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WEEKEND“disc”ussion 『空中キャンプ』を語る!page3

Tuesday, March 23rd 2010

WEEKEND'DISC'USSION

WEEKEND企画 ディスカス #001 『空中キャンプ』FISHMANS page3

— ファッション雑誌と試聴機

泉水 「でも逆に高校でもキャッチできてなかったのはサニーデイサービスとか。今は好きだけど、当時はいまいち入ってこなくて。みんな聞いてた?」

モニカ 「俺は聞いてたよ。『ここで遭いましょう』からだからちょうど 96年 かな。」

寺澤 「俺もサニーデイは『青春狂走曲』からかなー。でも『ポップジャム』(NHK)で知った。森口博子が司会の時の(笑)。」

モニカ 「その後に出た『サマーソルジャー』が決定打だね。格好良すぎた。『愛と笑いの夜』(『サマーソルジャー』が収録されてるアルバム)をフルで聴いた時に、ちょっとオシャレになったって思ったもん。」

寺澤 「今はそんなに聞くってこともないんだけど、当時なんであんなに好きだったんだろうって思って考えると、歌詞とかで “東京に住むであろう自分” を想定できたんだよね。『そっちはどうだい?』とか『うまくやってるよ!』とか。中学の時からもう東京に行きたかったからさ。」

加藤 「地方に住んでるとサニーデイの世界観に対してやたら憧れが強かったよね。」

ファンタ 「みなさん、そんなに歌詞もちゃんと聞いてたんですね。」

モニカ 「イヤ、どっちかっていうとアタリだね。アタック感。印象とか、そういうので決めてた。」

寺澤 「確かに、買うまでは歌詞わからないからね。選ぶ基準は印象かも。」

加藤 「ジャケとかも含めて『なんか良さそう』みたいな。」

泉水 「あとは雑誌からの情報だよね。今よりも雑誌の存在が大きかったよね。」

加藤 「そうだね。雑誌は地方にも平等に届いて来てたからね。あとは数ある雑誌の中からイケてる情報をいかにセレクトできるかどうかで決まってたね。しかも雑誌を読む時間とか当時超あったから。立ち読みの具合が半端なかった。と言いつつ、カルチャー誌よりもファッション誌を手にしてしまう田舎の10代。」

泉水 「ファッション誌ってみんな読んでた?」

ファンタ「いやいや、地方からしたらすごい大事だったんすよ!なんなら全部読んでましたよ。東京みたいに街にオシャレな人が歩いてるわけでもないし。どういうのがオシャレかってわからなかったから。」

加藤 「『smart』とか『BOON』とか『Warp』とか。ちょい背伸びして『メンノン(Men's nonno)』なんでも読んでたよ。」

水野 「『asayan』とかね。」

加藤 「『asayan』ってあったねー!」

寺澤 「読んでないと東京行けない感じあったよねー。」

モニカ 「ずっと東京だったけど完全にオシャレじゃなかったな。でもイトーヨーカドーで洋服を買ったりするのはオシャレじゃないんだなってことくらいは雑誌読まなくてもわかった。未だに裏原宿とか行くとドキドキしちゃう。店とかも行かなかったなー。」

ファンタ 「ウチらも店には行かないですけど、地元の洋服屋で雑誌に載ってる服に似てる服を探すのに必死でしたね。オシャレに見えるように。」

加藤 「とにかくブランドって感じだった。雑誌に載ってないヤツ買っちゃった時は少しでも載ってないか逆に探したもんね。有名なブランドに決まってる!って。」

泉水 「それを俺たちは CD でやってたかも。服持ってなくても、UNDER WORLD 聞いてたらオシャレだとか。みんな聞いてるからとりあえず抑えておけ的な。田中フミヤとか。」

寺澤 「まずファッション雑誌のカルチャーページで音楽情報キャッチしたりね。UNDER WORLD とか確か『smart』で知ったもんね。」

加藤 「そうそう。本とCDが一緒に置いてあるような HMV とか TSUTAYA なんかよりも全然小さい街の書店があって、雑誌読んだついでにチェックくらいな感じ。その CD コーナーもヒットチャートのばかり目立ってて、良い感じのは奥の方にジャズとかと一緒に申し訳程度にちょっとある感じで並んでた。モニカさんのイトーヨーカドーじゃないけどここで選んじゃダメだってことは感じてたね。」

泉水 「その点、東京は大型レコードショップが近くにあったのは大きかったね。フリーペーパーはあるし、試聴機はあるし。」

加藤 「試聴機の存在は大きかったね!」

泉水 「休みの日なんて朝行って、夜まで聞いてたことあったもんね。」

モニカ 「俺も学校帰りは必ず行ってた。」

ファンタ 「俺、試聴できる文化知ったの東京来てからですよ。」

加藤 「確かに。地方にもあったかもしれないけどちゃんとしたのはなかったかも。だから使い方とかヘッドフォンの付け方すらわからなかったよね。頭じゃなくて下?みたいな。」

寺澤 「名古屋は結構充実してて、大きな柱取り囲んで一周試聴機とか。とりあえずタダだし聞いておこうって感じ。隣に置いてある目当てじゃないのも聞いちゃったりするからね。そういう場合ジャケットが影響したりするんだよね。なんかこれ気になるっていう。」





文中に登場したCDたち

05. 奥田民生「29」

キャリアを通して、こんなにも柔軟にメジャーで戦っているアーティストがいるだろうか。オリコンは小室サウンド一辺倒(もしくはビジュアル系)の中、強烈にダウナーなビートと普段着でソロデビュー。その活動とビートがゆるいなんてウソだ。猛烈に何かに抗う意思がある。それは、例えばクラッシュがレゲエのサウンドを好んだのと同じことだ。民生が変わらずにヒットチャートにいることで、どれだけのミュージシャンが救われていることか。音楽で戦いを続けるならビートで語るべきだと一人っきりで宣言しているかのような名盤。
(泉水マサチェリー)


06. THE YELLOW MONKEY「SICKS」

メンバー自身、「一切不安がなかった」という状態の中で録音されたこのアルバム。使い古されたロックという音楽の中で、この国特有の湿り気と、かの国がもつダイナミズムを、折衷というレベルを超えたところで結実させた後にも先にもない真のオリジナリティ=人自身が、かつて誰も獲得できなかったタイプのスケールで鳴っている。異形なのに王道。「人間って何なのさ」という問いに対する、ロックという形のひとつの解答。良い音楽って、それ以外何者でもなく、何者でもあり得るのだ。間違いなくバンドの最高傑作にして、日本人によるロックの金字塔。SICKS完全版DVD収録のレコーディング時の映像は必見です。
(寺澤K太郎)


07. TOKYO NO.1 SOUL SET「Jr.」※廃盤

真夜中ひとり眠れないまま部屋のソファでぼんやりとテレビ(というより光りっぱなしのブラウン管)を見ているといつの間にかそこで古い映画がはじまって、茶番と思いつつもシーンとシーンの間に時々出て来る顔も名前も知らない俳優にうっかりぽっかりと心を奪われたり。そして次の日にはすっかり忘れてしまう。これ、目立った印象深いシングル曲もない地味なアルバムなんだけれど、なぜか記憶のどこかに記号のように引っかかる不思議な曲ばかりで、だから時々、そのリリックやメロディが実体験にリンクすると、否応なしに気絶しそうになります。
(イーグル加藤)


08. サニーデイサービス「東京」

東京の街にあふれる若者たちって、実はほとんどが地方出身だという、東京。まだ愛を知らない、恋におちたモラトリアムな少年と、いつのまにか大人になっていく少女の、ある晴れた春の日の景色。歳の頃は19歳。その時しか持ち得ない輝きと悲しみを銀盤に閉じ込めた、すなわち青春自体のアルバム。かっこわるいから美しくて、きれいだね。あの頃はいまより少しだけ暖かかったね。「東京」というタイトルはダテじゃないです。
(寺澤K太郎)