フランスの指揮者、ジャン・マルティノンが残した録音を復刻したボックス。
録音から50年以上経った古い音源で構成されたメンブランお得意の10枚組。
原盤は大半がデッカで、輸入、国内盤でCD化済み音源が多数だ。
収録時間の兼ね合いか、オリジナル盤と曲順が違うものも多い。
廉価ボックス盤に多いクラムシェル・ボックス仕様で、解説書はなく、CDは厚紙に入っている。
簡単にどんな内容か書こうと思う
CD1→オッフェンバックの序曲集(ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団)ベルリオーズの序曲と行進曲(パリ音楽院管弦楽団)で、オッフェンバックには街灯の下での結婚を収録しているのが珍しい。
ロンドン・フィルの演奏もなかなか。
ベルリオーズはパリ音楽院管弦楽団全盛期のサウンドが聴ける上、マルティノンの華麗な演奏が聴きどころ。
CD2→ボロディンとリムスキー=コルサコフというロシア物にボイエルデューの序曲を組み合わせた内容です。
ボロディンの2番は快速なテンポが特徴で、重量感にかけますがこれはこれでいいです。
リムスキー=コルサコフは色彩豊かなサウンドが特徴です。
この2つはロンドン交響楽団の演奏で録音されたものですが、CDが入っている厚紙の紙ジャケットは何故かロンドン・フィルハーモニー管弦楽団が演奏した事になっています。
ボイエルデューはロンドン・フィルの演奏で、近年エロクアンスでCD1のオッフェンバックと一緒に発売されていた音源です。
CD3→パリ音楽院管弦楽団と録音したアルバムで、得意のフランス音楽集。
19世紀生まれの作曲家の中から有名な曲を集めたものだが、色彩感豊かな音色と明晰な演奏はさすがだ。
本家から出たアルバムではCD1のベルリオーズと一緒に復刻されている。
CD4→ソロ楽器とオーケストラの作品を中心に、間にドヴォルザークのスラヴ舞曲を挟んだアルバム。
オケはラムルー管弦楽団と、ロンドン、フィルハーモニー管弦楽団。
聴きどころはやはりフルニエのブルッフと、リンパニーのサン=サーンスで、独奏者を聴くアルバムだろう。
CD5→プロコフィエフの交響曲第5番(パリ音楽院管弦楽団)と組曲『3つのオレンジへの恋』(ラムルー管弦楽団)を収録。
交響曲が名演と名高かく、オケも良く鳴り、わかりやすい演奏は流石だ。
CD6→プロコフィエフの交響曲第7番とロシア序曲(パリ音楽院管弦楽団)とファリャのスペインの夜の庭(ラムルー管弦楽団)を収録したもの。
ファリャも悪く無いが、ここでも交響曲が明快なわかりやすさを持った名演。
交響曲に隠れてロシア序曲も中々よく、同曲の名盤の一つ。
CD7→CD中唯一のイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団との録音。
バレエ音楽を集めた内容で、マイナーな作品を集めたもの。
ここでも明晰なマルティノンらしい演奏が光る演奏で、マイアベーア等、数少ない同曲の録音で名演の一つになるのではないだろうか。
CD8→ オイストラフと共演した、フィルハーモニア管弦楽団とのラロのスペイン交響曲がメインになるが、ボーナスのドゥリャンの作品が良い。
詳しい人なら名前を見ただけで分かるが、ドゥリャンはイスラエル出身で主にアルメニアで活躍した指揮者。
指揮者としてはムソルグスキーの禿山の一夜とショスタコーヴィチの交響曲第12番の録音を残した事で知られ、知名度は低いが、その爆演ぶりで一部に人気のある指揮者。
作曲もしておりこれは数少ない録音でパストラーレの名前の通り、何処となく中東風の旋律をフランス風管弦楽法で纏めた作品。
名作とはいえないが、佳作と言うべき作品。
ラムルー管弦楽団の演奏も作品のもつ魅力を十分に伝えてる。
CD9→ラムルー管とのフランスの管弦楽曲とマルティノンの自作。
前半のオーケストラ作品集は師ルーセルらの曲をマルティノンらしい明晰さとフランスオケ特有の透明なサウンドが特徴な、定評あるもの。
マルティノンの作品はマルティノンの演奏ではないが、作品を知る分には充分。
CD10→バレエ音楽を中心にしたアルバム。
オケは、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団とラムルー管弦楽団。
この中ではアダンのジゼルが推進力と活気ある演奏で素晴らしい。
同じ演奏者、作曲家の『もし我王になれば』はまぁまぁである。
音質は録音年が古いので、やはりどれも良いとは言えないが、デッカ原盤の音源は当時、優れた録音で有名だったので思っていた程かはまだ聴きやすい。
とりあえず音質は二の次で1950年代のマルティノンの代表的な録音を聴いてみたいという人にはおすすめ。
これより新しいRCA時代やワーナーへの録音はそれぞれのメーカーが、BOXを出している(2021年1月現在)ので、このBOXセットを買って気に入ったらそちらも購入してみては如何だろうか。