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一人称単数

Haruki Murakami

User Review :4.0
(5)

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784163912394
ISBN 10 : 4163912398
Format
Books
Publisher
Release Date
July/2020
Japan

Content Description

6年ぶりに放たれる、8作からなる短篇小説集

「一人称単数」とは世界のひとかけらを切り取る「単眼」のことだ。しかしその切り口が増えていけばいくほど、「単眼」はきりなく絡み合った「複眼」となる。そしてそこでは、私はもう私でなくなり、僕はもう僕でなくなっていく。そして、そう、あなたはもうあなたでなくなっていく。そこで何が起こり、何が起こらなかったのか? 「一人称単数」の世界にようこそ。

収録作
石のまくらに (「文學界」2018年7月号)
 クリーム (「文學界」2018年7月号)
 チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァ (「文學界」2018年7月号)
 ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles (「文學界」2019年8月号)
 「ヤクルト・スワローズ詩集」 (「文學界」2019年8月号)
 謝肉祭(Carnaval) (「文學界」2019年12月号)
 品川猿の告白 (「文學界」2020年2月号)
 一人称単数 (書き下ろし)

『一人称単数』は、村上春樹さんの短篇小説集としては『女のいない男たち』から6年ぶり、小説は『騎士団長殺し』から3年ぶりの刊行となります。


[装画・扉絵を担当した豊田徹也さんのコメント]
 編集者の方とサイゼリヤでお会いして、村上春樹さんの短篇小説集『一人称単数』の装画を描くように依頼されたのは、まだコロナがそこまで深刻ではなかった三月でした。「無理です」と即座にお断りしました。その方はワイン一本とその他八品を注文しました(サイゼリヤでこんなに注文した人を初めて見た)。それから彼は二時間かけて静かに説得し続け、僕はワインを飲みながら断り続けたのですが、最後の十分くらいで何故か気が変わり最終的に引き受けてしまいました。
 初めのうちはいろいろ案を出したり調子よくやっていたのですが、描く絵が決まってペンを入れる段階になってから僕は自律神経を失調し、完璧に体調がおかしくなりながら描きました。村上さんの本だから緊張したというより、人の本の絵を描くということが、自分にとっては責任が重く、相当恐ろしいことだったのです。今回、カバーがいい感じに仕上がったのは、すべてデザイナーの大久保明子さんのおかげです。
 村上春樹さんの小説は初期のころから大好きで繰り返し読んできましたが、まだろくに漫画を描いていなかった自分にとってあまりにも影響が強すぎると感じ、『ねじまき鳥クロニクル』以降の長篇は読まないようにしていました。それでもこれまで描いた自分の作品には、どこか村上作品の残響を感じます。今回このような形で村上さんのご本に係わることになったのはまったく予想もしていなかったこと。うれしいというより厳しい体験でした。
 いろんな思いがあり反省点ばかりですが、やっぱり引き受けてよかったと思います。機会を与えてくださった村上さん、そしてサポートしてくれた編集者(扉の絵の資料のレコードプレイヤーも買ってくれた!)に感謝します。


[著者・プロフィール]
村上春樹(むらかみ はるき)
1949年、京都市生まれ、早稲田大学文学部演劇科卒業。79年『風の歌を聴け』(群像新人文学賞)でデビュー。主な長篇小説に『羊をめぐる冒険』(野間文芸新人賞)、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(谷崎潤一郎賞)、『ノルウェイの森』、『ねじまき鳥クロニクル』(読売文学賞)、『海辺のカフカ』、『1Q84』(毎日出版文化賞)、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』、『騎士団長殺し』などがある。ほかに、短篇集やエッセイ集など多くの著作や翻訳書がある。


[カバー装画担当・プロフィール]
豊田徹也(とよだ てつや)
1967年、茨城県出身。2003年『ゴーグル』で、「アフタヌーン四季賞」夏のコンテスト四季大賞を受賞してデビュー。05年に刊行された『アンダーカレント』は、フランス・アングレームで開催されるアングレーム国際漫画祭に、09年度オフィシャルセレクションの一つとして出展され、フランス語版も発売。同年、パリ郊外で開催されたJapan Expoでは、第3回ACBDアジア賞を受賞。他の作品に『珈琲時間』など。

Customer Reviews

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Comprehensive Evaluation

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神戸が舞台と思われる作品が多く地元人とし...

投稿日:2021/06/20 (日)

神戸が舞台と思われる作品が多く地元人としては風景が浮かんできて楽しめました。長編と違って余計なたとえ(それが魅力でもあるんですが)が少なく、あまりくどくないところが良かった。

watatak さん | 兵庫県 | 不明

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 個人的な白眉は「ウィズ・ザ・ビートルズ...

投稿日:2021/04/17 (土)

 個人的な白眉は「ウィズ・ザ・ビートルズ With The Beatles」。  主人公が高校生だった1964年の高校の廊下ですれ違った名前も知らない同級生の少女が大切に抱えていたLPレコードが、足早に通り過ぎるその少女を”(主人公の)耳の奥で小さな鈴を鳴らす”ほどの鮮やかな印象を残していきます。  この作品で綴られている胸を詰まらせる哀しい物語の重要なエピソード(あるいはシンボル)として、しっかりと語られています。  作品自体の感想は置いといて、個人的なテーマは、「もしも自分が高校生だった頃に”耳の奥の小さな鈴を鳴らす”ほどの名前も知らない少女と高校の廊下ですれ違うとしたら、彼女は一体どんなLPレコードを抱えていなければいけないか」、です。  自分の場合、1976年から78年にかけてが”あの頃”に当たりますが、例えばビリー・ジョエルの『ストレンジャー』では少し軽いし、スティリー・ダンの『エイジャ』ではやや重い気がしますし、イーグルスの『ホテル・カリフォルニア』やフリートウッド・マックの『噂』では時代を反映してはいるもののメジャー過ぎて”鈴を鳴らす”までには至りません。大好きなアル・ステュワートの『イヤー・オブ・ザ・キャット』ではジャケットがカラフル過ぎて、少女の美しい印象が薄らいでしまいます。  パズルのピースは簡単には見つかりそうにありません。  やれやれ、です。  個人的な”謎解き”はともかく、こんな時代に、自分にとって久しぶりに”愛すべき一編”に出逢えたことを素直に喜びたい気持ちでといっぱいです。  村上さん、素敵な物語をありがとうございました。

ねずみ さん | 山口県 | 不明

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音楽の趣向は人それぞれですが『それを聴く...

投稿日:2021/04/10 (土)

音楽の趣向は人それぞれですが『それを聴く前と聴いたあとでは、自分の身体の仕組みが少しばかり違って感じられるような音楽−そういう音楽が世界には確かに存在するのだ』に痛く共感。『つまりF*が漂わせる洗練性と、その容姿の醜さとのあいだの大きな落差が、彼女独自のダイナミズムを立ち上げるのだ』にも納得。『甲子園球場は誰が何と言おうと、日本でいちばん美しい球場だ』異議なし。ただ、阪神は読賣になかなか勝てませんがね ヤクルトファンの村上さん、「阪神タイガース友の会」に入ってたのね!?甲子園で呑気に野球が観たい!

akb009 さん | 愛知県 | 不明

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Book Meter Reviews

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

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  • ヴェネツィア

    村上春樹の新刊小説。8つの短篇を収録。一見したところは、作家自身の過去のそれぞれの時期を回想風に綴った小説に見える。それが「品川猿の告白」まで読み進めてきたところで、ふとそれまでの作品を振り返ることになる。誰がどう見ても、真っ赤なフィクションである品川猿がどうしてここに紛れ込んでいるのか。実体験を語ったかのような作品群も全くのフィクションだったのではないか?そうなのだ。「ヤクルト・スワローズ詩集」は幻だし、ビートルズのレコードを胸に抱きかかえた少女も、詐欺罪で逮捕された醜い女も実は存在しなかったのである。

  • starbro

    私はハルキストでも村上主義者でもありませんが、村上 春樹の新作をコンスタントに読んでいます。本書は、バラエティに富んだ半分私小説的幻想短編集でした。オススメは、『石のまくらに』& 『品川猿の告白』です🐵 チャーリー・パーカー・プレイズ・ボサノヴァを聴いてみたい♪ https://ddnavi.com/review/656391/a/

  • しんごろ

    私小説的な作品ですね。良くも悪くも村上春樹作品な感じ。物足りないと言えば物足りないけど、これはこれでいいのかな。とりあえず村上春樹ワールドを味わえたから、良しとしよう。(もちろんハマった短編もある)要するに個人的には、つかみどころがない感じの短編ばかりなんだよね。読み終えて思ったことは、クラシックでもなんでもいいから、音楽を聴きながら酒を呑みたくなりました。こんなレビューですみません。

  • bunmei

    『ノルウェーの森』以降、彼の作品はコンスタントに愛読しています。前作の『猫を棄てる父親について語る時』も含めて、これまでの作品のように、読む者をも置き去りにする予想だにしないファンタジー性や刺々しいほどの熱い情熱は、薄まってきた分、穏やかな中に哀愁さえ漂わせる、回顧的な文体になってきていると感じました。本作はきっと、彼のこれまでの人生の実体験や付き合ってきた女性をモデルにして描かれているのでしょう。チャーリー・パーカーやサンケイ・アトムズ、ビートルズ…は、自分にとっても懐かしく感じられるテーマでした。

  • tokko

    現実と非現実との境目が不明瞭な作品群です。「一人称単数」というタイトルも「私小説」を意識してなのでしょうか。一度雑誌「文學界」で読んだものもあったのですんなり入っていけましたが、初期の短編に見られるような諧謔性はそれほど発揮されなかったのかな。

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