フィンランドのルーノ(伝承歌)とイタリア・バロック期を言葉と音楽で結びつける
フィンランド・バロック管による趣向を凝らした1枚
北ヨーロッパと東ヨーロッパのバルト海沿岸に住むバルト・フィン人の間では「ルーノ(Runo)」という口承詩の方法が古くから行われていました。フィンランドの民族叙事詩と抒情詩は、こうして口伝てに後世に伝えられ、19世紀になってエリアス・リョンロートの手で「カレワラ(カレヴァラ Kalevala)」と「カンテレタル(Kanteletar)」としてまとめられました。
フィンランド・バロック管弦楽団のアルバム『The World Is Born(天地が誕生する)』では、そうした伝承歌と、「言葉と音楽を結びつける」を重視したイタリア・バロック期の歌が並べて演奏されます。
「邪悪な目をしたラップ人が 無限の怒りをもちつづけ 絶えることのない侮辱を 老ワイナミョイネンに向ける」と始める『The World Is Born(天地が誕生する)』・・・「わたしは言葉の引き出しを開ける 賛美する歌の箱の調子を整え 膝の上に置く」と『歌い始める時は』・・・こうした伝承の歌は、タイト・ホフレーン(Taito Hoffren)[1974-]やパウリーナ・シリヤラ(Pauliina Syrjala)[1976-]などのフォーク・ミュージシャンの編曲で演奏されます。
ピリオド楽器のアンサンブル「フィンランド・バロック管弦楽団(FIBO)」は1989年の創設。バロック期と現代の音楽、さらにはシベリウスの作品も取り上げ、趣向を凝らしたコンサート活動を続けています。このアルバムは、イリヤ・グリンゴルツと共演した『和声の迷宮』につづく第3作。メアッリのソナタと南オストロボスニアのポルスカを並べたクレータ=マリア・ケンタラの『ポルスカ=パンドルフィ』に通じるコンセプトによる楽しいアルバムです。(輸入元情報)
【収録情報】
1. 伝承曲/ホフレーン、シリヤラ編:天地が誕生する〜カンテレ伴奏によるルーノ歌唱
2. エンリケス・デ・バルデラーバノ[c.1500-1557]:Discantar
3. タルクィニオ・メールラ[1594/5-1665]:眠りの時の宗教的カンツォネッタ〜「軽率なクルティオ」とその他のカプリッチョ第2巻(1638)から
4. 伝承曲/ホフレーン、シリヤラ編:マリア賛歌〜カンテレ伴奏によるルーノ歌唱
5. 伝承曲/ヤルヴェラ編:Taklax gee
6. 伝承曲/オヤラ、シリヤラ編:Lippa
7. マルコ・ウッチェリーニ[c.1603-1680]:ベルガマスク〜ソナタ、コレンテとアリアから
8. 伝承曲/ヘイノネン編:ブラインドダンス
9. モンテヴェルディ[1567-1643]:トッカータとプロローグ〜歌劇『オルフェオ』(1607)から
10. 伝承曲/ホフレーン、シリヤラ編:歌い始める時は〜アンサンブル伴奏によるルーノ歌唱
11. 伝承曲/ヤルヴェラ編:マルケラーネンのパレード
12. モンテヴェルディ:苦しみが甘美なものならば〜優美なアリオーソ 第4巻(1624)から
13. 伝承曲/ヘイノネン、オヤラ、フレード編:羊飼いたちに太陽よ輝け
14. 伝承曲/ヘイノネン編:エリアス・タッラリによるピンニのポルスカ
15. 伝承曲/ヘイノネン 編:若いご婦人のゲーム〜サムエル・リンタ=ニッコラの音楽帳(1809)から
フィンランド・バロック管弦楽団
ヴェルピ・ライサネン(メゾ・ソプラノ)
タイト・ホフレーン(ルーノ歌唱、5弦金属弦カンテレ、白樺トランペット)
パウリーナ・フレード(リコーダー、オーバートーン・フルート)
キルシ・オヤラ(リコーダー、オーバートーン・フルート、アスピパ、白樺トランペット)
アントニー・マリーニ(ヴァイオリン)
アリナ・ヤルヴェラ(ヴァイオリン)
ロウナ・ホシア(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
イルッカ・ヘイノネン(ヴィオリーネ、フィンランド・ボウドリラ、オーバートーン・フルート)
パウリーナ・シリヤラ(5弦金属弦カンテレ、15弦カンテレ、20弦カンテレ)
エーロ・パルヴィアイネン(アーチリュート、バロック・ギター)
ペッテリ・ピトコ(チェンバロ)
録音時期:2021年3月24,25日
録音場所:フィンランド、ウーシマー、プッキラ、プッキラ教会
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)
制作、録音エンジニアリング、編集、マスタリング:タイト・ホフレーン