Keyboard Works Vol.5 : Julia Brown(Cemb)

ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハ：鍵盤楽器のための作品集　第５集
ジュリア・ブラウン

大バッハと最初の妻マリア・バルバラとの間の第二子、および長男として生まれたヴィルヘルム・フリーデマン。彼へかかる期待の大きさは想像を絶するものであったようで、父バッハは自らの持つ技術の全てを彼に注ぎ込みました。その甲斐あってか、23歳の時にはドレスデンの聖ソフィア教会、そして1746年にはハレの貴婦人教会のオルガニストに就任します。彼は、もともと才能に恵まれていたことは確かですが、あまりにも溺愛され、また期待されすぎた反動か、独立心に欠け、猜疑心が強いなど人間的魅力が乏しく、最終的にはあまり恵まれた人生を送ることはできなかったと伝えられます。
　そんなヴィルヘルム・フリーデマンの作品は、どれを聴いても、確かにこの時代の枠には入りきることのない、不思議な味わいをもっています。冒頭のソナタの第１楽章での自由な和声の進行は、まるでシューベルトを思わせるロマンティックなもの。明らかに時代を先取りしていますが、当時、これを受け入れるまでには時代は進歩していなかったと思われます。彼の作品は、その成立過程や成立年代がわかっていないものが多く（これも彼自身の怠惰な性格が災いしているのですが）、実際に聴いてみて、初期の作品か後期の作品かを判断するほかなく歴史上の位置づけも困難だと言われています。しかし、ここに溢れる表現力豊かな音楽は、確かに天才の息遣いを感じさせるものばかりです。（NAXOS）

【収録情報】
W.F.バッハ：
・ソナタ ト長調 F.7/BR A14
・ソナタ ホ短調 BR A9
・ソナタ ハ長調 BR A1
・ソナタ ヘ長調 F.6a/BR A11c
・ソナタ イ長調 F.8/BR A15
・ソナタ 変ホ長調 BR A8

　ジュリア・ブラウン（チェンバロ）

　録音時期：2013年10月6-7日
　録音場所：オレゴン州ユージェニー、AGRパフォーミング・アーツ・センター
　録音方式：ステレオ（デジタル／セッション）