華麗で情熱的な表現力のある優れたチェロ演奏で高い評価を得ているラファエル・グロメス。2017年以来ソニークラシカルからそれぞれに個性的な6枚のアルバムを発表し、2020年のR.シュトラウスとユリウス・クレンゲルによる作品の世界初録音では「ロマンティシズムがあふれ出るかのような作品の魅力を捉えた演奏」と評され、2019年のオッフェンバック作品集では「Opus Klassik Award 2020」を受賞しています。
今回の2枚組の新作は、「なぜ女性作曲家の作品を集めたアルバムを作らないのですか?」と聞かれたグロメスが「自分が知っている女性作曲家はごくわずかしかいない」ことに驚愕したことに始まります。そこでグロメスはさまざまな女性作曲家の作品を渉猟し、ヒルデガルト・フォン・ビンゲンやクララ・シューマンからビリー・アイリッシュまで、23人の女性作曲家による中世から現代までの美しい作品を選び抜き、CD2枚の大作を作り上げました。半分はルツェルン祝祭弦楽合奏団と、もう半分はチェロとピアノで録音され、多くの曲はこの作品のために新たに編曲されています。
前半は、ドイツの伝説的作曲家ヒルデガルト・フォン・ビンゲン[1098-1179]の『おお、英知の力よ』、クララ・シューマン[1819-1896]のロマンス Op.22から第3楽章、その彼女の親友で歌手でありリストの弟子でもあったポリーヌ・ガルシア=ヴィアルド[1821-1910]の『6つの小品』から3曲を演奏しています。また、マティルド・カピュイ[1913-2017]の感動的で美しい作品『チェロと弦楽のための3つの楽章』や、ロシアのチェリストであり作曲家ヴィクトリア・ヤグリング[1946-2011]のメロディアスで表情豊かな親密さで一瞬にして魅了する『チェロと弦楽のための組曲』の瞑想的な『アリア』も世界初録音されています。また、2009年に改めて見いだされたアメリカ初の黒人女性作曲家フローレンス・プライス[1887-1953]の『アドレーション』は、上品な憂愁と素朴さが心に響く作品です。
後半は、20世紀の音楽界を牽引したナディア・ブーランジェ[1887-1979]、リリ・ブーランジェ[1893-1918]姉妹の魅惑的で切ない作品を収録しています。星空を非常に楽しげに輝かせるセシル・シャミナード[1857-1944]の『星の夜』、ジェルメーヌ・タイユフェール[1892-1983]の夢見心地で落ち着いた『子守歌』、アメリカの女性として初めての交響曲として出版・演奏されたエイミー・ビーチ[1867-1944]の『ドリーミング』といった夜を中心とした曲。また近年では、ドロレス・ホワイト[1932-]の『タランチュラ』のような現代クラシック音楽も興味深い作品です。彼女はアメリカとヨーロッパの伝統的な音楽を取り入れており、今回の録音では、18世紀から19世紀の南イタリア風のタランテラに言及した作品を聴くことができます。また、レーラ・アウエルバッハ[1932-]の『後記』も収録されています。
レイチェル・ポートマンの『チョコレート組曲』、クインシー・ジョーンズが音楽を担当した映画「カラーパープル」からの『ミス・セリーズ・ブルース』、ビリー・アイリッシュの『ノー・タイム・トゥ・ダイ』といった、映画のサウンドトラックからの3曲がボーナストラックとして収録されているのも注目です。(輸入元情報)