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ISBN 10 : 4862280803
Content Description
"古代から現代にいたるまで、「アルプス以北の民」は自分たちが歴史の流れにすんなりと呑みこまれない、
ずいぶん矛盾した力をかかえていることを自覚し、これらを克服して、統一的な人間像を描こうとしてきた。
(中略)EUの盟主として、統一ヨーロッパの理想と現実に苦しみ、技術大国でありながらも、エコロジー国家を掲げて、脱原発の旗手をつとめる姿は、
進化と再生を巧みに継ぎ合わせて、新しい国家、新しい人間をつくりだそうという挑戦なのだ。(「序」より)
古来ドイツとドイツ人は、矛盾と葛藤の中から、新たな統一的人間像を創造してきた。
キリスト教による古来の価値観の一新、宗教改革、自然科学と技術の進歩、革命や戦争などを乗りこえて、
その都度「再生」されてきた〈新しい人間〉像とは――。
・中世ヨーロッパで、古代的・異教的な「柔」の再生思想とキリスト教的な「硬」の復活思想の競合から生まれた
独特の神秘思想をたどる『「わたしは若木のような新たな姿となって星々にのぼっていく」』(香田芳樹)
・神学的体系を通してではなく、個人としての神体験から復活と再生を目指したベーメ(1575-1624)の
敬虔主義とその影響を概観した『ヤーコプ・ベーメにおける「再生」思想』(富田裕)
・刺胞動物ヒドラ・ポリプの再生および群体能力に人間形成の原動力と「存在の連鎖」のモデルを見出したシラーの論を
紹介する『シラーの美的「群体」とトランブレーの「ヒドラ・ポリプ」』(坂本貴志)
・ゲーテが生涯をかけた超大作『ファウスト』を「再生」のキーワードからたどり、その神話的・女性的要素と結びついた
新たなる生の理想について論じた『近代開始期の「新生」への夢』(今泉文子)
・近代以降の<人間>観を大きく転換させたダーウィンの進化論と、ニーチェのニヒリズムをもとに、
相対化と解体をくり返しながら進化してゆく「道徳」の本質をさぐる『道徳の育種家としてのニヒリスト』(清水真木)
・19世紀、進化論と細胞論を経て新たな局面を迎えていた国家有機体論を批判的に考察した公法学者ケルゼンを手がかりに、
進化を夢みる人間と国家との近代的関係について論じた『「有機体としての国家」』(石田雄一)
・ムジールが代表作『特性のない男』で描いた、支配/被支配関係を超えた「個人の愛による共同体の再生」の試みから、
新しい理想的世界の可能性について考える『反暴力のユートピア』(北島玲子)
・現代人の生にとって、重要な手段でもあり目的でもある「労働」は、人間を生かすと同時に無機的な道具に変えてしまうものである。
「労働」をキーワードに、ドイツの現代を映しだす二人の思想を比較検討する『労働への動員か遊戯への接続か』(大宮勘一郎)
――以上八篇。
編著者
香田 芳樹(コウダヨシキ)
慶應義塾大学文学部教授。広島大学大学院博士課程、フライブルク大学(スイス)博士課程修了。
著書『マイスター・エックハルト 生涯と著作』(創文社)、翻訳書『マクデブルクのメヒティルト 神性の流れる光』(創文社)等。
執筆者
富田 裕(トミタヒロシ)
中央大学商学部兼任講師。上智大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。
著書『静かな細い響き―或る散策者の歩み』(舷燈社)、共訳『ヨッヘン・クレッパー宗教詩集「キリエ」』(教文館)等。
坂本 貴志(サカモトタカシ)
立教大学文学部教授。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。
著書『秘教的伝統とドイツ近代─ヘルメス、オルフェウス、ピュタゴラスの文化史的変奏─』(ぷねうま舎)。
今泉 文子(イマイズミフミコ)
立正大学名誉教授。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得満期退学。
著書『幻想文学空間』(ありな書房)、『鏡の中のロマン主義』(勁草書房)、『ロマン主義の誕生』(平凡社)、
『ミュンヘン 倒錯の都』(筑摩書房)、翻訳書『ノヴァーリス作品集』全三巻、『ドイツ幻想小説傑作選』(以上、筑摩書房)等。
清水 真木(シミズマキ)
明治大学商学部教授。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。
著書『岐路に立つニーチェ 二つのペシミズムの間で』(法政大学出版局)、『知の教科書 ニーチェ』(講談社選書メチエ)、
『友情を疑う 親しさという牢獄』、『忘れられた哲学者 土田杏村と文化への問い』(以上、中公新書)、
『これが「教養」だ』(新潮新書)、『感情とは何か プラトンからアーレントまで』(ちくま新書)等。
石田 雄一(イシダユウイチ)
中央大学法学部教授。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。
北島 玲子(キタジマレイコ)
上智大学文学部教授。大阪大学文学研究科博士課程単位取得満期退学。
著書『終わりなき省察の行方─ローベルト・ムージルの小説』(上智大学出版局)、
共著『幻想のディスクール─ロマン派以降のドイツ文学』(鳥影社)、
共訳『ムージル・エッセンス─魂と厳密性』(中央大学出版局)等。
大宮 勘一郎(オオミヤカンイチロウ)
東京大学大学院人文社会系研究科教授。東京大学大学院総合文化研究科博士課程満期退学。
著書『ベンヤミンの通行路』(未來社)、共著『纏う─表層の戯れの彼方に』(水声社)、
共編著""Figuren des Transgressiven─das Ende und der Gast─""(Iudicium)等。"
【著者紹介】
香田芳樹 : 慶應義塾大学文学部教授。広島大学大学院博士課程、フライブルク大学(スイス)博士課程修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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