このboxには、CD単品での初発売時には世界初録音が「売り」だった曲目が含まれている。 従って、「代表作が入っていない」などというレビューは見当はずれ。 さらに言うなら、それらは、まだ批評が健全だった頃の「R＆#233;pertoire」の１０点（満点）、廃刊前の「Le Monde de la musique」の「CHOC」マークを獲得していた演奏である。 「シェルシ独特の世界を十分に租借しておらず」という意味不明な形容も当てはまらない。 普段から「咀嚼」という言葉を使っておらず、「そしゃく」の変換候補の最初に上がってこないから、「租借」と誤変換するミスが起こるのだ。 早い話が、半可通が適当な事を書き込んだだけではないのか。 こんなレビューが、なぜ掲載されているのか、理解に苦しむ。

高橋アキさんの音楽性と技巧の高さを如実に示す、瞠目すべき一枚。シェルシのいくつかの録音の中でも、屈指の演奏である。

シェルシの代表作が入っていないので、この作品でシェルシの全貌が明らかになったなどといってはいけない。 演奏も、シェルシ独特の世界を十分に租借しておらず、見当違いなサウンドになっている。

シェルシの山羊座の歌を呪文と結びつけるのは、印象論としては正しい。しかし、この音楽で目指されたのは呪詛儀式の再現ではないということは、指摘されなければならないだろう。 人の声がどのような表現を持ちうるのか、その可能性をそれぞれの歌で探求してみせる。平山の声は、旧録音よりも鋭さは減退したが表現に丸みが出てきた。 一本槍な旧録音も捨てがたいが、この録音の老獪な演奏も捨てがたい。

ジャチント・シェルシの山羊座の歌の決定盤。 80歳を超えてなお現役で、この曲の演奏に関しては他の追随を許さない。 まるで原始宗教の儀式のようで、凄みがある。