それがメインになってくるのでしょうか? BOSS: 正式にアルバムの制作を始めるっていうのは、そこからなのかもしれないね。 --- 二人集まっての作業というのは、頻繁にされているのでしょうか? BOSS: 家も近所だしね。ずっとアルバムというのを頭に置いて過ごしてたから。会っていないときもアルバムのために時間を費やしていたし。その中で電話、メール、あるいは実際に顔を合わせてという作業は、ほぼ毎日やってたね。 --- その作業の中で、それこそ震災後に感じている事などを語ったりする事もあったのでしょうか? BOSS: お互いにいろいろと考える事はあったけど、会ってる時はアルバムの話しかしなかったよ。完全に音作りに専念するっていうか。二人で会う時は音楽の話しかしない。集中してた。 --- お二人とも、震災直後は音楽を作れない状態になったとの事でしたが、再び音楽を作れる状態になったきっかけなどはありますか? BOSS: いつどんなきっかけでっていうのは覚えてないな。少しずつ少しずつ、書き溜めていく感覚が戻ってきた感じだったんで。 O.N.O: 俺も少しは止まったけど、俺には集中できる音楽制作っていうモノがあって、逆に良かったと思うし。あと、クラブに行って人と会って話す事によって救われた部分もあって、俺はライブを続けてた。 --- BOSSさんも、音楽制作以外の部分でなにかされていた事はありますか? BOSS: 僕は旅にも行ってましたし、その間は全く何も書かない事もあったし。普通にクラブ行ってDJやったりだとか。まぁ、それが日常の感じですけどね。 --- そして完成したアルバムですが、まず1曲目はインスト楽曲。3分30秒に壮大なストーリーが含まれているのが印象的な始まりになるわけですが、ここで表現したかったものっていうのは? O.N.O: その曲とアルバム最後に収録された曲は、制作過程において一番最後に作った曲なんですよ。だから、それまでに作った11曲の頭に据える上で、その流れはやっぱり意識したし、あとライブを意識しましたね、THA BLUE HERBの。これまではライブのイントロで、いろんな曲を使ってBOSSの登場まで時間をかけて温めるっていうスタイルだったんだけど、それをオリジナルの曲でやりたいっていうBOSSの意向もあってね。このアルバムの中で使った様々な技術や考えを1曲に思い切ってまとめた感じですね。 --- アルバム全体の流れと、この1曲が持っている流れも、構成として一致しているようにも感じました。 O.N.O: アルバムの殆どの曲を作った後で、出来た曲なので、冒頭の部分で総括するイメージはあったのかもしれませんね。あと、途中途中でBOSSと話し合いながら、展開をつけていった部分もあったんでね。 --- BOSSさんはこの1曲を最初に聴いた時、どのように感じましたか? BOSS: 驚きましたね。俺が欲しいって思ったイントロのイメージに合致してたし、それよりも遥かにスケールは大きかった。俺が最初に聴いた時にそうだったように、リスナーもそう来るとは思ってないだろうし。と同時にこれがライブの会場であれば、凄いワクワクする感覚に毎回してくれるんじゃないかなって思ってるね。 --- 今回のアルバムのBOSSさんのラップ、特に序盤の3曲あたりでは、「自分がHIP HOPをやる意味」「HIP HOPで何が出来るのか」を改めて突きつめる原点回帰的な内容を感じました。 BOSS: 原点回帰でもあるし、アルバム前半に配置する楽曲だからっていうのもあるかもしれないね。それは先行シングルの1曲目の時からそうなんだけど、まず自分等でやってきた事を総括して、整理して、ここからまた新しく進むっていう事をやらないと次には行けないと思うんで。そういうフィーリングがそこには入っていたと思うね。 --- いわゆるBOSSIZMっていうのが初っ端からバーンと伝わってくるイメージというか。 BOSS: やっぱアルバムはね。最初ラッシュをかけるっていう意味でも、テンションの高いフィーリングは絶対に入ってくると思うから。 --- そのなかでは“乾いた想いをぶちまけた1枚目 / 心の内側を掘り下げた2枚目 / 人生を讃えた3枚目”と歌っているわけですが、この4枚目を言葉にするなら? BOSS: うーん。あれだけの言葉を書いた後に、それを一言でまとめる程、時間は経っていないね。 --- 確かにそうですよね。3枚目の延長線上というか。一方では“追われる者は追う者を待たん”というリリックもあり、それは「時代は変わる」のリリック“追う者は追われる者に勝る”を連想させますよね。これまでの作品、活動が1本の線で繋がってる事が明示されているというか。 BOSS: もちろんそうだね。そして繋がっているけど、決して昔と同じではない。仮に追われる者になったとしても、僕等も僕等で進んでいくという意味では、昔使った言葉を引用しながら、また新しいフィーリングを伝えたかったんだ。変わっていくからね、全ては。 --- 先日リリースされたシングル『STILL RAINING, STILL WINNING』でもそうだったように、過去の楽曲を連想させるキーワードは、ある程度意図的に散りばめているのでしょうか? BOSS: 活動初期の段階から一つの大きなストーリーが続いているっていう意味でも、そういうワードは故意に入れたりもするけどね。 --- なるほど。同時に序盤はかなり攻撃的な印象ですよね。 BOSS: 昔みたいに自分等の居場所を作る為に他人を削ったりなんていう事はしてないけどね。アルバム最初っていうのがあるから。リスナーをどれだけ煽れるかっていう意味でも。自分達がどれだけスタートダッシュ出来るかっていう意味でも。その前半3曲が力強いものになったのは自然な感じかな。 --- 同様に前半3曲はO.N.Oさんのビートも攻撃的ですよね。 O.N.O: そうですね。やっぱアルバム冒頭で突っ込んでいける楽曲というか。その中に一曲一曲の楽曲としての個性も今までとはガラッと変えて。サビに向かっていく瞬間だったりとかね。そういうのも詰め込んでいけばBOSSのリリックも更に輝くし。ハードな3曲続いても、曲ごとに新しい音で、その勢いをまた違う風に聴かせていくように考えて。 --- なるほど。そこから続く5曲目では一転してダンスフロアを感じさせるビートというか。 O.N.O: そうですね。この曲はリリックが先にあって、BOSSの中にある曲のイメージに沿って曲を作っていく感じでしたね。 --- リリックで語られている内容もクラブでの事ですし。 BOSS: そうだね。自分等の日常、ライブを歌った曲なんで。 --- “あがってけYOU GOT IT?”ってフレーズ付近で感じられるブルーハーブのLIVE独特の高揚感は、ライブを体験した事がある者にとってはトリハダものというか。 O.N.O: 俺も常にフロア側からライブを見てる感覚もありますからね。 --- その高揚感を感じさせた後、ビートは感傷的になっていくのは、タイトル通り時間の流れというか。 BOSS: そうだね。札幌離れて、ライブやって、終わって乾杯して、酔いが進んでいく感覚だね。 --- お二人のクラブでの感覚がそのまま表現されてるのでしょうか? BOSS: クラブってよりもLIVEしてる箱だね。それももちろんクラブなんだけど、札幌で普段遊んでる時の感覚っていうよりも、ライブでいろんな街に招いてもらった時の感覚ですね。札幌で普段遊んでる時は、もうちょっとリラックスしてるし、仕事の時と時間の流れが違う。自分等がライブでいろんな所を回っている景色みたいなものが表現されてるんだと思うね。 --- そうですよね。続く曲では札幌の事だけではなく、LIVEで訪れた各地の事も歌ってますし。 BOSS: 札幌は今も自分にとって愛する地元であるけれども、今はその他の46都府県に対しても同じような感覚を持っている。一回しか行った事がない場所もあれば、東京みたいに良く来る場所もある。その中でも足場、地元、戻るべき場所っていうのが、少しずつ増えて行った感覚だね。PHASE3での長いツアーの経験(3年半で179回)を経てね。昔は世界が札幌だけだと思ってたけど、今はもうちょっと広がったイメージはあるね。 --- まさに地元と呼べる感覚というか。 BOSS: そうだね。仲間とか。長い付き合いの連中もたくさんいるし。 --- 中盤戦は感傷的なビートにのせて、長距離走者の孤独、悲哀を歌っていますが、長く続けてきた事、売れた事で生まれたひずみのようなものを感じられる事はありますか? BOSS: いや。別に広がっていった事に対するひずみも負い目も全くないよ。ただ長くやってく中で、いろんな人間に出会ったり、別れももちろん経験してきた。その中で自分等が続けてこられた事に対する感謝もあるけれど、同時に俺らもだんだん移ろっていく感覚もあるし。だから、ひずみっていうよりは、移ろっていく儚げな気持ちはあるけれど。 --- では8曲目で歌われる“許されざる者”っていうのはどういう感覚なのでしょうか? BOSS: それは実際に曲全体を聴いてそれぞれが感じてくれればいいと思うんだけど。俺がレコードを出すよりも昔、自分等でいくら頑張っても、上にいる連中には届かない時代、結局ヤツらだけがラップビジネスの中心になってるっていう状況の中で俺はハングリー精神を養わせてもらって、今がある。そして今、かつての自分等のようにチャンスを探してる連中からは、やっぱり俺らは独占している連中として見られる事は仕方がない。そこはとっくに俺らも腹を括ってる。俺らがあがってきたお陰で、退かされた連中もいる。ヤツらの無念っていう事すらも、とっくに俺らは腹を括ってる。そうやってあがってきたっていうのは隠し様のない事実。そこを俺らは恥じてもいないけれど、そういう存在である事は自覚しているというか。 --- THA BLUE HERBの歴史って、ギミックなし、確固たる信念で成功してきた歴史というイメージが強いですけどね。 BOSS: そう思う人もいれば思わない人もいるよ。考えは人の数だけあって、正解はわからん。ただ俺はそう思ってるよ。そう思ってるけど、俺たちだってキレイな事ばっかりやってあがってきたわけじゃないよ。 --- それを見てきたからこそその後の9曲目で歌われる事に説得力があるというか。 BOSS: そうだね。俺等は音楽ビジネスの光も影も見てきたんだよ。 --- 続く10曲目から今度はビートが優しい印象に変わりますよね。 O.N.O: そうですね。リリックで歌われる内容は真逆なんで、あえて。今までだったら、リリックに合わせてダークな音像にしてっていうのがTHA BLUE HERBだったのかも知れないけど、BOSSもやっぱりそうではないものをやりたいっていう事だったんで。この曲は1番BOSSからのリクエストが強かったですね。だから、あえてポップな進行で作って、そこにリリックをはめていく作業でしたね。 BOSS: 割と挑戦した感じだね。二人とも。コンシャスでハードなトピックをダークな楽曲に乗せるっていうのはやりつくしてきてるんでね。この曲の中で歌った連中をおちょくった感覚というかね。 --- なるほど。おちょくった感覚なんですね。ハードな事を歌っているのに口調自体は柔らかい部分にもそれは表れてますよね。 BOSS: そうだね。 --- この楽曲で歌われる内容は、今年の3月11日に出された特別声明とリンクしていると思いますが。 BOSS: そうだね。そこはリンクすると思う。 --- そこで語られるのは“足るを知れ”という事だと思うのですが、人の営みは足し算の歴史で、歴史上おそらく人類は引き算をした事がないですよね。 BOSS: そうだね。すごく難しい事だと思うけど。でも、人間は頭がいいからね。引き算を引き算と思わずに、マイナスを加えることを受け入れる事が出来る可能性はあると思うし。 --- そういう精神性を伝えたり啓蒙していけるのも音楽の役割の一つだったり。 BOSS: そこまで自分たちの音楽に対して役割感、使命を意識してるかと言えば、それよりも思った事をぶちまけるだけだね。それを聴いて賛同したって反対したって、それは自由だよ。たくさん意見があった方が面白いじゃんみたいな感覚の一つとして俺らの音楽はあればいいというか。それが完璧な正解だとも思ってないし。だからとりあえず思った事を言うっていうのが大前提というか。 --- その思った事をこのアルバムに詰め込んだわけですよね。 BOSS: そうだね。それが俺らにとっての役割というか。作った音楽に対する役割というよりも、音楽を作る事が俺らの役割だからね。 --- 11曲目は、日本人に対する直接的なメッセージですよね。 BOSS: その前の曲が、ダサイ事やってる政治家連中に対するちょっとしたおちょくりだとしたら、この曲はもうちょっと地に足の着いた目線というかね。自分の隣にいる人に話す感覚だね。 --- “何を信じるかは自分自身で決める”っていうのがメインのテーマになっていると思いますが。 BOSS: そうだね。メディアにも載っていない、それまで本流のHIP HOPとされてきた所とは別の場所から出てきたTHA BLUE HERBの存在をみんなが認めるようになった事自体、それはリスナー1人1人の独立したチョイスの結果だと思うんだよね。だから何かに左右されず自分の判断で決める事の重要性を皆もすでに知っているというか。 --- 12曲目は、被災者への想いが着想となったリリックだと思いますが。 BOSS: そうだね。被災者に限らず、困難に置かれている人たちというか。 --- そうですよね。今しか聴けないではなくて、いつかこの震災の悲しみが癒えた後も、何かで辛い状況に居る人を励ます内容に昇華している楽曲のように感じました。 BOSS: 一人の人間を励まそうと思えば、それは100人だって1万人にだって届くはずだという気持ちは常にあるんで。その人だけにしかわからない事を、歌っているわけではないっていうのは元々あるしね。 --- そして最後の曲で“ギル・スコット・ヘロンみたいに死ぬまでHIP HOP”と宣言して終わっていくわけですが。 BOSS: HIP HOPの世界ではそれなりに歳をとったとはいえ、まだ僕等40歳なんで、これからも探求は続くというか。まだまだきっと言いたい事は出てくるだろうし。ある年齢に達してから見える世界というのも興味深いんで。まだまだこれからいろんな事が起きるだろう中で、ずっと矛盾に対して敏感でありたいという思いはあるね。 --- ギル・スコット・ヘロンという人は言葉の力を信じて死ぬまで闘い続けた男で、その言葉は今も生き続けていますよね。 BOSS: そういう言葉を残したいとかまではまだ思っていなくて。それよりも常にフレッシュでストリートに居たいっていう感覚だね。それがHIP HOPっていう枠組みで評価されるかはわからないけれど、ハートは常にそういう風にありたいというか。 --- 後半にメッセージ性の強い楽曲を配置したっていうのもやはり意図があっての事ですよね。 BOSS: やっぱりアルバム全体で聴いて欲しいんで、最初の3曲はラッシュをかける感じだけど、最後の曲に説得力を持たせるためには、どういう運びがいいのか?っていう事はもちろん凄く考えて。その上で1番自信のある曲を最後に持ってきてさらにその上を目指すというか。その全体像はO.N.Oも俺も意識して作ったね。 --- あと日本のラッパーやDJの固有名詞を楽曲の中であげ、ヒップホップビッグファンを公言した作品も初ですよね? BOSS: そうだね。好きなものは好きだって言うぜ俺はって感覚だね。これを言う事で周りがどう思うかっていうのはこれっぽっちも考えてなくて。今は、俺らが札幌から出てき始めた頃とは違って、バラエティーに富んだ、楽曲、アーティスト、スタイル、個性があって、インディペンデントでやってる人はたくさんいるんで、否定しようがないというか。勉強になる部分も多々あるし、むしろそこを楽しみたいというか。 --- 今まで言ってこなかっただけで。 BOSS: そう。ずーっとHIP HOPファン。でも自分らのスタイルっていうものが出来たから、そういう事を歌う気持ちになったっていうのは、ぼんやりあるのかもしれないけどね。自分らのスタイルを探すっていうフェイズからは抜け出て、自分たちのやりたい事を形にする事が出来るようにまでなった時に、ようやく他のラッパーを本当に楽しめるようになったのかも知れないな。 --- 完成した作品を改めて聴いてどう感じますか? O.N.O: 俺とBOSSと二人だけで徹底してやりつくしたっていう事ですね。全部出し切った感覚ですよ。 BOSS: 本当にTOTALという感じで。リリックは僕だけ、音はO.N.Oだけっていう意味でも、一人一人のTOTALを全部出さないと、これだけ濃密な世界を作り出す事は出来なかったと思うから。そういう意味で、でかい仕事だった。そして何度聴き返しても俺は好きだしね。1枚目2枚目3枚目、どれをとってもそれぞれにその時の俺らの気持ちが詰まっていて、どれも俺は比較できないくらい俺は好きなんだけど、それらはこのアルバムを作る為にあったんじゃないかって思うくらい今回のアルバムは総力というか。経験も技術も全部注いだっていう感覚が凄く強いね。 --- タイトル『TOTAL』は、そういうところから。 BOSS: そうだね。去年もあんな事が起きて、今のこういう停滞した状況に風穴を開けてやろうと思ったときに、並大抵のエネルギーじゃダメだと思って。自分たちが持っているものを全部出し切らないと、世の中は動かないっていう感覚なんで。持てるもの全て、総力戦っていうイメージですね。言葉に関しては僕自身の経験、僕の持っているもの全てでもあるし、音はO.N.Oが持っている経験、技術の全て。それを全て出し切った感覚から来ている言葉が『TOTAL』だね。 --- 3本の鉄の結合点が映し出されたジャケットは、どういったイメージなのでしょう? BOSS: 僕とO.N.OとDYEの3人で一つの形を作り上げているイメージというか。三位一体的な感覚。その3本でバランスをとっている感じだね。 --- 特典で未発表の楽曲が付きますが、この曲はどのような内容なのでしょう? BOSS: まぁ、それはちょっと楽しみにしててよ。ただ、この曲を入れないわけにはいかなかったってくらい意味のある楽曲。そこまで俺たちは踏み込むっていう印象を与える楽曲だね。 --- なるほど、それは見逃せないですね。では今回、作った楽曲はシングル2曲、アルバム13曲、特典1曲 計16曲。これが全てと考えてよろしいですか? BOSS: 全てだね。 --- 最後に、THA BLUE HERBの活動第4期に関して。これはどのようなフェイズになりそうですか? BOSS: まだわからないね。アルバムを今やっと作り終えて、それが僕等の手から離れて、みんなのもとへ渡っていく。きっとそれぞれが、このアルバムを自由に解釈し、また僕等もライブに出て行く。みんなと各地で出会ってライブを通じてコミュニケーションをしていくわけで、そこからその曲達がどう成長していくかっていうのはまだわからないし、今はライブをやろうというスタートラインに立った段階だね。 O.N.O: これがリリースされて、俺はTHA BLUE HERB本隊からは一時離れて、また一人で曲を作り始めていくんだけど、それもまた次に繋がるんだろうなと思ってますね。 --- ではTHA BLUE HERBのライブを含め活動第4期を本当に楽しみにしてます。今日はありがとうございました。 二人: ありがとうございました。
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