野沢敬次

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  • 鉄道写真家、野沢敬次氏の編著による写真集。野沢氏だ...

    Posted Date:2021/04/15

    鉄道写真家、野沢敬次氏の編著による写真集。野沢氏だけでなく、安田就視氏をはじめとする数々の著名な鉄道写真家の貴重な記録を集めている。カラー・白黒。カラー写真はすべてカラーのまま印刷されている。対象となっている路線は「鉄道全盛期に時刻表に掲載されていた路線」とのことで、専用鉄道、森林鉄道、簡易軌道等は含まれていない。(簡易軌道のうち、歌登、鶴居については時刻表に掲載されていたが、本書の掲載対象にはなっていない)。一応掲載対象は以下の通り(目次の表記のまま) 【道北の鉄道】 天北線/興浜北線/興浜南線/羽幌線/羽幌炭礦鉄道/天塩炭礦鉄道/美幸線/深名線/名寄本線/渚滑線/湧網線/留萌本線(廃止区間)/留萠鉄道/旭川電気軌道/士別軌道  【道東の鉄道】 池北線/相生線/根北線/標津線/白糠線/広尾線/根室本線(狩勝旧線)/北海道拓殖鉄道/根室拓殖鉄道/釧路臨港鉄道/雄別鉄道 【道央の鉄道】 歌志内線/函館本線支線/幌内線/万字線/札沼線(廃止区間)/富内線/北海道炭礦汽船夕張鉄道線/三井芦別鉄道/三菱鉱業美唄鉄道/三菱石炭鉱業大夕張鉄道/夕張線/定山渓鉄道 【道南の鉄道】 岩内線/胆振線/瀬棚線/松前線/江差線/寿都鉄道/青函航路 それぞれ各路線の概略が記述され、写真ごとに場所、日時等の属性と簡単な解説が付されている。いずれも美しいもので、蒸気機関車時代のものから、80年代まで、様々である。ことに「冬晴れ」の日の各路線の情景は美しい。郷愁をかきたてる写真も多く、仁宇布駅の冬の黄昏の光景など、深く印象に刻まれる。羽幌線、興浜北線、興浜南線、湧網線、富内線、胆振線など風光明媚な地域を走っていた路線はどこをとっても絵のように美しい。紙面の関係から、各路線で紹介される写真の数は、数枚前後と制約があるが、それなりに厳選を経たものであるし、広範囲に収集する努力を惜しまず編集した成果がみてとれ、良心的である。幸い紹介されることとなった今は亡き駅舎であったり、機関車であったりという風景は、無類の情感を呼ぶ。印刷、紙質も良好。さて、それにしても、と思うのは、当書と直接関係することではないかもしれないが、北海道の厳しさのことである。これらの路線の中には、産業の移り変わりにより、当初の役目を終えたと言えるものもあるとはいえ、地域の生活を支える、いわゆるインフラとしての役割を併せ持っていたものがほとんどである。それらが、単に収益という観点から廃止され、鬼籍に名を連ねることが、この地域の厳しさの象徴となっている。特に、北海道の場合、厳しい冬がある。雪に覆われる冬こそ、特に長距離移動において鉄道の果たす役割は大きかったのだが、それが多くの地域から根こそぎ奪われたのは、耐雪の維持費と不可分ではない。だが、そのことに私は疑義を感じてしまう。厳しい冬という実情があるからこそ、鉄道は公的負担により維持されてしかるべきであり、それを民間産業と同じような価値軸〜単に運賃収入を維持費で割ったもの〜でその価値を図って切り捨てることが妥当であったとは、到底思えない。私は個人的には、電力、郵便、通信、交通等の生活基盤となるインフラは、公が管理するべきものだと思っている。しかし、いつの頃からかこの国は、とにかく民営化、民間委託することが良いことで、それに抗うものは「抵抗勢力」と呼ばれるようになった。極端な話、電力や郵便、通信であっても、民営化された現在であれば、企業の論理でペイしない土地から撤退することは十分に合理的なこととなってしまっているし、現在の社会的方向性はそちらを向いている。そのことに、明瞭に警鐘を鳴らす意見が、より大きくなるべきではないのだろうか。加えて、国鉄再建法により、80年代に国鉄線の多くが廃止された際、政府は国会答弁等で、「これ以上の廃止はない」旨を何度も繰り返したのである。しかし、それからわずか30年の今日、その言質を顧みるどころか、JRに是正勧告という名で、廃止推進を諭しかねない態度を示す。それは、地域の住民にとって、多重の背信行為にほかならないだろう。そうであっても、圧倒的に人口の少ない地域の声は、たとえ正論であっても、大都市圏に住む人たちのがなり声にかき消される。悲劇である。私はすべての路線を残し維持すべきだったと言っているわけではない。中には運炭鉄道や森林鉄道、簡易軌道のように、その使命をまっとうしたものや、実際に利用実態がわずかしかないものもあっただろう。しかし、生活路線として利用されている多くの路線が廃止されていったこともまた事実である。当時、廃止の目安としたものが「輸送密度」という指標であった。これは人口における利用率ではなく、単純に利用者の絶対数を背景とした指標であったため、元来人口密度の少ない北海道で用いるには本来不適切な指標であり、地元の人の多くが利用していても、その実情は反映されず、達成不可能な基準となってしまった。そのため、利用の実態とは関係なく、次々と狙い撃つように路線が廃止となっていった。実際、私が乗った多くの路線では、時には通路まで一杯の利用者がいたのである。しかし、地域の人の多くが利用しても、地域の人口自体が少なければ、先の指標により「利用価値のない」「無用な」ものと見做された。現地の状況を知らない人が、まるで、我がことの利益に係る重大事のように「廃止すべき」という論調を掲げることもあった。紋別という町がある。町を通じる名寄線が廃止されたとき、この駅の一日の乗客数が800人。人口3万人の町の一駅で800人が列車に乗車していたのである。この比率は、当該年度の札幌市の人口と札幌駅の乗客数の比と大きく変わるものではない。紋別市の両隣の興部町、湧別町にいたっては、当時の人口:代表駅の1日利用者数比はさらに高まり、それぞれ6,600人:403人、1万7千人:686人で、当時札幌よりも、はるかにこれらの町の方が、「日常的に鉄道を利用する人の割合」は高く、依存度が大きかったのである。つまり、当時もっともらしく囁かれた「現地の人が利用してない」は、現状を知らない都会に住んでいる人たちが、たまにTVに映る乗客の少ないディーゼルカーの映像か何かから刷り込まれたであろう勝手な妄想でしかなかった。しかし、名寄線は廃止された。紋別市は、廃止まで5年間の人口減少率が1%であったが、路線廃止後は、それがおよそ5%となり、一層の過疎化が進んでいる。鉄道の廃止だけが原因ではないだろうが、その一方で、鉄道路線図の変遷を見ると、私は隅々まで血の通わなくなった組織を彷彿とさせる。そういった意味で、この大廃止時代は、過疎化に拍車がかかった象徴的時期に思えてならない。そもそも、先進国において、鉄道事業だけで経営を成り立たせることは至難である。多くの国において、鉄道は国営、もしくはいわゆる上下分離方式により、施設を公が維持した上で、運行のみを民間委託している。そうやって、鉄道を維持している。なぜか。それは、単に鉄道が地域のライフラインだというだけでなく、観光を含めた「人の移動」自体に、社会的に様々な意味での「価値」があることを、社会と地域が理解し認識しているためだ。いわゆる「物流」とよばれるものの価値は多元的なものなのである。ところが、日本ではこの感覚が非常に薄く、特に最近では、一民間会社の収支という観点ばかりが考えられるようになってきている。鉄道利用者の数が減っている。これだけ多くの路線が廃止されているのだから当たり前でもある。私も、もしかつてのように鉄道網が充実していたのなら、当然のように鉄道を利用していた行程であっても、鉄道がなくなってはどうしようもない、他の交通機関を利用する。ローカル線という枝を振り払ったら、幹線という幹が枯れてくるのは自然の摂理だ。二次交通網がなくれば、一次交通網も衰退するのである。バスで代替といっても限度がある。そもそも、冬期間のバスの運行は当てにならないことが多いし、遠距離であれば、いくつものバスに乗り継ぐことになる。吹雪の中、いつ来るともしれないバスを待つのは、大げさではなく命がけだ。実質的にそれは利用のハードルを大きく上げることになる。旅行者の足は遠のく。利便性が低下し、地域の価値が下がる。衰退する。せめて本書に興味を持つ人には、ただきれいだな、と感じるだけでなく、そこで生活している人がいて、その大事な基盤が失われたのだという今と地続きな現実を知っていただきたい。

    ココパナ .

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