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昔話の深層 ユング心理学とグリム童話 講談社+α文庫

Hayao Kawai

User Review :5.0
(1)

Product Details

ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784062560313
ISBN 10 : 4062560313
Format
Books
Publisher
Release Date
February/1994
Japan

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●「昔話の深層」(1977)は「母性社会日本...

投稿日:2021/07/19 (月)

●「昔話の深層」(1977)は「母性社会日本の病理」(1976)に続いて出版され、その後「中空構造日本の深層」(1982)、「昔話と日本人の心」(1982)が、そして少し遅れて「神話と日本人の心」(2003)が刊行されている。●元々河合隼雄氏はユング派分析家の資格取得のための論文テーマに日本神話を取り上げ、それはかなり構想を温めたのち 上記5冊の中では一番遅い出版となっているが、これらの書物は日本神話から始まった神話からの文化、心のあり方の研究が、人間の内的な成長過程のそれぞれの段階を描き出したものとしての昔話へのアプローチも含め広がり、シリーズ的な流れをもっていると受け止められる。 これらはユング心理学、西洋と日本の自我の確立過程や文化の違い、そのルーツとしての神話や昔話に関する分析研究の理論展開がシリーズ的に読み解くことができる。●内容的にはユングの考え方の紹介、西洋における自我の確立過程から見た父性原理を中心としたキリスト教文化圏と中空均衡構造をもつ日本における文化や考え方の違い、並びに意識と無意識そしてその統合としての自己と自我の問題等について最終的にはそれぞれ日本人の心への分析、洞察そして提言がなされている。 ●「昔話の深層」はグリム童話を主に研究対象とし、その昔話が人間の心の成長過程の各段階を表すもの見る立場からの洞察、分析を行っており、それぞれ紹介する昔話から無意識、意識、元型、グレートマザー、母親からの自立、影、死と再生、アニマ・アニムス、イニシエーション、父性原理、自我し自己、自己実現(個性化)の過程等のテーマを取り扱っている。そして、日本の神話や昔話並びに他民族の昔話とも比較検討を行う中でユング心理学の考え方の紹介と日本を中心とした違いなどにも触れている。●ユング心理学の紹介が本書の軸となっているが、日本との違いが本文の中で随所に比較検討されており、最終的には自己実現(個性化)の過程が、父性原理を中心とした自我の確立構造を有する西洋の考え方をそのまま日本に適用できるかどうかについては疑問があるとし、二者択一的な選択ではなく、葛藤の中に身を置く中で、「第三の道」の発見に努めることが、個性化の過程につながるとしている。 ●意識を明確に持つために、遠く忘れられた無意識があるとすれば、その無意識に気づくことの中から、意識を背景とした自我が無意識を統合した自己に近づけていく。その時の自己とは古代から共に歩んできた自然への敬意を忘れぬこと、そして、夢にも現れる無意識への感覚を引き寄せようとすること、さらに感情、心に目を向けること等が大切になるだろう。そう考えると自己実現とは、今自我が感じていない無意識も含め統合した自己を感じられること自体が自己実現としいうことになるのだろう。そういう意味では、何をするのかという以前に生きる上での心のあり方、意識の広がりや平たく言えば自分を知るということなのだろうと思う。●苦しみとは、ある側面で自我が嫌なことを無意識に押しやり、その解決や消化が不完全で葛藤につながっていることであるとすれば、やはり自我と自己の統合、折り合いということが求められてくる。逆に考えれば葛藤があるということは無意識に追いやってしまっていて、消化されていないことがあるということなので、その消化するということが夢の分析やそのことについてのカウンセリングで解消されて行き、より統合された自己の実現ということにつながるのだと思う。そんな思いに誘ってくれたずっしりと重い内容の一冊でした。

brian さん | 滋賀県 | 不明

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