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一瞬の光

Kazufumi Shiraishi

User Review :4.5
(2)

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784043720019
ISBN 10 : 4043720017
Format
Books
Publisher
Release Date
August/2003
Japan

Content Description

三十八歳という若さで日本を代表する企業の人事課長に抜擢されたエリート・橋田浩介。彼は、男に絡まれていたところを助けたことがきっかけで、短大生・中平香折と知り合う。社内での派閥抗争に翻弄されるなか、橋田にとって彼女の存在は日増しに大きくなっていった。橋田は、香折との交流を通じて、これまでの自分の存在意義に疑問を感じ、本当に大切なことを見いだしていくのだった…。―混沌とした現代社会の中で真に必要とされるものは何かを問う、新たなる物語。各紙誌書評で絶賛と感動の声を集めた気鋭のデビュー作、待望の文庫化。

【著者紹介】
白石一文 : 1958年福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、出版社に勤務。2000年『一瞬の光』で小説家としてデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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「人は一体何のために、またどのように生き...

投稿日:2021/04/22 (木)

「人は一体何のために、またどのように生きうるのか」そして、「では自分自身は何を選び、どう生きていくのか」。 本作はとりもなおさずこの「生きる」ということについて徹底的に描いた白石一文氏のデビュー作。 読みどころは何といっても物語自体の多軸性と、全編にわたり貫かれる思索の深さ、そしてこの二者が緊密に関わり合うことによって立ちのぼる強烈な迫真性であろう。 日本有数の大企業において、若くして組織の中枢に立つ男を主人公とした話である。彼を取り巻く熾烈な社内抗争、恋人との日々の関わり、過去の回想(主人公にとって本質的な出来事や存在への追憶)、そしてある出会い。これらを主軸としながら物語は進むのだが、それぞれの軸は独立させても1つの作品になり得るほどに骨太なものだ。 例えば社内抗争のみに特化すれば会社組織における権力闘争や政治・経済ものとして十分に読み応えがあるし、また一方で恋人との関わりや回想の軸にスポットライトを当てれば現代を舞台としたラブストーリーたりうるだろう。だが本作はあくまでこの複数の軸が並行し、時に絡み合いながら展開することで熱を帯び、物語としての推進力を獲得している。そうした中で、いくつかの事件を契機としながら主人公は自分自身としての大きな決断をしていく。 白石氏の著作ないし作家自体への評として「ジャンル分けが難しい」「ハイスペックな設定の人物ばかりが出てくる」といった内容のものを目にすることが少なくない。 なるほど本作をとってみても主人公は東大卒のエリートサラリーマンであり将来を嘱望されている設定であるし、前述したように小説としてのジャンル分けは困難だ。またそれは確かに他作品にも共通する点であることは否めない。 このことが意味するものは一体何だろう。そう考えたとき、氏が本作含め多くの著作の中で主題に据えているもの、すなわち「生きる」ということに揺り戻されるのだ。 私たちは日々、他者との関わりの中で時に対立・衝突したり、かと思えばある瞬間何かに意識のピントが合い、自分自身の大切なものやそれまで知らなかったものとの僥倖を果たすこともある。意識と無意識のはざまの中で自分自身という存在を絶えず収斂させながら、連綿とあらゆることを飽かず繰り返す人間全般の生や存在は一義的ではありえない。人間の生をジャンルで規定することが無意味である以上、生そのものを主題とした氏の作品の性格・性質がジャンルの垣根を横断せざるを得ないことは必然の帰結である。 また、この「生きる」という厄介で根源的なテーマに対する氏の姿勢は驚くほどに誠実だ。 一切のごまかしや無根拠な楽観がなく、それゆえに時に非常に冷徹な印象を読者に与える。 有名大学を出ていること、大企業に勤めていること、容姿や能力に恵まれていること。 そういったことが個々人に付与するアドバンテージが仮にあったとして、果たしてそれがこの「生きる」という途方もない難問を前に、一体どれだけの価値を持ちうるというのか。 外皮を1枚1枚削ぎ落とすように「生きる」ということ自体の本質を熟考したとき、私たちの個別に持っている(と信じている)もの、その表層的な事柄は、自らの生ひいては大切な誰かの生を本当の意味でより良いものとする武器で果たしてありえるのか。 そうした問いかけを、氏はいわゆるハイスペックな人物たちを殊更に描くことによって、逆説的に私たちに問いかけているのではないだろうか。 最後になるが、本作はハードな物語である。 目を覆いたくなるようなシーンや、哀しみに胸がつぶれそうになるシーンも少なくはない。だがそれでも、読み進めるとき心は確かに動いているし、読後に残る感情は爽やかさをともなったポジティブなものだ。 例えば何か自分にとって確かなものを探しているとき。あるいは現実に倦み心底途方に暮れているとき。はたまた誰かを強く愛しているときでも憎んでいるときでも良いと思う。 不器用なまでに心のエネルギーを持て余し、生きることと派手な取っ組み合いを繰り広げるすべての人に、この物語のことを紹介したい。 きっとあなたの心に、この物語は深く深く刺さるだろう。 「一瞬の光」は私にとってそんな1冊だ。

チョコぞう さん | 神奈川県 | 不明

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この作品は多少の非現実さ(登場人物の背景...

投稿日:2021/04/12 (月)

この作品は多少の非現実さ(登場人物の背景設定)や場面展開の散漫さが 気になるところはありますが、それを差し引いても余りある勢いと、 刹那な橋田の愛と生きる姿に引きずり込まれました。若いころに読みたい作品です。

aozo さん | 鳥取県 | 不明

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Book Meter Reviews

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

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  • 三代目 びあだいまおう

    絶句、、か、哀しい!あまりにも重い読後感に今相当のダメージを受けています。この感じ、これまでの読書経験の中でも初めてかも。主な人物は3人。語り手の『私』こと浩介は超一流企業で最速出世の道をゆく容姿端麗スーパーエリート。そして、家柄·性格·容姿全てを備えた瑠衣と、虐待·暴力·蔑みの中で辛うじて生きてきた香折という2人の女性。権力抗争、騙し裏切り、そして愛、読む勢いが止まらない❗辛すぎる展開にせめてハッピーエンドをと願うが、まさかの終盤!でも、貴女はきっと最後にかけがえのない幸せつかめたんだよね!傑作‼️🙇

  • みも

    驚嘆!これがデビュー作とは…。単純な感動とは違う…甘さと辛苦と悲嘆と鬱屈と憤怒とがゆっくり撹拌され醸成されてゆくような、揺らぐ心の置き場のない複雑な感銘。丹念且つ重厚…巧みな構成と丁寧な心理描写で、企業内の派閥闘争や政治との癒着、恋愛模様に苛烈なDV問題を絡める。怜悧・聡明・冷徹な男が、人生を捧げた社長の裏切りと上司の自死を経て人生観を変転させる姿。泥沼から這い出た男の刹那的でロマンティックな生き様は、ある種のヒロイズム。僕は理解している。性愛とは別次元の男女関係は、現実に存在する事を。#ニコカド2020

  • 遥かなる想い

    本書を最初に読んだ時の印象は良い本にめぐりあえて良かったということである。たまたま 本屋で見たその装丁とあらすじが面白そうだったから購入したのだが。会社におけるエリートが、人に裏切れながら愛を見出していくという話は白石一文の定番のようだが、最初に読んだこの本が一番良かった気がする。

  • じいじ

     16作目のこれは、白石小説ベスト1です。随所にあるツッコミ所は、この著者の持ち味である。文中に鏤められた白石哲学は、デビュー作とは思えぬ円熟した味わいです。今作は、大企業の派閥抗争、政財界の癒着、ヤミ献金、政府開発援助(ODN)資金の還流などお仕事分野と、38歳の独身男と二人の女との愛と恋の二つの話を描いた物語です。個人的には、後者の話の方が断然面白い。仕事の部分は、もっと圧縮して300頁くらいに仕上げてほしかった。著者の語る、女性から見た「男性観」が面白い。もっと早く読むべきだった、と後悔している。

  • モルク

    超一流企業で社長の側近として将来を嘱望されエリートコースまっしぐらの主人公橋田。彼には社長の姪であり才色兼備な恋人瑠衣がいるが、母と兄に虐待され続けてきた短大生香折に出会い、彼女から目が離せなくなっていた。そこに派閥争い、政界との癒着そして裏切りなど様々な要素が絡む。彼に一途な愛を注ぐ瑠衣に肩入れしてしまい、彼の選択に………となる。それでも、何のかんのいいながらも、引き込まれてしまい600ページ近い長編ではあるが読みきってしまった。

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