[1月のドススメ] horita編

Friday, January 14th 2011

今月のドススメ

1月のドススメ！ horita編

『cicabow』 / cicada
1999年12月30日発売 ※廃盤

先月に引き続き、今回もなんと廃盤の商品をご紹介！でもこれが本当にかっこいいんでぜひ紹介させてください！というわけで今回のドススメ商品は、2000年に発売されたcicadaの1stアルバム『cicabow』です。

2000年前後の東京のアンダーグラウンドは、98年にボアダムスが『スーパーアー』をリリース。同年rovoもアルバムデビューとレイブカルチャーを吸収したロックバンドが新たな音を模索。PHISH等の海外のジャムバンドシーンとリンクしてフェスやレイブなどが盛り上を見せていました。

そんな当時の音楽シーンの中に登場したcicada。現在はすっかりエレクトロ化しDJの活動がメインのcicada a.k.a 小川裕史ですが、このときは3ピースのバンド編成で。そしてデビュー作の『cicabow』はワントラック33分のインストという無茶な内容でした。

前述のとおりにこの頃はボアダムスやrovo、DCPRG、softなんかが現れ、またポストロックが全盛期を迎え日本でもインストバンドは珍しくなく受け入れられていました。これらのバンドの多くがそうであったようにcicadaもまた前身バンドはハードコアでありましたが、2nd Summer of Loveにどっぷりはまった彼らもまたクラブシーンへと接近していきます。

テクノやブレイクビーツ、ハウス、ダブとダンスミュージックを生バンドで体現した作品。ギターは時折重ねられ、パーカッションが加えられたりしているが、基本的には3ピースのサウンドであり、音の加工も少なめで実にシンプルなサウンドなのですが、これが不思議なことに全く飽きることなく聴けます。

レゲエ～ダブを感じさせる超重低音でありながら、フレーズがきちんと聴き取れるベースは、脳髄をゆさぶるように地の淵をズブズブとさまよい、グルーヴを牽引。硬めに張ったスネアが心地よく響き、そしてディレイ/フランジャーのかけられたギターの音は、透き通っていて、光の粒子のようにキラキラと煌きながら降り注ぐ。

全ての音が音域がかぶることなくバランスよく配置され、さらに前後左右の音のゆらぎでヘッドフォンで聴くと異次元へと連れてかれます。

トライバルでダビーでスピリチュアルでスペイシー。サイケデリックな一大宇宙絵巻です。

そしてこの作品はジャケットワークもすごいんです！掲載のジャケ写をみてもらえばわかりますが、見た目はチョコレートの包装になっています(なんかの暗喩ですかね？)。で、これが紙ジャケというか、本物のチョコレートのように完全に包装されていて、中身を空けるには破るしかないという。。中を開けると金色の包装紙につつまれていて、さらにそれを破るとチョコレートの表面が印刷された紙が何10枚も敷かれているという超凝った作りでした。
このアートワークを担当したのが宇川直宏で、このあとのcicadaのアートワークも担当しています。このあたりのセンスがまさにcicadaとどんぴしゃ。両者がどうやってしりあったのかはよく知らないのですが、この両者の邂逅も含めて最高の1枚であり、当時の東京のアンダーグラウンドシーンの空気感を象徴しているような作品であると思います。

その後のcicadaはエレクトロに接近していき、最近ではDJでの活動が多いようです。個人的には初期の作品が好きで、エレクトロ化したcicadaはあんまり好みではないですが、どの作品も他にはない音を鳴らしているので興味がわいた方はぜひ聴いてみてください！

そのほかの作品

『Gig Gigger Giggest』

ライブ音源を編集しミックス風に仕上げた一枚。1st流れを汲むものからハードコアナンバーまでcicadaの雑食性がわかるアルバム。ジャケがしびれます！

『Simple Chaos Stereo』

スタジオワーク音源をプロトゥールスにてずたずたにカットアップ。前作で味をしめたのか、編集作業がより偏執狂的に。まさにシンプルだけどカオス！

『Curious』

ここで一気にエレクトロに大接近。でも巷に溢れるエレクトロとは一味違う得体の知れないものに。。。盟友コーネリアスもギターで参加。今までとは違うけれどサイケな感覚は健在。

ドススメ人 profile

horita
主な担当ジャンル：
japanese indies

暗～いもの、ゆる～いものサイケデリックなものに気が付けば心を奪われている。
入社10年。連載企画“音楽圧迫面接”にてダメっぷりを発揮中。。

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