フリーのユーザー気質に誠実というか、発売12年後の今でも品切れになっていないボックスセットです。5枚は、未発表録音や別ミックス、未発表ライブなどの貴重な音源で緻密に構成され、けして多くないフリー作品のオルタナティブ・テイクがほぼ全曲にわたって味わえるようになっています。別ミックスを聴いて思うのが、決定ミックスがけしてバランスのよいミックスを採用した、と言えないこと。曲によってはバランスより、インパクトやワイルドさを追究していたのだ、と気づかされます。
2002年にフリーの個々のアルバムは、全てリマスターされ、さらに未発表のミックス、BBCセッションなどが追加されました。それらのアルバム収録のアディショナル・トラックとほとんど重複していません。アルバムを全部持っていたとしても。このボックスを持つべきだと言われる所以です。
DISC 1
01 Over the Green Hills [A New Stereo Mix] オリジナル・ミックスでは、パート1と2に分けられ、フェイド・アウトしてWorryにつながっていたもの。これをもともとの1曲に戻したミックス。
02 Walk in My Shadow [Alternative Stereo Mix] 変化があるのが、ボーカルの残響でしょうか。違いがよくわかりません。
03 Wild Indian Woman [A New Stereo Mix] オリジナル・ミックスにある右chの強迫的なリズム・ギターが差し替わり、ギター、ピアノのパートが加わっています。
04 Guy Stevens Blues プロデューサー、ガイ・スティーブンスの名を冠したブルーズ・ジャム。オルガンは、デリバリーのスティーブ・ミラー。ミックス違いが、「Tons Of Sobs」のアディショナル・トラックにあります。
05 Visions Of Hell 同じくファースト・アルバム制作時のスタジオ・セッション。少し凡庸なバラードですが。アンディ・フレーザーの演奏はさすがです。
06 I’m a Mover [Unused 7” Mono Mix] [Mono Version] I’ll Be Creepin’のシングルB面として検討されていたもの。
07 Moonshine [Alternative Stereo Mix] これは、違いがあまりよく分かりませんでした。
08 Woman by the Sea ファースト・アルバム用セッションの未発表曲(というより、「Remember」の原型ととらえるべきもの)。「Tons Of Sobs」のアディショナル・トラックは、ここからキーボードを抜いたミックス。
09 Free Me この曲は、ファースト・アルバム用に準備された曲だったわけです。「Free」のテイクより、アップテンポのシャッフル・リズムで、ハモンドが使われていますし、コゾフのソロも目立っています。
10 Long Tall Sally かなりラフでワイルドなセッションで、カッコいいです。彼らもこんな曲をやっていたんですね。あっという間に終わりますが…。
11 Broad Daylight [Original 7” Mono Mix] 「Free」同曲のモノラル・バージョン。このバージョンを聴くまで、女声コーラスが入っていたことに気づきませんでした。
12 Worm [Original 7” B-Side] 「Broad Daylight 」のB面でモノラル録音。「Free」のアディショナル・トラックと同じ。
13 Trouble on Double Time 発掘されたテイクを初めてミックスしたもの。「Free」の同曲とは全然印象が違う重いハードロックです。
14 Spring Dawn 未発表。アコースティックなバラード、ドラムレスです。
15 I’ll Be Creepin’ ファースト・テイク。ボーカルがダブル・トラックになる箇所があります。ギターは、オリジナルの方がソリッドですが、こちらも味があります。
16 Sugar For Mr.Morrison [A New Stereo Mix] シングルではモノラルだったものをステレオにミックス直し。
17 Songs Of Yesterday [A New Stereo Mix] オリジナル・バージョンのミックス直し。ギターが差し替えで、ロビン・トロワーのようなトーンになっています。
18 Woman ファースト・テイク。ロジャーズのボーカルはかなりフェイクが入っていますし、コゾフのソロも全然違います。
19 Mourning Sad Morning [Alternative Stereo Mix] クリス・ウッドのフルートが違うバージョン。「Free」の現行盤には、かなり多くの曲の別テイクが収められています。いちばん充実していた創作期間だったことを物語ります。
20 Fire and Water [Alternative Stereo Mix] ボーカル、ギターが違うほか指鳴らし音が入っています。最後のドラムズはフェイド・アウトしません。オリジナル・テイクはかなりギターのオーバーダブを施されていることがわかります。
DISC 2
01 All Right Now アカペラから始まり、全体的にラフでカントリー・フレーバーあふれるテイク。
02 Oh I Wept [A New Stereo Mix] ボーカルを引き立てたミックス。その分、オリジナル・テイクのスネアの残響が弱くなっている気がしますが、オリジナル・テイクを聞き直すとドラムズの音のバランスが全体から逸脱していることがわかります。
03 Remember [A New Stereo Mix] オリジナル・テイクではオーバードライブ気味だったギターとベースが補正してあり、すっきりしたミックス。ギターソロの残響もありません。オリジナルでピアノを使っていた部分をギターに。
04 Don’t Say you Love Me [New Stereo Mix] オブリガート風なコーラスが入ります。ピアノ差し替え。オリジナルがフェード・アウトのところを歌い切ります。
05 Stealer [Full Version] シングル用ミックスのフェイド・アウトなしフルバージョン。アルバム用ミックスに、ギターがところどころ加えられています。何より、鬼気迫るコゾフのソロ、アンディの演奏が最後まで聴けるのがうれしいです。
06 Highway Song [Alternative Stereo Mix] ちょっと、どこに変化があるのかわかりません。
07 On My Way [Alternative Stereo Mix] 2:00あたりから、オリジナル・テイクにない高い音のギターが加わります。
08 Sunny Day [A New Stereo Mix] [Different Vocals] とてもゴスペル色の強い曲。メロトロンが入ります。
09 Ride on a Pony [Alternative Stereo Mix] オリジナルのピアノは、このテイクより目立っています。最初から最後まで同じリズム・パターンなのに、ぐいぐい聴かせる芸当はこのバンドしかできないと思いますね。
10 Love You So [A New Stereo Mix] [Alternate Vocals] 「Highway」収録曲は、ゴスペル調の曲が多く、ピアノの果たす役割が大きいんですが、アンディ・フレーザーの才能の大きさを感じます。
11 Soon I Will Be Gone 異なるテイクです。まずはロジャーズの咳から。マカロニ・ウエスタンのテーマにしたら、盛り上がるだろうな、と以前から思っています。スケールの大きな曲です。こちらのテイクは、メロトロン抜き、アコギのカッティングで盛り上げ、カークのドラミングで落とします。アンディのアレンジ力には、ううむとうなってしまいます。
12 My Brother Jake [A New Stereo Mix] 「Highway」収録のモノラル録音のステレオ・ミックス。ピアノの低音とぶつからないように、ベースをシンプルにしているのがわかります。最後に拍手が入ります。
13 Makin’ Love (Only My Soul) 「My Brother Jake 」のB面曲。初期のテイクとのことですが、デモと言ったほうがよくて、やり直したりしています。アコギでリズムをとっているのはロジャーズでしょうか。
14 Rain 未発表曲。「Highway」のアディショナル・トラックに別ミックスが収録されています。
15 Get Where I Belong 別テイクです。「Free Live」のアディショナル・トラックと同じもの。
16 Only My Soul [Original 7” B-Side] モノラル録音。「Highway」アディショナル・トラックと一緒だと思います。
17 Travelling Man [Alternative Stereo Mix] コンプリート・ミックスだそうです。カウントから入っていますし、フェイド・アウトしません。
18 Molten Gold ポール・コゾフのファースト・アルバム収録の別ミックス。「Back Street Crawler」バージョンからギターのオーバーダブとジェス・ローデンのコーラス、ラビットのキーボードを除いたミックス。「At Last」に収録されたミックスは、フェイド・インから始まります。