WEB版 月刊PHILLY Vol.3

Wednesday, August 11th 2010

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WEB版 月刊PHILLY (7月号)

フィリー・ソウルに所縁のある著名人にお話を訊く「月刊フィリー」掲載のインタヴュー、このWeb版では冊子には収められなかった発言を含めた拡大版としてお送りします。第三回目は、ヒップホップ・グループRHYMESTERのDJで、プロデューサー・ユニットbreakthroughの一員としても活躍されているDJ JIN氏。サンプリング・ネタなどを通してソウル/ファンクに親しんできた氏ならではの目線でフィリー・ソウルのグルーヴについて語っていただいた。
(インタビュー・文:林 剛)


 
   

WHY I ♡ PHILLY   DJ JIN

もちろん美しいメロディとかも好きですけど、やっぱファンクですよ!ヴァーチュー・スタジオ、みたいな(笑)。

――まず、フィリー・ソウルとの出会いについて教えてください。

DJ JIN: ヒップホップを聴き始めた直後ぐらいですかね。高校生の時にヒップホップに出会って“何じゃコリャ?”っていう衝撃を受けて、どうやってこの音楽が出来ているんだろう?って辿っていく流れでジェイムズ・ブラウンとかの昔のソウル・ミュージックにも触れていって。そんな時、マクファデン&ホワイトヘッドの「Ain't No Stoppin' Us Now」がラジオでかかってたのを聴いたんですよ。それで“この曲ナンなんだ〜”みたいな。強烈に憶えてますね。で、同時期にその「Ain't No〜」のトラックを使ったフィリーのラジオDJのジョッコ(・ヘンダーソン)のラップ・ヴァージョン「Rhythm Talk」を聴いて、これも面白いなぁと思って。あれもPIRから出たんですよね。……それから大学生でソウル研究会に入って、またいろいろ知るようになったって感じですね。


――JINさんのHPでは、「好きなヒップホップ・アルバム」としてビッグ・ダディ・ケインの『Long Live The Kane』(88年)が挙げられていましたが。

DJ JIN:アルバムで言うと、今はあえてセカンドの『It's A Big Daddy Thing』(89年)という感じなんですけど……あっ、そうだ、ここに「Ain't No Stoppin' Us Now」(のラップ版リメイク)が入ってました! そうか、それで話を振られたのか(笑)。あれ、プリンス・ポールのプロデュースでしたよね。好きだったなぁ。BPM速いし、っていう(笑)。

――サンプリング・ネタとかで一番よく名前が挙がるフィリー・ソウルのアーティストというと誰でしょう?

DJ JIN:アーティストで言ったら、う〜ん、オージェイズですかね……って、俺、勝手に言ってますけど(笑)。ブレイクビーツもありますし、ファンクな曲が多い。「Give The People What They Want」のイントロは(ブレイクビーツの)定番ですよね。あと普通に「I Love Music」も出てくるし、「Darlin' Darlin' Baby(Sweet Tender Love)」もそう。みんな大好きでしょう、っていう。R&B的には(エディ・リヴァートの)息子のジェラルド・リヴァートも80〜90年代のR&Bを聴いている人だったら絶対に通ってるだろうし、いろいろリンクするポイントが多いのは、やっぱりオージェイズなのかな。


――スタイリスティックスとか、ああいうスウィートなヴォーカル・グループものとかはどうですか?

DJ JIN:好きな曲は多いですけどね。それに今のコズミック・ビーツみたいな曲を作ってる連中とかのカヴァー・ヴァージョンとかでも好きな曲いっぱいあるし。デトロイトのインナーゾーン・オーケストラが「People Make The World Go Round」をカヴァーしてたのも良かった。J88がリミックスしたやつですね。

――フューチャーズの「Ain't No Time Fa Nothing」がお好きだと聞いていたんですが。

DJ JIN:あれはクラブ・ミュージックとの親和性が高いというか、ミディアム・スロウという感じで、テンポは遅いけどビートが効いてますよね。コーラス・ワークというか曲自体にパンチがあるのはもちろんですけど、やっぱビート感。クラブ・ミュージックやファンクが好きだったりすると、どうしてもビート感に耳がいきますね。


――あと、イエロー・サンシャインの「Yellow Sunshine」とデクスター・ウォンゼルの「Theme From The Planets」もお好きだと聞いています。

DJ JIN: これもブレイクビーツとかファンクっていう感覚ですよね。どっちの曲も実際にDJとして回すことが多いし、クラブ・ミュージックのルーツなのは間違いないんで。デクスター・ウォンゼルなんかは「Theme From The Planets」が入ってるアルバム『Life On Mars』のタイトル曲もガラージ〜ロフト・クラシックだし。それに、ダフト・パンクが(「Harder, Better, Faster, Stronger」で)使ってたエドウィン・バードソングの「Cola Bottle Baby」とかもファンク的なリズム感がある。もちろん美しいメロディとかも好きですけど、やっぱファンクですよ! ヴァーチュー・スタジオ、みたいな(笑)。

――きました、ヴァーチュー・スタジオ! シグマと並ぶフィリーの名門スタジオですが、今や7インチ・マニア垂涎となっているようなファンクの名曲が多く生まれた場所で。

DJ JIN:そう。でも、高い値段のシングルはゲットしたくてもできないですけど(笑)……やっぱフィラデルフィアのファンク・シーンがルーツとなってギャンブル&ハフのPIRとかが出来ているって話もあるし、60年代後半から70年代にかけてのフィラデルフィアの音楽シーンの層の厚さっていうか、そういうのを物語ってますよね。

――今は、60年代後半のアーリー・フィリー的なrawな音にも注目が集まってますよね。

DJ JIN:まあ、2000年以降の気分でしょうね。80年代後半〜90年代だったら、やっぱいわゆるPIRクラシックみたいなものが気分だったと思うし、あと当時は自分自身もそれほどファンクの濃いところは知らなかった。でも、今は昔に比べてしっくり入ってくるものが多い。音楽自体もクロスオーヴァーしてるし。昔は自分もヒップホップやR&Bに対して正面向きすぎていたというか……昔からレコードを掘り続けてはいますけど、自分の感覚も変わってくるから(自分にとっての)新しい曲がいまだにいろいろ出てきたりとか。そういう感じで(アーリー・フィリー的な音も)今はクラブ・ミュージック的な感覚として捉えているというか。

――クラブ・ミュージックといえば、以前ブログで、ビリー・ポールの「Let The Dollar Circulate」について、あれはスティーヴ・スペイセックの「Dollar」で使われてから定番になったんだと強調されてましたよね。

DJ JIN:そうですね(笑)。あれはたぶんスペイセックのあの曲を手掛けたジェイ・ディー(J・ディラ)が一番最初に使ったと思うんですけど。しかもヴォーカルが入ってる部分を無理やり使って、もの凄いアヴァンギャルドなトラックになっていて、結果それがフューチャー・ソウルになっちゃってるという。で、これはフィラデルフィア・ソウルのクラシックにも通じてくる話なんですが、ビリー・ポールのあの曲ってMFSBの「Love Is The Message」とかと同じようにエディット・ヴァージョンがたくさん出てるんですよ。それがまた凄い良かったりして、クラブ・シーンだとそっちの方が重宝される。さっきのエドウィン・バードソングの「Cola Bottle Baby」もノルウェーのトッド・テリエっていうクリエイターがエディット・ヴァージョンを出していたりとか。クラブDJとかレコード・ディガーの間では、どのヴァージョンがいいとか、いつも話題になりますからね。




やっぱ自分が混ざった音楽、ヒップホップもそうだし、いろんな要素が混ざってるクラブ・ミュージックの現場で活動したりしてるから反応せざるを得ないのかもしれないですね。フュージョンとかジャズ・ファンク的な音楽は凄い好きだし、だからデクスター・ウォンゼル大好き、みたいな。

――そういえば、JINさんはRHYMESTERとは別にbreakthroughというユニットにも籍を置いていて、毎月第1金曜日にDJもされています。7月28日には、そのクラブ・イヴェントの10周年を記念したオフィシャル・ミックスCD『Freewheeler mixed by breakthrough』もリリースされましたが、ああいうフィリーのファンク〜コズミックな感覚の曲って、まさにbreakthroughの音楽にも通じてますよね?

DJ JIN:そう、まさにですね。それは否定しようもないです(笑)。特に歌モノのトラックを作る時は絶対にもう……。フィリー・ソウルの要素は、それぞれDJ連中の体に入ってるから、そういう要素が出てきてるのは間違いない。それに、breakthroughのレギュラー・パーティでもPIRの曲は毎晩何回もターンテーブルに乗りますよ。それこそビリー・ポールの「Let The Dollar Circulate」なんか、かけるのはエディット・ヴァージョンですけど、完全に“breakthroughクラシック”のひとつというか、トップ・リストに入ってますね。あと、さっき言ったデクスター・ウォンゼルの「Life On Mars」とかエドウィン・バードソングの「Cola Bottle Baby」、それにレイクォンの「Rainy Dayz(Remix)」ネタだったハロルド・メルヴィン&ザ・ブルー・ノーツ(feat.シャロン・ペイジ)の「You Know How To Make Me Feel So Good」とかも。ジョーンズ・ガールズの「Nights Over Egypt」なんかもそうですね。


――こうしてお話を伺っていると、JINさんが好きな曲は、クロスオーヴァー化が進んだ70年代後期以降のPIRモノが多いような気がするんですが、ご自身でそういう意識はありました?

DJ JIN:あ〜、意外と自分はないですかね。70年代後半の、いわゆる“後期PIR”って呼ばれているものは、言われてみて、ああ、そうだったのかって(笑)。でも、確かに後期PIRのフュージョン的な方向に行った感じの音は今の気分ですよね。それはやっぱ自分が混ざった音楽、ヒップホップもそうだし、今、さらにいろんな要素が混ざってるクラブ・ミュージックの現場で活動したりしてるから反応せざるを得ないのかもしれないですね。フュージョンとかジャズ・ファンク的な音楽は凄い好きだし、だからデクスター・ウォンゼル大好き、みたいな。もちろん黄金期(前期PIR)のクラシックスも好きですよ! そういえば、デクスター・ウォンゼルはタフ・シティからキーボード・リフ集とかも出ていたりして、そういうのをDJに“使ってくれ”って感じで出しているってことは、やっぱヒップホップの人たちに求められているというか。ヒップホップでは“そこにデクスター・ウォンゼルあり”というのが定説で。で、もうひとり、同じタフ・シティのシリーズからリフ集が出されているのがウェルドン・アーヴァイン。ヒップホップからしてみればデクスターかウェルドンかっていう、そのくらいの存在です。

――ちなみに、PIRモノのシングルで一部値段が高騰しているものもありますが、そういうものに関してはどうでしょう?

DJ JIN:レア盤とかはないほうがいいですよ(笑)。せいぜい何千円で買えるのがいいです。レコードは(一枚)3万円以上のものは買わないようにしてますね。それ以上高いのは別のやり方でゲットするか、諦めるか、みたいに考えていて。あと、そのシーンで定番になりすぎているような曲は別に手に入れなくてもいいかなって。もちろんレア盤って呼ばれてるものでもディープ・ファンクのシーンで定番になっている曲は好きだし、オリジナル・シングルが手に入るんだったら、そりゃ喉から手が出るほど欲しいけど、でもそこは無理して欲しくないというか。そこに労力使うんだったら、値段は高くないけどあまり知られてなくていい曲を探すってのがディグの醍醐味っていうか……そういうふうには心掛けてますね。

――新譜もたくさん出てますしね。

DJ JIN:そうですね。最近いろんな新譜が出てる中で、いわゆる今のレコーディング技術を駆使しました!みたいな曲がある一方で、昔の質感をそのまま蘇らせることで成功しているような曲も数多くある。“え、これ新譜なの?”っていう。そういう趣向の曲を最近DJとしていろいろチェックしてると新譜も旧譜もあんま関係なくなってきてて、昔の曲でも知らないものは新譜的な感覚で曲を捉えてるっていうか。特に今はいろんなレコーディング技術があって新旧の音の感触がゴッチャになってきてるし……“知らない曲は全部新譜”ぐらいの感覚で接してみるといいと思いますね。

――そういう意味ではフィリー・ソウルも永遠に新しいというか。

DJ JIN:大きな柱ですよね。ヒップホップをずっと聴いていたら音楽的な教養としてフィリー・ソウルは絶対についてくるし。ジャジー・ジェフあたりから始まるア・タッチ・オブ・ジャズ(ATOJ)の流れ、あとザ・ルーツとかは、昔のファンクとかPIRとかを経由してのものであって、そういう大きな流れはどうしても感じざるを得ないですよね。まあ、その間にスクーリー・Dみたいなのもいますけど(笑)、ザ・ルーツの連中がラリー・ゴールドとセッションしたりとか、そういう時代を超えた繋がりが羨ましいっていうか、フィラデルフィアの層の分厚さですよね。特にジャジー・ジェフは、バトルDJとして始めて、ジャジー・ジェフ&ザ・フレッシュ・プリンスをやりながら、ATOJに繋がっていくような音楽をフィラデルフィアの音楽の歴史を感じながら作り上げていった。で、いろんな人材を輩出して……まさに連綿と続いてるって感じですよね。

 

Profile

DJ JIN
 

DJ JIN

日本を代表するヒップホップ・グループ"RHYMESTER(ライムスター)"のDJ、トラックメイカー。 〈キングオブステージ〉と呼ばれるライムスターのライヴを支える一方で、クラブ・プレイを重視した活動を展開している。トラックメイカーとしても、ファンク/ジャズ/ソウルなど幅広い音楽の、深い理解に基づくプロダクションで評価を集め、ライムスターの諸作のみならず、 プロデュース、REMIXワークスは多数。またヒップホップをベースに、あらゆる音楽にクロス・オーヴァーするDJの集合体"breakthrough(ブレイクスルー)"を主宰し、05年5月 にはファーストアルバム『BREAKTHROUGH』をリリースした。同作で国内のみならず、海外でも高い評価を獲得している。

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DJ JIN 最新リリース
 
 

breakthrough
Freewheeler mixed by breakthrough

発売中 (KCCD408)
 
 
 

DJ JIN
Waxpoetics Presents Exclusive Beats Mix Series

9月1日発売 (TOCT26994)
 
 
 

 
 
文中出てきたアーティスト
* Vol.1&2に出てきたアーティストは割愛させていただきます。
 
 
  マクファデン&ホワイトヘッド
PIRの作家チームとしても活躍した男性デュオ。彼らの代表曲「恋はノン・ストップ」はスタイル・カウンシルもカヴァーし大ヒット。
 
 
 
  ジョッコ・ヘンダーソン
フィラデルフィアやNYで活躍したラジオのディスクジョッキー。「Rhythm Talk」は彼のオシャベリを乗せたラップの元祖的1曲。
 
 
 
  ビッグ・ダディ・ケイン
ブルックリン出身のラッパーで、ヒップホップ界一の色男と誉れ高い。80年代半ばから90年代にかけて名作を残す。
 
 
 
  プリンス・ポール
De La Soulの第4のメンバーとも呼ばれ、クリス・ロックやビースティー作品を手がけた名プロデューサー。Dan The AutomaterやRZAとのユニットでも知られる。
 
 
 
  インナーゾーン・オーケストラ
デトロイト・テクノのカリスマ、カール・クレイグによるプロジェクト。テクノとフリージャズをMixした革新的スタイル。
 
 
 
  J-88
Jay Dee率いるSlum Villageが契約上、使った変名。2000年に『Best Kept Secret』を発表している。
 
 
 
 
  イエロー・サンシャイン
MFSBのチェンバース兄弟を中心にデクスター・ウォンゼルもキーボードで参加した異色インスト・ファンク・バンド。
 
 
 
  ダフト・パンク
ご存知フランスが誇るエレクトロ・デュオ。文中にある「Harder, Better, Faster, Stronger」はカニエ・ウェストが「Stronger」でサンプリング。
 
 
 
  エドウィン・バードソング
ロイ・エイアーズのバンドに参加していたキーボード奏者/アレンジャー。ロックやファンク、ジャズをMixしたスタイルは当時斬新だった。
 
 
 
  J・ディラ
ヒップホップ・ファンなら知らぬ者はいない“天才”プロデューサー。多くの名曲を残し、シーンに多大な影響を与えたが06年に32歳という若さで亡くなる。
 
 
 
  レイクォン
Wu-Tang Clanのオリジナル・メンバーで男子から人気の高い渋い役どころ。久々に出した最新作は高い評価を得ている。
 
 
 
  タフ・シティ
オールド/ミドルスクールの名門レーベル。ビート職人45KingやSpoonie Gee、Cold Crush Brothersなどが作品を発表。
 
 
 
  ウェルドン・アーヴァイン
ニーナ・シモンの音楽監督としても知られる鍵盤奏者。レアグルーヴ・ブームの時再評価され、ヒップホップのサンプリング・ソースとしても有名。
 
 
 
  ジャジー・ジェフ
俳優のウィル・スミスとユニットを組み一躍名を馳せ、ソロでも活躍。アーティスト集団ATOJを設立し、プロデューサー育成にも精を出すフィリーの才人。
 
 
 
  スクーリー・D
フィラデルフィア出身の元祖ギャングスタ・ラッパー。同郷のRootsは「Saturday Night」を「Without A Doubt」でサンプリング。
 
 
 
紙版 月刊PHILLY!
 
 

WEB版では読めない特集「MJ in フィリー〜マイケルの青春」、PHILLY eats Philly(フィリーを使ったソウルおつまみ)など掲載! 詳しくはソニー・スペシャルサイトで。
 
 
 
 
 
 
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(松尾潔)

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(村上てつや)

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