「ベルリン・フィル・ラウンジ」第27号:インタビュー/ティーレマン、カラヤンを語る(第1回)
Thursday, September 16th 2010
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ベルリン・フィル関係ニュース
ベルリン・フィルの3D映像が無料ダウンロード可能に9月2日から7日にかけて世界最大の家電見本市「IFA2010」がベルリンで開催されましたが、ベルリン・フィルも3D映像の分野で新技術のプレゼンテーションを行なっています。映像は、2009年以来当楽団と協力関係にあるフラウンホーファー研究所によるもので、オーケストラの3D映像としては、世界発となるものです。 収録されたのは、今年6月にフィルハーモニーで行なわれたリハーサルであり、ストラヴィンスキー《ペトルーシュカ》の一部が収められています。本サイト読者の皆様にも無料でご覧いただけますので、ぜひ以下のリンクからサンプルをお試しください。その際、3Dプレイヤーを同時にダウンロード(無料)し、それを通して再生する形になります。コンピューター上でご覧になる場合は、NVIDIA社の専用3Dメガネが必要になりますが、ご家庭に3D対応テレビがある場合、接続後に通常の3Dメガネで観ることが可能です。
ダウンロードはこちらから ザルツブルク、ルツェルン、BBCプロムス〜ベルリン・フィル、3大フェスティヴァルに客演ベルリン・フィルは、8月29日から9月4日にかけてザルツブルク、ルツェルン、BBCプロムスの3大音楽祭に出演しました。演奏曲目は、ワーグナー《パルジファル》前奏曲、R・シュトラウス《4つの最後の歌》(S:カリタ・マッティラ)、ベルク、シェーンベルク、ウェーベルンの「オーケストラのための小品」およびベートーヴェン「交響曲第4番」、マーラー「交響曲第1番《巨人》」の2プログラムでした。ウィーンの『スタンダード』紙は、演奏を「ラトルは無調作品を後期ロマン派風のメロスをもって演奏した。弦はすすり泣くようなメランコリックな響きを生み出し、音のミクロコスモスの万華鏡を開陳した」と評しています(写真©Fritz Haseke)。
ベルリン・ムジークフェスト2010開催ベルリン・ムジークフェスト2010が、9月2日より21日まで開催されています。ベルリン芸術週間が改名してスタートしたこのフェスティヴァルは、毎年特定の作曲家にテーマを置いていますが、今年はベリオとブーレーズに焦点が当てられています。開幕コンサートでは、ダニエル・ハーディング指揮のロンドン交響楽団が、ベリオの《フォーク・ソングズ》と《シンフォニア》を演奏。すでにマリス・ヤンソンス指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管、ヴラジミール・ユロフスキ指揮ロンドン・フィルなどが客演していますが、頂点は何と言ってもブーレーズ自身が指揮するベルリン・フィルの《…爆発−固定…》でしょう(17・18日)。またベルリン・フィルは、ラトルの指揮でも演奏会を行っています(次回のデジタル・コンサートホール演奏会およびアーカイヴの項参照)。 ラトル指揮のオープニング・コンサート(マーラー《巨人》ほか)と《プルチネッラ》がアーカイヴにアップ今シーズン最初の2回のコンサートが、デジタル・コンサートホール(アーカイヴ・コーナー)にアップされました。8月27日のオープニング・コンサートはマーラー《巨人》とベートーヴェンの「第4」、2回目の演奏会はベリオ《コーロ》とストラヴィンスキー《プルチネッラ》全曲が演奏されています。ベリオの40声からなる《コーロ》は、現代合唱曲の代表作とでも呼ぶべき作品。また《プルチネッラ》は、今年が生誕300年となるペルゴレージへのオマージュです。 マーラーの回については、本号の演奏会批評コーナーで取り上げていますので、詳細はそちらをご覧ください。
ラトル指揮ベートーヴェン&マーラーの演奏会をデジタル・コンサートホールで聴く
ラトル指揮ベリオ&ストラヴィンスキーの演奏会をデジタル・コンサートホールで聴く 次回のデジタル・コンサートホール演奏会
ブーレーズの定期はパユ独奏の《…爆発−固定…》とストラヴィンスキー《ナイチンゲール》(日本時間9月19日早朝3時) ベルリン・ムジークフェスト2010の第2回目の演奏会は、今年の特集であるブーレーズを作曲者自身が指揮するプログラムです。後半はストラヴィンスキーの歌劇《ナイチンゲール》が取り上げられますが、《…爆発−固定…》は、1971年、ストラヴィンスキーの死去を受けて、その祈念に作曲された作品です。当初この曲は、即興とも言えるスケッチとして構想されましたが、年月と共に拡大され、現在ではフルートのソロを伴う管弦楽作品となっています。今回演奏されるヴァージョンは、ブーレーズが1990年代に作成したもの。ライブ・エレクトロニクスにより、楽器の出した音にコンピューターがその場で反応して新しい音を作り出す、という構成を持っています。なおブーレーズは、代表作《レポン》でもこの技法を取り入れています。 後半の歌劇《ナイチンゲール》も、ワーク・イン・プログレス的なスタイルの変化を見せ、第1幕にはリムスキー=コルサコフやドビュッシーの影響が強く感じられます。しかし第2、3幕は《火の鳥》、《春の祭典》の後に作曲されており、これらの革命的語法を体得した後の音調を示しています。ブーレーズはこの作品を1942年に初めて聴いたと言いますが、それ以来複数回にわたって取り上げ、CD録音も行っています。 放送3日前より、こちらからリハーサルの模様が無料でご覧いただけます。 【演奏曲目】 ブーレーズ:《…爆発−固定…》 ストラヴィンスキー:歌劇《ナイチンゲール》 フルート&MIDIフルート:エマニュエル・パユ フルート:マリオン・ラランクール、ソフィー・シェリエー ライブ・エレクトロニクス:パリIRCAM団員 ナイチンゲール:バーバラ・ハニガン(ソプラノ)、死:ユリア・ファイレンボーゲン(メゾソプラノ)、料理女:ステファニー・ワイス(メゾソプラノ)、漁師:イアン・ボストリッジ(テノール)、中国の皇帝:ローマン・トレーケル(バリトン)、僧:ピーター・ローズ(バス)、召使頭:ゲオルク・ツァッペンフェルト(バス)、日本の使者:ヤン・レンマース(テノール)、ヴォルフラム・テスマー(バリトン) 合唱:ベルリン放送合唱団(合唱指揮:サイモン・ハルシー) 指揮:ピエール・ブーレーズ 放送日時:9月19日(日)午前3時(日本時間・生中継)
この演奏会をデジタル・コンサートホールで聴く!
すでに3回目の定期登場。古楽界の旗手アントニーニのベートーヴェン&バッハ父子(日本時間9月24日早朝3時) ジョヴァンニ・アントニーニは、バロック・アンサンブル、イル・ジャルディーノ・アルモニコのリーダー兼リコーダー、トラヴェルソ奏者として活躍していますが、独立した指揮者としてもヨーロッパのオーケストラに登場しています。ベルリン・フィルには2004年にデビューし、すでに2回指揮しているほか、イル・ジャルディーノ・アルモニコやオーケストラ・アカデミーの演奏会枠でも客演しています。 今回の演奏会は、バッハ父子とベートーヴェン「交響曲第2番」を組み合わせたプログラム。ベートーヴェンはベルリン・フィルの中核レパートリーであり、ラトルの指揮ですでに何度も取り上げられていますが、古楽出身のアントニーニの解釈も、ひと味ちがった独特の味わいを見せることでしょう。 放送3日前より、こちらからリハーサルの模様が無料でご覧いただけます。 【演奏曲目】 J・S・バッハ:管弦楽組曲第1番 C・Ph・E・バッハ:交響曲ヘ長調Wq 183-3 ベートーヴェン:交響曲第2番 指揮:ジョヴァンニ・アントニーニ 放送日時:9月24日(金)午前3時(日本時間・生中継)
この演奏会をデジタル・コンサートホールで聴く! アーティスト・インタビュー
クリスティアン・ティーレマン(その1)「カラヤンは事実上、眼だけで指揮していました。指揮の真髄とは、実はそこにあるのかもしれません」 聞き手:サラ・ウィリス(ベルリン・フィル/ホルン奏者) (定期演奏会/2009年12月10〜12日) ブラームス:オーケストラ伴奏付き合唱曲集 《哀悼の歌》 《運命の女神たちの歌》 《運命の歌》 シェーンベルク:交響詩《ペレアスとメリザンド》 合唱:ベルリン放送合唱団(合唱指揮:ロビン・グリットン) 指揮:クリスティアン・ティーレマン 今号から2回にわたって、クリスティアン・ティーレマンのインタビューをご紹介します。これは昨年12月、ブラームスの合唱作品とシェーンベルクの《ペレアスとメリザンド》を指揮した時のものですが、前半では彼のベルリン・フィルとの出会いや、カラヤンの思い出が話題となっています。 ベルリン出身のティーレマンは、ヴィオラ奏者としてベルリン・フィルのオーケストラ・アカデミーに参加すると共に、アシスタントとしてカラヤンに何度も接していたそうです。興味深いのは彼が「カラヤンはほとんど棒を振っていなかった。それにもかかわらず素晴らしい色彩をオーケストラから引き出すことができた」と言っている点です。それがなぜ可能であったのかは、「今でも時々考え込んでしまうテーマ」だそうで、ティーレマンの指揮者としての原点がカラヤンにあることを伝えています。 サラ・ウィリス 「ティーレマンさんのベルリン・フィル・デビューは、実は指揮者としてではないそうですね。1980年にチェンバリストとして登場したのが初めてだったとか?」 クリスティアン・ティーレマン 「あれはカラヤン指揮のブランデンブルク協奏曲のコンサートだったと思います。彼はそのような場合、チェンバロを2台用意して演奏会を行いました。1台は自分の前に自ら弾くために置き、もう1台は別の人が弾いたのです。その際、彼は全部の音を弾いていたわけではありませんでした。ですから全てをちゃんと弾く人が必要だったのです。実際に演奏すると、なかなかアンサンブルが揃わなくてカラヤンは不機嫌になりました。しかしカラヤンのあの美しい、ただし振っているというよりはジェスチャーに近い手の動きに合わせることは、ほとんど不可能でした。カラヤンは手の表情で素晴らしい音楽をしたわけですが、当時私はそういう演奏の仕方に慣れていませんでした。ですから実際には、隣に座っているチェロ奏者のアインザッツを見て弾いたのです」 ウィリス 「カラヤンがチェンバロを弾く動きに合わせるのではなくてですか?」 ティーレマン 「いいえ。というのは、彼は指揮者としてチェンバロの正面に座っていたので、手は見えませんでしたし、同時に実際にはあまり弾いていなかったのです」
ウィリス 「ティーレマンさんはベルリン・フィルのオーケストラ・アカデミーの団員でもあり、ヴィオラを演奏していたそうですね」ティーレマン 「そうです。まさにこのステージの上でオーディションを受けました。カラヤンは客席のどこかに座っていたのですが、最初に弾いた時はあまりよい出来ではなかったと思います。カラヤンは“君はもう少し表現力を磨かないとダメだね”みたいなことを言ったと思いますが、それ以前に私は技術的にうまく弾けなかったのです」 ウィリス 「そういう時にかぎってうまく弾けないんですよね(笑)」 ティーレマン 「そうなんですよ(笑)。そしてジュスト・カッポーネのレッスンを受けることになったのですが、彼は本当に素晴らしかった。最初のうちは、どうやってもうまく行かなかったのですが、彼は“君ができるってことは分かっているよ”と言いってました。そしてある時、まるで電灯のスイッチを入れるように、急にうまく弾けるようになったのです。問題が嘘のように氷解しました。彼は素晴らしいプレイヤーであり、教師でした。非常に多くのことを学びました」 ウィリス 「ジュスト・カッポーネは、カラヤン時代の伝説的ヴィオラ奏者ですね。彼の息子のアレッサンドロは、現在ベルリン・フィルの第1ヴァイオリンを弾いています。実は彼から聞いた話なのですが、あなたはカッポーネ家に行って、ブラームスのソナタのレッスンを受けたそうですね。しかし途中から“先生が弾いてくださいよ”と言って、あなたがピアノでカッポーネの伴奏をしたということです」 ティーレマン 「ピアノは4歳か5歳の時から弾いていましたが、実は私自身は、オルガンの方がずっと好きだったのです。それでピアノの先生には秘密でオルガンを弾いていました。ところがオルガンはペダルがあったり鍵盤が分かれていたりで、ピアノとはテクニックが違いますよね。それでピアノの先生が何かおかしいと気がついて、止めさせたのです。同時に私は弦楽器にも大変魅了されていました。私の手は大きいですし、それであるヴァイオリンの先生が“ヴィオラをやってみれば?”と勧めてくれたのです。始めてみると、ヴィオラの深い響きにすぐに魅了されました。そうこうしてピアノとヴィオラを弾いているうちに、“オルガン奏者になれないのなら、似た色彩を出せる楽器は何だろう?”と思うようになりました。それに対する答えが、オーケストラだったのです。それで指揮を勉強してみよう、という希望を持つようになりました」 ウィリス 「“指揮を勉強してみよう、という希望”という表現は、今のティーレマンさんのご活躍ぶりを考えると大変なご謙遜ですね(笑)。カラヤン・アカデミーではカラヤンの指揮ぶりをオーケストラの内部から観察することもできたのではないですか」 ティーレマン 「私はピアノを弾いてアシスタントしたり、リハーサルを観ることができたのですが、今でも考え込まさせられることがあります。というのは彼は、あの素晴らしい響き、色彩をオーケストラからいつでも引き出すことができたのですが、“タクトを振る”ということに関しては、ほとんど何もしていなかったのです」 ウィリス 「(深く共感して)本当にその通りですね…」 ティーレマン 「表面的には、彼がやっていることは簡単に真似できるような気がします。しかし実際には、私だけでなく、他の誰がやっても、カラヤンの音にはならないのです。それが今でも考え込んでしまう理由です。おそらくそれは、25年間同じオーケストラで演奏してきた結果なのでしょう。もちろん60年間指揮してきた結果でもあるでしょうが…。昔、イタリアによく客演していた頃、テレビでカラヤンのスカラ座などでの映像(50年代)が流れていて、それをよく見ていたのですが、そのスタイルは、私がベルリンで体験したものとはまったく違っていました」 ウィリス 「長年一緒に仕事をしていることによって、オーケストラは指揮者のすべてが以心伝心で分かってしまうんでしょう」 ティーレマン 「指揮者はオケのことを知っているし、オケは指揮者のことを知っている。そうした状況で、タクト自体は重要でなくなってくるのかもしれません。目を閉じるだけでいい。あるいは目で何かを語るだけでいい。指を1本動かしただけで、オーケストラは理解できるのかもしれません。おそらく指揮の真髄というのは、そこにあるのではないでしょうか。本当のところ、棒を振るということ自体は、つまらないことなのかもしれません」(その2に続く)
この演奏会をデジタル・コンサートホールで観る ベルリン・フィル演奏会批評(現地新聞抜粋)
ラトルのマーラー《巨人》とベートーヴェン「第4」。「彼は全身全霊を捧げ、感覚を研ぎ澄ませながら、作品への愛情を示した」(2010年8月27日) 【演奏曲目】 ベートーヴェン:交響曲第4番 マーラー:交響曲第1番《巨人》 指揮:サー・サイモン・ラトル ベルリン・フィルのシーズン・オープニング演奏会は、ドイツとヨーロッパ諸国の映画館に生中継されましたが、演奏内容においてもトップレベルのものと評価されているようです。今シーズンは、マーラーの交響曲全曲チクルスが予定されており、当コンサートはそのスタートを切る内容。しかもドイツ銀行(エクスクルシヴ・パートナー)の協賛公演である上に、インテンダント、パメラ・ローゼンベルクの任期終了もマークしていました。その意味で特別な機会でしたが、『ターゲスシュピーゲル』紙の批評は、この状況を活写するルポルタージュにもなっています。 「映画館への中継による広い聴衆の獲得、スポンサーのイベント、はたまたマネージャーの交代。この開幕コンサートでは、多くの重要な問題が絡み合っていた。ラトルはこの多様な要求に一気に応えようとするかのように、溢れんばかりのエネルギーで演奏に臨んだ。ベートーヴェンの第4番とマーラーの第1番を組み合わせたプログラムは、彼の意図をはっきりと伝えていた。もちろんベルリン・フィルはベートーヴェンを見事に演奏することができる。またラトルは優れたマーラー指揮者である。しかし同時に、彼が同じ曲目を演奏しても常に何かを発見し、新しい解釈を生み出そうとしていることを示していたのである。 ふたつの作品は、断片的なアイディアのなかから生まれ、一種の憧憬的雰囲気を作り出しながらゆっくりと始まる。抽象的な“音の想念”はやがて“音楽”へと変化するのだが、それはこれらのアイディアが芽を吹きだし、その可能性を伸ばそうと試みるからである。ラトルはこの成長のプロセスにおいて全身全霊を捧げ、感覚を研ぎ澄ませながら、作品への愛情を示した。ベートーヴェンではハイドンの精神がきらめき、《巨人》ではカタストロフを予見する危機的な調子は影をひそめる。金管、木管は一体と化し、バンダは響きに明快な遠近感を与える。ラトルとベルリン・フィルはベートーヴェンにユーモアに溢れた野趣を聴き取るが、それは客席にも生き生きと伝わるのである。こうして彼らは広大な音楽の新境地を開くが、それは徐々に緊張した盛り上がりとなって立ち上がってくる。そしてフィナーレは、通常のように大音声になるのではなく、白熱的な輝きに変化するのである。 演奏が大喝采のうちに終わると、退任するインテンダントのパメラ・ローゼンべルクに暖かな言葉が送られる。ラトルは“あなたのことは忘れません”と言葉を添え、ベルリン州文化事務官のアンドレ・シュミーツは彼女のねばり強さを讃えた。後任に当たるマルティン・ホフマンは、これからの任務への抱負を述べた。オーケストラはローゼンベルクにヴァン湖でのヨット講習券をプレゼントしたが、ヴァン湖は彼女の新しい勤め先であるアメリカン・アカデミーの近くである。しかし「ベルリン・フィル号」は、小さな湖ではなく、これからも世界の7つの海を航海するのである(2010年8月30日付け『ターゲスシュピーゲル』紙ウルリヒ・アムリング)
この映像をデジタル・コンサートホールで聴く! ドイツ発最新音楽ニュース
トゥガン・ソヒエフがベルリン・ドイツ響の首席指揮者にトゥガン・ソヒエフがベルリン・ドイツ響の首席指揮者に就任することが発表された。実際の着任は2012/13年シーズンだが、今シーズンより指名首席指揮者として楽団に緊密に関与してゆくという。最初の契約年数は4年。ソヒエフはこれまで同オケに3回客演しており、前回は昨年3月であった。なお、すでに2008/09年シーズンよりトゥールーズ・キャピトル管の首席指揮者の任にもあり、ベルリン・ドイツ響のポストは兼任となる。ベルリン・ドイツ響では、首席指揮者のインゴ・メッツマッハーが文化政策上の理由から任期を延長せず、今シーズンから同職が空席になっていた(写真:©Mat Hennek)。 ケント・ナガノがモントリオール管の契約を延長 『ザ・ガゼット』紙によると、ケント・ナガノがモントリオール管との契約を2014年まで延長するという。契約内容は、年間16週間のモントリオール滞在を保障するもの。ナガノはこの夏、バイエルン国立歌劇場の音楽総監督職を延長しない旨を発表しており、今後の動向が注目されていた。 ルツェルン音楽祭の演奏会が映画館に中継 9月18日のルツェルン音楽祭の閉幕コンサートが、ヨーロッパ各国の映画館に生中継されることになった。出演するのは、グスターボ・ドゥダメル指揮のウィーン・フィルであり、スイスをはじめ、ドイツ、オーストリア、イギリス等の50の映画館で演奏を観ることが可能だという。オーケストラのライヴ中継としては、8月末にベルリン・フィルの演奏会が映画館に中継されたばかりであった。 チューリヒ歌劇場でバレエ監督が公演を独断でキャンセル 9月1日、チューリヒ劇場で行なわれたバレエの新作《夜想曲/ソロ/死と乙女》の公演が、同劇場バレエ監督のハインツ・シュペアリの独断によりキャンセルされた。これにより、1000人ほどの聴衆が上演を観ることなく家路に就くことになった。キャンセルの背景は、舞台スタッフが緞帳をシュペアリが指示したとおりに掛けていなかったことで、スタッフが反論したためにシュペアリが癇癪を起こしたのだという。彼は翌日プレスに対し謝罪しているが、監督が「切れて」しまったのは、きっかけにすぎないと言われる。問題の根は、むしろ同劇場のバレエ部門が過密なスケジュールにさらされていることにあるという。 アンドレア・ボチェッリがメットにデビュー ポップ・テノールのアンドレア・ボチェッリが、メトロポリタン・オペラにデビューすることになった。2011年2月13日に、ピアノ伴奏によるリサイタルが予定されており、ボチェッリはヴィンチェンツォ・スカレーラの伴奏で歌曲他を歌うという。ちなみにメット総裁のピーター・ゲルプは、2006年に「ボチェッリがメットで歌うことはありえない」と語っていた。しかしその後、「オペラの本公演ではなく、リサイタルであれば出演の可能性はある」と訂正したという。 ヴィリャソン、不調の理由は食道の炎症 この夏、度重なるキャンセルや、ザルツブルク音楽祭での不評で憶測を呼んでいるロランド・ヴィリャソンが、不調の理由を公表した。それによると、彼は現在食道の炎症を抱えており、胃液が食道に逆流することから声の調子が狂ったもの。薬で改善する一時的な症状とのことで、不調は昨年のポリープの手術とは関係ないという。『日曜版ヴェルト』紙のインタビューでは、「私のキャリアの頂点はこれから」と熱く抱負を語っている。 ナクソス社長クラウス・ハイマン、CD市場の将来について語る インディー系最重要レーベルのひとつであるナクソスのクラウス・ハイマン社長が、英『グラモフォン』誌でクラシックCD市場の将来についてインタビューを受けている。それによれば、パッケージ商品の購買力は、コアなクラシック・ファン、コレクターの間でも確実に落ちているという。しかしポップ部門におけるような劇的な市場変化は考えにくいとし、またクラシック・ソフトのダウンロードが頭打ちになっていることも指摘。長期的には、今後はパッケージ商品が80パーセント、ダウンロードが20パーセントという配分になるだろう、と予想している。 ©2010 Berlin Phil Media GmbH, all rights reserved. |

ベルリン・フィルの3D映像が無料ダウンロード可能に
ザルツブルク、ルツェルン、BBCプロムス〜ベルリン・フィル、3大フェスティヴァルに客演

ブーレーズの定期はパユ独奏の《…爆発−固定…》とストラヴィンスキー《ナイチンゲール》
すでに3回目の定期登場。古楽界の旗手アントニーニのベートーヴェン&バッハ父子


トゥガン・ソヒエフがベルリン・ドイツ響の首席指揮者に