異才プロハスカの見据える「死」と「生」。
確かな一貫性で中世からバロックへ、そして・・・!
中世から現代までの様々な重要作で名演を聴かせてきただけでなく、ソロ・アルバムにおいては独自の観点から知名度の低い曲も積極的にとりあげ、現代社会を見据えた挑戦的なプログラムを提案しつづけてきた異才アンナ・プロハスカ。コロナ禍により全世界の人々が新たな暮らしを模索しはじめた2020年夏、隔離体制の中録音されたバッハ・アルバム『救済』も記憶に新しいところ、パンデミックを見据えたテーマに基づくさらなるアルバムが登場しました。
中世音楽や伝承歌、17-18世紀のバロック作品を中心に「生」と「死」、そして「疫病」を軸として集められた有名・無名の傑作群を、ドレスデンで発足した古楽器グループと縦横無尽に歌い上げてゆきます。ベルリオーズやラフマニノフも引用した有名なグレゴリオ聖歌が、ハーディガーディの異界的な響きのなかで唱えられる幕開けに続き、玄妙な中世音楽を経てバロックへ至る多様なスタイルに一貫性を与えるのは、確かな存在感で聴く者を惹きつけてやまないプロハスカの美声。14はヘルマン・ヘッセの「車輪の下」にも登場し、そのメロディがロックに取り入れられたり日本でもCMで使われた有名曲ですが、もともとの歌詞はペストの蔓延を嘆く内容なのだそう。さらには「すべての孤独な人々よ」「誰一人救われることはなかった」と歌われるビートルズの『エリナー・リグビー』、「なに一つ上手くいかなかったが、いつか私は、歌の神の前でひたすら唱えることだろう、ハレルヤと」と歌う、ヨーヨー・マなど多くのクラシックのアーティストもカバーするレナード・コーエン[1934-2016]の『ハレルヤ』といった普遍的なメッセージを持つポップスの名曲も収録。打楽器や撥弦楽器のサウンドも魅力的な古楽器奏者たちの共演も頼もしく、プログラムの中軸を見据えた解釈の充実度が、選曲の妙に奥行きを与えています。(輸入元情報)
【収録情報】
1. グレゴリオ聖歌:怒りの日
2. 作者不詳(フランス伝承歌):狼たちが騒いでいるのが見えた
3. 作者不詳(ドイツ伝承歌):あれは刈入れをする者、その名も『死』
4. 作者不詳(スペイン伝承歌):わたしは黒肌女と呼ばれ
5. ロレンツォ・ダ・フィレンツェ:自分でも、どうしたいのかわからない
6. サロモーネ・ロッシ:対話形式によるソナタ
7. カヴァッリ:歌劇『エリオガバロ』よりレチタティーヴォとアリア『去れ、生ける敵よ/仕え続けて苦しむがいい、わが心よ』
8. ブルーンス:拭い去るがいい、流れる涙を
9. グラウプナー:教会カンタータ『病がわたしを圧し潰す』 GWV.1155/09b
10. トゥンダー:教会カンタータ『ああ主よ、どうかあなたの大切な御使いたちを』
11. ヴォルケンシュタイン:誰なのか、太陽よりも強く輝くのは
12. マショー:美しく愛らしき貴婦人よ
13. パーセル:梅毒だの伝染病だのが Z.471
14. 作者不詳(オーストリア伝承歌、伝マルクス・アウグスティン):おお親愛なるアウグスティンどの
15. トゥンダー:怒りを収めてください、愛しき主よ、どうか憐れみをもって
16. レノン=マッカートニー:エリナー・リグビー
17. ブクステフーデ:嘆きの歌 BuxWV.76
18. ブクステフーデ:主よ、あなたが傍にいて下さらないなら BuxWV.38
19. コーエン:ハレルヤ
アンナ・プロハスカ(ソプラノ)
ラ・フォリア・バロックオーケストラ(古楽器使用)
ロビン・ペーター・ミュラー(ヴァイオリン、指揮)
エミリー・ディーンズ(ヴァイオリン、ヴィオラ)
ロバート・スミス(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
ヴァネッサ・ハイニシュ(テオルボ)
フェルナンド・オリバス(テオルボ、バロックギター)
マヌエラ・マリア・ミッテラー(各種リコーダー)
レベッカ・メルテンス(ファゴット)
アンドレアス・キュッパース(チェンバロ、オルガン)
ノラ・ティーレ(打楽器、ハーディガーディ、各種バグパイプ)
録音時期:2020年7月
録音場所:ノイマルクト・イン・デア・オーバープファルツ、ライトシュターデル
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)