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ミヒャエル・ギーレン・エディション第2集
ブルックナー交響曲全集(第1番〜第9番)
ドイツのSWRレーベルによるミヒャエル・ギーレンのシリーズに第2集が登場。2013年録音の第9番は驚き。楽員のやる気に満ちた演奏が、楽曲のすべての音符に血を通わせたかのような表現に結実。バーンスタインの第2楽章を上回る迫力のスケルツォに、深い情感と壮絶な破壊に泣けるアダージョは特に聴きものです。
【ミヒャエル・ギーレン・エディション】
3年間に渡って全10集のリリースが予定されており、初出音源も多数という注目の企画。今回の第2集、ブルックナーの交響曲全集でも、第1番、第2番、弟8番、第9番が初登場となります。
録音時期は1968年から2013年で、若き日の第2番から、86歳での第9番まで、さまざまな時期のギーレンの演奏を楽しむことができます。
【ミヒャエル・ギーレン】
近代・現代音楽ファンの絶大な支持を得る指揮者で作曲家、ミヒャエル・アンドレアス・ギーレンは、1927年7月20日、高名な演出家の父親と女優の母親というきわめて劇場的な環境のもと、ドレスデンで誕生。
その後、父がベルリン国立歌劇場の指揮者クレメンス・クラウスに招かれたため、ベルリンへ移りますが、同地が反ユダヤ政策の本拠地であったこともあり、母がユダヤ人のギーレン家は、ウィーンへ逃れることになります。
しかし、1940年にはオーストリアはナチス・ドイツに併合されてしまったため、父がエーリッヒ・クライバーから招かれたこともあって、一家はアルゼンチンへと亡命。
同地でギーレンは、作曲・ピアノ・理論・哲学を学び、テアトロ・コロンの練習指揮者をつとめます。
その間、1949年には同テアトロ・コロンで作曲者の生誕75周年を祝い、シェーンベルクのピアノ作品全曲演奏会を開く一方、“弦楽四重奏のための変奏曲”を作曲するなど、若い頃から前衛的な作品への取り組みはきわめて積極的だった模様です。
同時に歌劇場の練習指揮者として劇場人としての経験も積んでおり、1950年からウィーン国立歌劇場の練習指揮者も務め、1952年には指揮者として正式にデビューしていますが、プログラム前半はシェーンベルクのピアノ曲、後半は“兵士の物語”というなんとも斬新なものでした。
また、この頃にはまだ若かったアルフレート・ブレンデルとシェーンベルクのピアノ協奏曲の世界初録音をおこなっています。
そうした実績が買われてか、1960年から1965年にかけてはストックホルム王立歌劇場の首席指揮者として、また、1965年から1968年にはケルンのオペラでも活躍。
この頃の前衛的活動としては、B.A.ツィンマーマンのオペラ“兵士たち”の初演(1966年)や“ある若き詩人のためのレクイエム”初演(1969年)という二大傑作への取り組みが有名です。特に前者は演奏不可能と言われていた作品だけに、ギーレンの果敢なアプローチが果たした役割は非常に大きなものと思われます
その後、1969年からはアンドレ・クリュイタンスの後任としてベルギー国立管弦楽団の首席指揮者となり、1973年から1975年はオランダ歌劇場、1977年から1987年はフランクフルト歌劇場の芸術総監督、シュトゥットガルト放送交響楽団の指揮者としても活躍。
同じ頃、1978年から1981年にはロンドンのBBC交響楽団の首席客演指揮者、1980年から1986年にはシンシナティ交響楽団の音楽監督も務め、1986年から現在までは南西ドイツ放送交響楽団の首席指揮者として世界的名声を獲得しているのは周知のとおり。
日本には1975年と1972年にNHK交響楽団の招きで来演して以来しばらく音沙汰が無く、ようやく1992年に手兵の南西ドイツ放送響と来日して、そのときは一部で大いに話題になったものです。
近年ではザルツブルク音楽祭の常連として一気に知名度を上げており、マニアや比較的若い層を中心に人気が出てきています
レコーディングは1950年代後半からおこなっていますが、初期のレパートリーはバッハ・ギルドのためのカンタータ集、グルックのフルート協奏曲、ショパンのピアノ協奏曲&ラロのピアノ協奏曲(フルゴーニ)、リストのピアノ協奏曲集(ブレンデル)、バルトークのピアノ協奏曲集(シャーンドル)、フランクの交響曲ニ短調&交響的変奏曲、プロコフィエフのピアノ協奏曲集(フルゴーニ)、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番&チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番(ブルメンタール)、シェーンベルク:協奏曲集(マルシュナー、ブレンデル)等々、実に多彩。
その後、1970年代には名高い『モーゼとアロン』をレコーディングして話題になり、以後、複数のレコード会社にさまざまなレパートリーを録音しましたが、近年はドイツのヘンスラーからのリリースが多くなっています。(HMV)
【収録情報】
ブルックナー:交響曲全集(第1番〜第9番)
Disc1
● 交響曲第1番ハ短調 WAB101 (ウィーン版)【初出】
録音時期:2009年1月25日&1月29日
録音場所:フライブルク、コンツェルトハウス&グラン・カナリア、アウディトリオ『アルフレード・クラウス』
録音方式:ステレオ(デジタル/ライヴ)
Disc2
● 交響曲第2番ハ短調 WAB102 (1877年第2稿)【初出】
録音時期:1968年3月14,15日
録音場所:ザールブリュッケン
録音方式:ステレオ(セッション)
Disc3
● 交響曲第3番ニ短調 WAB103 (1876/1877年第2稿)
録音時期:1999年5月3-5日
録音場所:バーデンバーデン、フェストシュピールハウス
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)
Disc4
● 交響曲第4番変ホ長調 WAB104『ロマンティック』 (1874年第1稿)
録音時期:1994年4月12-15日
録音場所:バーデンバーデン、ハンス・ロスバウト・スタジオ
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)
Disc5
● 交響曲第5番変ロ長調 WAB105 (1878年原典版)
録音時期:1988年12月8-10日,1989年11月9-10日
録音場所:カールスルーエ、ブラームス・ザール
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)
Disc6
● 交響曲第6番イ長調 WAB106 (1881年原典版)
録音時期:2001年3月29日
録音場所:フライブルク、コンツェルトハウス
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)
Disc7
● 交響曲第7番ホ長調 WAB107 (1883年原典版)
録音時期:1986年12月15,16日
録音場所:バーデンバーデン、ハンス・ロスバウト・スタジオ
録音方式:ステレオ(デジタル/セッション)
Disc8-9
● 交響曲第8番ハ短調 WAB108 (1887年版第1稿)【初出】
録音時期:2007年6月2日
録音場所:バーデンバーデン、フェストシュピールハウス
録音方式:ステレオ(デジタル/ライヴ)
Disc10
● 交響曲第9番ニ短調 WAB109 (原典版)【初出】
録音時期:2013年12月20日
録音場所:フライブルク、コンツェルトハウス
録音方式:ステレオ(デジタル/ライヴ)
バーデンバーデン・フライブルク南西ドイツ放送交響楽団(第1,3-9番)
ザールブリュッケン放送交響楽団(第2番)
ミヒャエル・ギーレン(指揮)