アンタル・ドラティが指揮したロッシーニとヴェルディのオペラ序曲集だ。 ロッシーニはミネアポリス交響楽団、ヴェルディはロンドン交響楽団の演奏による。 選曲面では定番中の定番を集めたアルバムであり目新しさはない。 両方の作曲家ともにドラティのレパートリーでは珍しいく、演奏はどちらのオケもちょっと荒いが、演奏自体はメリハリがあって悪くはない。 録音は1950年代の録音ではあるが、マーキュリーの当時の優秀な録音のおかげで、今聴いてもなかなか迫力があって悪くはないと思います。

1960年代ぐらいまでのジュリーニは誠に情熱的でスリリングな演奏が多く、素晴らしいですね。ジュリーニといえば、晩年のゆったりとしたテンポの、枯れた味わいのイメージが強いのですが、もっと壮年期のディスクも評価されてしかるべきだと思います。当録音も例外でなく、聴いていて自然に心が高揚してきて、作品の魅力にすっぽりと取り囲まれてしまうことしきりです。全曲みな甲乙つけ難い魅力に溢れ、あっと言う間に「シチリア島の夕べの祈り」まで流れてしまうのであります。いつまでも終わらないでくれと願っても。

ｱﾊﾞﾄﾞの3回の録音中でも当盤が一番の出来。オケのソノリティーが薄めだが逆に木管や疾走する弦のニュアンスなど鮮明でヴィヴィッド。沸き立つ様に高揚するオケが最高に魅力的。ハルサイといいLSOとの相性は抜群だ。確かにこの頃の彼はとても輝いていたが、その後の苦難をへてレクイエムやファルスタッフへの境地へと達する。当曲集中のベストワン、大きな音で聴いて颯爽としよう。

ロンドン響のアバド！ BPOなどにドーンと就任せず、小回りのきいた地位で颯爽としているアバドが、もしかしたらアバドらしい魅力を十二分に出し切れるかも知れない。ここでのアバドの冴え降りは、アバド史屈指の録音。トスカニーニを越えたロッシーニと言って過言ではない