インタビュー:D.L a.k.a. BOBO JAMES
Tuesday, May 24th 2011
- --- 今作はある意味”日本語ラップ・コンピ3部作”(『HARD TO THE CORE』、『MELLOW MADNESS』、そして『ABSOLUTELY BAD』)と地続きの作品だと感じましたが、オーパーツとして意識する部分はありましたか?
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特にコンピ3作品と繋げて意識したことは無いと思います。ただ、それが無意識に有るとすれば、これらは全て良い時代のサンプリング・ミュージックでそこをレペゼンしているかと…。
- --- また、今作はBUDDHAのインスト作『病める無限のインストの世界』や、『KUROFUNE9000』に続くインスト・アルバムということになりますが、それら過去2作を振り返ってコメントして下さい。
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『KUROFUNE9000』はハウス・ビートも含む、幅広いジャンルで声を乗せなくても成立するダンス・ミュージックだった気がします。当時は、とにかく日本のインスト・アルバムに光りが当たる事を祈って作ってました。インストだろうと、ラップもの用のトラックだろうと必ず曲が100%で、曲だけで聴ける、満足させられるモノを作りたいと昔から考えてはいます。
- --- 今作中の楽曲は制作時期に最大10年近くのタイムラグがあると聞きましたが、通して聴く限り良い意味でどれもタイムレスなものに感じられます。実際に最も古い録音物はどの曲になるのでしょうか?また、逆にもっとも新しいものは?その後者は、トラックを並べた時に何かを補完することも考えて作ったのでしょ うか?また、ラップを入れる前提で制作していたものなのでしょうか?
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「GALAXYLADY(MY BABY)」、「POWER CPU(LET IT FLOW )」以外はブッダでボーカルを入れる予定で作ってました。一番新しくやったのは、「CENTERLINE」です。「TOP OF SUGINAMI」は漫画のテーマソングのオリジナル用に作ったモノでしたが、漫画家の先生が気に入らなかったので使えなくなったモノです。一番古いのは MySpaceにアップしてる「マタドール」ですね。NY時代から有りました。アレを「FUNKY METHODIST」の次に出そうか?とCQと話してた位、俺らは気に入ってた曲でした。NIPPSの「書くから!」を信じて待ち続けましたが、すでに 15年以上?…なので今年ILLDWELLERSで完成させます。
- --- DLさんのトラックには、サンプリング、しかもその化学反応、掛け合わせの妙、という昨今では多くの先人たちも諦めている要素が強く感じられます。このインスト・アルバムにもそうしたヘッド・アレンジが溢れ出した瞬間を再現したかのようなポジティヴィティーが詰まってると思われました。そうした音作りの 原動力になるものは、やはり音楽に他ならないのでしょうか?また、最近の音楽でそんな感じで焚きつけられたのは何ですか?
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それはアナログですね。大体の場合、知らなかったレコードの素晴らしいブレイクや耳に残るフレーズを聴いた時に頭にビーンと、そのポイントがインプットされます。そのままそのネタは泳がされて、それに合う何かが探されると。しかし、次に見つけた何かが素晴らしいと前のは後回しになって次のネタが中心になり 動き出したりもします。そうやって予想してコードもハマりそうなネタが数個たまると作業に行きますね。
焚き付け、か・・・ウ〜ンどうかな?ヒップホップじゃ無ければマルーン5、ゴリラズ、ブッカー・T・ジョーンズの新作とか良かったなぁ… - --- ヒップホップ〜サンプリングを入り口にDJ、トラックメイカーとして活動し、そこから逸脱していった同業者も多いと思いますが、そうしたインストを前提 とした言葉が要らない音楽を作っているクリエイターたちをどう見てますか?このアルバムはヒップホップでありながらも、そうした真の同胞をも惹きつけるものだと思いますが。
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そうなれば光栄ですね。自分は今のシーンの中心にいるプレイヤーにはあまり興味が有りません。早い時期に日本語ラップ村社会を飛び出してヒップホップな フォーマットで外ジャンルと戦いを挑み出した人に魅了されてます。例えばKENSEI君、KRUSHさん、KZA、クボタタケシとか…
- --- 今のダンスミュージックで言うクロスオーヴァーではなく、60年代末から70年代前半にクロスオーヴァーと称されたものを、サンプリング・ミュージック としてまた新たな角度から蘇らせたもののような気もするのですが・・・その世界観のベースとなっているものは何ですか?
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別にそういった想いは特に無く、だだピーンと感じた部分を取り出してパッチワークで加工してるだけで。 勘、直感、自分が好きかどうかってとこだけだと思います。
- --- トラックのタイトルや、アルバムのタイトルはどの段階でつけたのですか?
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これはいろいろです。初めからなんとなく付けてそのまま行くのも有れば、夢で見てミックス間近に変えたのも有りました。アルバム・タイトルは最後でした。でもタイトルが決まるずっと前から確かにOOPARTSのようなものをつくっているとは考えていました。
- --- DJ活動がトラックメイキングに相互作用している部分もあるかと思いますが、
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選曲やDJはあくまで平常時のリスニングタイムや、ネタ探しの時間に気付いたり、思い出した何かなんで。逆は良く有ります。この曲に使ったこのネタは盤になったら一緒にプレイ出来るとか。
- --- 今までの自作のトラックで最もよくプレイした曲は何ですか?それはやはりラップ物よりもかけやすいですか?
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そんなに自分の曲をかける方ではありませんが、「LIBYUS」か、「Dead Funky President」かな。たしかに日本語ラップものより、インストの方がカッコ良くかけれる気がします。
- --- D.O.I、I-DeAそれぞれとの作業で感じた2人の違い、個性とは?
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D.O.I君はもちろん優れたプロデューサーであると同時に、素晴らしいマニュピュレイター、ミックス・エンジニアのマジシャンです。常にプロフェッショナルな裏方視点で、完璧な仕事をこなしてくれます。I-DeAも優れたエンジニアであり裏方でもありますが、それ以上に現役な表のプレイヤー、プロデューサー感がありますね。彼は俺と同じくラッパーにも、自分のイメージするラッパーがハマるべきフローを指示出来る本当の意味でのプロデューサーでもあります。どちらにもホントお世話になってます。
- --- アートワークについてですが、いつもアートディレクションをされているイメージがありますが、「音の遺産」を未来的に表現されたアートワークの今回はデザイナーにどんな注文をされましたか?
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Nozle Graphicsのクドウ君とやるモノは常にサンプリングありきです。ネタにしたいジャケットを何枚も持っていって、「アレ出来るか?」「こうして欲しい」とか話して、何回も確認しながら完成させて行きます。
- --- 最も好きなアートワーク(自作、他作含め)をパッと思いつく5〜10枚を挙げてください。
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「LIBYUS」の12インチのジャケ、「Partners In Crime」の12インチ・ジャケ、「kikite」の12インチ・ジャケ、あとは今回のトリプル・ヴァイナルのジャケ、「Dead Funky President」の12インチ・ジャケ。
- --- ヴァイナル・リリースもあるそうですが、こだわった部分について教えてください。
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いつもそうなんですが、俺的に一番大きく聴かしたい曲を一番外、つまり各盤のSIDEの1曲目にしています。だから自分のアナログはCDといつも曲順が違います。日本語ラップ黄金期コンピ3部作のヴァイナルもそうでしたが、データとかMP3全盛のこの時代にヴァイナルを切らせてくれるバッドニュースは狂ってますね。熱いです。ヴァイナルは一生の贈り物です。あたたかさが違います。黒い溝に魂が宿ります!!
- 新譜『OOPARTS(Lost 10 Years ブッダの遺産)』
D.L a.k.a. BOBO JAMES - ブッダ・ブランドを率いて、かつてデヴラージと呼ばれた漢、D.L a.k.a. BOBO JAMES。前作『DL presents THE ALBUM(ADMONITIONS)』以来、なんと4年半ぶりの最新作。「世が変わろうと俺自身は変わらない」という強い意志を感じる言葉以上のものが込められたインストゥルメンタルによる極上のサンプリング・ミュージック集。
[追悼] 二木崇さん
5月20日にブラストやリディム、各種ライナーノーツ、その他多数のレビューで活躍していた音楽ライター/プロデューサーの二木崇氏が急逝されました。音楽ファンであれば、一度は二木さんの文章を目にすることがあったと思います。このHMVオンラインでも国内外のアーティストのインタビューを数多く手がけていただき、インタビュー以外でも交流のあるMURO氏の連載(Radio King 〜King Of Diggin' Mixx Show〜)の橋渡しをしてくださったりと、大変お世話になっておりました。 この場をお借りして御礼申し上げます。本当にありがとうございました。
二木さんの明るく楽しいお人柄と、音楽愛溢れる文章はいつまでも私たちの心に残っております。
謹んでお悔やみを申し上げるとともに、心からご冥福をお祈りいたします。
D.L a.k.a. BOBO JAMES『OOPARTS(Lost 10 Years ブッダの遺産)』
発売中
ブッダ・ブランドを率いて、かつてデヴラージと呼ばれた漢、D.L a.k.a. BOBO JAMES。前作『DL presents THE ALBUM(ADMONITIONS)』以来、なんと4年半ぶりの最新作。「世が変わろうと俺自身は変わらない」という強い意志を感じる言葉以上のものが込められたインストゥルメンタルによる極上のサンプリング・ミュージック集。
[収録曲]
01. SUGINAMI UNDERGROUND.
02. SADWINGS OF DESTINY
03. STARGATE
04. 首都高(YOUR WAY,MY WAY NO EQUAL)
05. TOP OF SUGINAMI
06. BATTLE FIELD
07. YOUR LIFE(ALL RIGHT)
08. 零戦
09. SUNDAWN(THROWDOWN)
10. CENTERLINE
11. GALAXYLADY(MY BABY)
12. ACROSS THE 142 ROOSVELT AVE.(FLUSHING THEME)
13. POWER CPU(LET IT FLOW)
14. GAMBLER'S THEME
15. TAKUNOVA
16. LET THE MUSIC PLAY
17. PRAYER
