ヨンメッリ:『聖週間水曜日のための哀歌』
クリストフ・ルセ&イル・セミナリオ・ムジカーレ、レーヌ、ジャンス
イタリア・バロック後期、ナポリ楽派のオペラ作曲家として劇場で活躍する一方、17のミサ曲を書き上げるなど教会音楽の分野でも才能を発揮したニコロ・ヨンメッリ(ヨメッリ、ヨメルリとも)の宗教声楽曲のアルバム。演奏はクリストフ・ルセ指揮イル・セミナリオ・ムジカーレらによるものです。
【オペラ作曲家としての順調なスタート】
グルックと同年生まれのイタリアの作曲家、ニコロ・ヨンメッリ(ヨメッリ、ヨメルリとも)[1714-1774]はナポリ近郊アヴェルサの生まれ。ナポリで音楽教育を受けたのち、オペラ作曲家としてナポリ、フィレンツェで注目されるようになり、26歳のとき、ローマで『リチーメロ』を上演してヨーク公から高い評価を得ています。
【女子孤児院での宗教音楽活動】
27歳のときにはかつての師でもあるハッセの後任として、ヴェネツィアの女子孤児院である「インクラビーリ慈善院」の楽長に就任します。ヴィヴァルディの伝記でも有名なヴェネツィアの女子孤児院は、ヴィヴァルディが関わった「ピエタ慈善院」のほかにも3つあり、これはそのひとつということです。
これら女子孤児院の演奏水準は非常に高く、ヴィヴァルディの数多くの傑作誕生にもつながることになったわけですが、ヨンメッリの場合も同じで、「インクラビーリ慈善院」のために、数多くのミサ曲や合唱曲を書くこととなるのですが、ここではオペラの作曲も許可されており、ヨンメッリはこの時期数多くのオペラを作曲してもいました。
【ヴァチカンでの宗教音楽活動】
その後、35歳のときには、50年に1度の聖年「ジュビレオ」を迎えるヴァチカンを音楽面でサポートするために、枢機卿となったヨーク公により推挙され、教皇ベネディクトゥス14世により、ローマ教皇庁教会の副楽長に任命されることとなります。
ちなみに、このアルバムに収録された「聖週間水曜日のための預言者エレミアのラメンテーション」は、このローマ教皇庁教会の副楽長時代、1750年に作曲されたものです。
【シュトゥットガルトでの活動と晩年】
当時のローマは、ロンドン、パリに続くヨーロッパ第3の大都市ということもあり、ヴァチカンの大きなイベントでの活動は、ヨンメッリの名を国際的なものとするのに十分な効果がありました。
ヨンメッリは、まずウィーンを訪れて台本作家のメタスタジオらと親交を結び、続いてシュトゥットガルトに赴いて1753年から1768年まで、15年の長きに渡って同地で楽長を務めあげます。その間、名声は徐々に高まり、モーツァルト父子がルートヴィヒスブルク城を訪れたりもしていました。
1768年にナポリに戻ると、それまでの活動の集大成ともいうべきオペラ『棄てられたアルミーダ』に取り組み、各種オペラの技法をふんだんに投入して聴き応えある作品に仕上げています。
【演奏について】
指揮者のクリストフ・ルセは1961年、フランス、アヴィニョンに生まれ、エクスサン・プロヴァンスで育ったアーティスト。早くからバロック音楽に関心を示し、13歳からチェンバロを習い始め、スコラ・カントルムではユゲット・ドレフュスに、ハーグ音楽院ではボブ・ヴァン・アスペレンに師事。1983年、22歳でブリュージュのチェンバロ・コンクールで優勝。1992-4年にクープランのクラヴサン曲全集を録音するなど、クラヴサン奏者として名声を確立。一方、バロック・オペラや声楽作品にも関心が高く、1991年にレ・タラン・リリクを創設、数々のバロック・オペラを上演し、指揮者としての評価も高めています。ここでは1985年にジェラール・レーヌによって設立されたイル・セミナリオ・ムジカーレを指揮、豪華ソリストと共にヨンメッリの作品を美しく仕上げています。(HMV)
【収録情報】
● ヨンメッリ:聖週間水曜日のための預言者エレミアの哀歌
第1の哀歌
1. Incipit Lamentatio [02:23]
2. Aleph [00:26]
3. Quomodo sedet [03:25]
4. Beth [00:33]
5. Plorans ploravit [04:50]
6. Ghimel [00:15]
7. Migravit Judas [03:32]
8. Daleth [00:33]
9. Viae Sion lugent [02:36]
10. He [00:20]
11. Facti sunt hostes [01:20]
12. Parvuli eius [02:28]
13. Jerusalem convertere [03:25]
第2の哀歌
14. Vau [01:28]
15. Et egressus est [03:56]
16. Zain [00:46]
17. Recordata est [05:30]
18. Heth [00:32]
19. Peccatum peccavit [04:01]
20. Teth [00:25]
21. Sordes eius [00:54]
22. Vide, Domine, afflictionen meam [02:34]
23. Jerusalem convertere [02:55]
第3の哀歌
24. Jod [01:46]
25. Manum suam [03:00]
26. Caph [00:41]
27. Omnis populus [02:57]
28. Vide, Domine, et considera [01:50]
29. Lamed [00:37]
30. O vos omnes [03:18]
31. Quoniam vindemiavit me [01:31]
32. Mem [00:25]
33. De excelso misit ignem [03:09]
34. Num [00:39]
35. Vigilavit jugum [01:36]
36. Jerusalem convertere [03:05]
ジェラール・レーヌ(コントラルト)
ヴェロニク・ジャンス(ソプラノ)
イル・セミナリオ・ムジカーレ
クリストフ・ルセ(指揮)
録音時期:1995年4月17-21日(1,2)、1991年8月27-31日(3)
録音場所:ヴェルサイユ、エコール・サン・ジェネヴィエーヴ・チャペル(1,2)、オート=ピレネー、プーザック、サン・サトゥルナン教会(3)
録音方式:デジタル(セッション)