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ジャズ定盤入門 =第十三回=

Sunday, September 12th 2010

  「ジョルジュ・アルヴァニタに志す」 〜 哀愁のヨーロッパ
enrico pieranunzi

 ジャズ担当者が選んでくれた「おすすめのピアノ定盤」のリストには、まだまだ大物の名前が残っているのだが、全く見知らぬ名前もいくつかあった。担当者に訊いてみると、それらは全てヨーロッパのアーティストとのこと。考えてみれば、ヨーロッパのジャズ・ミュージシャンのアルバムはまだ聴いたことがなかったので、今回はそれらをまとめて聴いてみることにした。

 まず1枚目は、 Enrico Pieranunzi/Seawardリストに「現代最高のコンポーザー・ピアニスト」との注釈が付いていた、エンリコ・ピエラヌンチ(トリオ)の95年作『シーワード』。

 以下は担当者のコメント
「こちらはイタリアのコンポーザー&ピアニスト。ヨーロピアンの気品と風格が漂うオリジナル・ナンバーで異彩を放つ巨匠です。クオリティの高い作品を驚異的なペースで出し続けていますが、その中でも最高傑作といえるのがコレ。冒頭の一音から圧倒的にダークで、ロマンチシズムを滲ませたコンポジションは、この人ならではの世界観です。」

Sting/Nothing Like The Sun 聴き始めるやいなや、圧倒的な音の流れに引き込まれた。格調高くも独特の冷気を帯びた空気の振動が心に響く。ビル・エヴァンス晩年の『ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング』に近い印象。なぜかスティングの87年のアルバム『ナッシング・ライク・ザ・サン』も思い起こしたのだが、それは、スティングの名曲「フラジャイル」となんとなく感じが似ている(気がする)曲がいくつかあったからである。何にせよ実に聴き応え満点の逸品だった。

 2枚目は、少し時代を遡り、「強烈なタッチのピアニスト」という注釈が付いていた、ミシェル・ペトルチアーニ(トリオ)の85年作『ライブ・アット・ヴィレッジ・ヴァンガード』。

Michel Petrucciani/Live At The Village Vanguard michel_Petrucciani 以下は担当者のコメント
「フランス最高とも評されるピアニスト。とにかくタッチが明瞭で、音の粒立ちがはっきりしているテクニシャンです。その独特のピアニズムが冴えるビル・エヴァンス作の1曲目やセロニアス・モンク作の8曲目、ドライヴ感あふれるソニー・ロリンズ作の2曲目など、ライヴならではの、ハイテンションな演奏。」

 実は、この人は生まれつき骨形成不全症という障害を背負っており、Henri de Toulouse-Lautrec身長は1メートルほどで、普段の移動にも難儀するほど骨がもろかったという話なのだが、そんなことは微塵も感じさせない力強い演奏がぎっしり詰まっている。

 ちょっと話が反れるが、身体の成長に障害を持ちながらも天賦の才能を発揮した偉大な芸術家と言えば、セザンヌやゴッホ、ルノワール、モネ、マネ、ドガなどとともに19世紀フランスの印象派全盛期を生きた画家、トゥールーズ=ロートレックを思い起こす。身体的障害の有無と作品の評価は別次元のものであるべきだとは思うが、それでもこの二人の作品から溢れるエネルギーには、驚嘆せざるを得ない。奇しくも二人とも36歳でこの世を去っているが、その短い人生で遺したものはあまりにも大きい。

georges arvanitas さて、3枚目は、さらにずっと時代を遡り、ジョルジュ・アルヴァニタ(トリオ)の59年作『カクテル・フォー・スリー』。

 以下は担当者のコメント
「こちらもフランスを代表する名手。バックは当時ブルーノートなどで大車輪の活躍をしていた黒人ジャズメンの二人。バド・パウエルを根底にしながらも、オーソドックスで洒脱な演奏は、この時代の雰囲気と、アルヴァニタの持ち味が良く出ています。細部のディティールにまでこだわった90年代の澤野工房のLP復刻は、大変話題となりました。」

 担当者のコメントに出てきた“バド・パウエル”は、私はまだ作品未聴のアーティストであるが、「モダン・ジャズピアノの祖」と称され、ピアノ、ベース、ドラムスによるいわゆる「ピアノ・トリオ」と言われる形式を創った人なのだそうだ。全盛期は40〜50年代だったらしい。

Georges Arvanitas/3 AM/Cocktail For Three 「ピアノ・トリオ」と聞いてまずなんとなくイメージするのは、60年代初頭のビル・エヴァンスのような、クラシックの要素も取り入れた洗練された繊細な音であるが、ビル・エヴァンス以前は、もっとジャズ然としたノリのよいピアノ・トリオも普通だったらしい。ジョルジュ・アルヴァニタの今作もそんな一枚である。全体的にコロコロと転がるような小気味良いピアノの音が心地よい。いい意味で時代を感じさせる、理屈抜きで楽しめる一枚である。

 ヨーロッパには、アメリカでは稀有な存在だったビル・エヴァンスのような、クラシックの素養をもともと下地に持っているアーティストが多く、ヨーロッパならではの気品が滲み出ている作品が多いようだ。以前『ジャズと言ったらもっぱら「ピアノ・トリオ」しか聴かない、という方もいらっしゃる』と書いたことがあるが、そんな方の多くはヨーロッパ産がお好みらしい。

Georges Arvanitas/Cocktail For Three また、担当者のコメントの最後に出てきた「澤野工房」は、ジャズ・ファン、とりわけヨーロッパのピアノ・トリオのファンにはお馴染みのジャズ・レーベルである。宣伝がましいが、先日この澤野工房の特集ページを作成した。澤野工房が10年以上のレーベル活動の中でリリースしてきたタイトルをほぼ全て網羅しているので、興味を持たれた方は一度ご覧いただきたい。もともとは大阪の履物屋なのであるが、御主人のジャズ愛が高じてレーベルを立ち上げ、いまや世界中のジャズ愛好家に支持されているという見上げたレーベルだ。もちろん履物屋のほうも営業中である。

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JAZZ INDEX
* Point ratios listed below are the case
for Bronze / Gold / Platinum Stage.  

今回の主役の「定盤」その1

Seaward

CD

Seaward

Enrico Pieranunzi

Price (tax incl.): ¥2,420

Release Date:10/May/2004

  • Deleted

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今回の主役の「定盤」その2

Live At The Village Vanguard

CD Import

Live At The Village Vanguard

Michel Petrucciani

User Review :5 points (1 reviews) ★★★★★

Price (tax incl.): ¥2,200
Member Price
(tax incl.): ¥1,914

Release Date:12/August/2002

  • Deleted

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今回の主役の「定盤」その3

3 Am / Cocktails For Three

CD Import

3 Am / Cocktails For Three

Georges Arvanitas

Price (tax incl.): ¥2,090
Member Price
(tax incl.): ¥1,818

Multi Buy Price
(tax incl.): ¥1,818

Release Date:01/March/2010
Arrival Pending

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このアルバムが最高傑作だと思います