Product Details
ISBN 10 : 4873547903
Content Description
首都直下地震や南海トラフ地震などの災害リスクが高まり、気象の極端化が進行する現代。災害情報の重要性が増す一方で、「災害情報学」は、いまだ社会の要請に応え切れていないように見える。そこには、「インフォメーション」の水準でのみそのありかたを検討する短絡があったのではないか。
このような問題意識を持ち、コミュニケーションの根本から「災害情報学」を彫琢し直すことを目的として、本書が編まれた。キーワードは、「リアリティ」。“いのちを輝かせるために”という防災哲学に裏打ちされた、理論と実践を結晶させる愚直な挑戦だ。
今一度、地球という惑星の住人であることに思いを馳せて、その時空間のスケールで想像してみよう。「災害と人類」の歴史は、数百万年を数えることになる。しかし、「防災と人類」では、どうだろうか。脊髄反射的な危険回避のふるまいは、もちろん、ホモ・サピエンスの時代よりもずっと前から存在していたのだろう。しかし、事象の因果を予測して計画を為す防災・減災事業の多くが、近代社会になって駆動し始めたことに気付くはずだ。「防災」は、科学・技術と密接に結び付いた、きわめて近代合理主義的な営みなのだ。
それでは、真正なる「防災」の道行きとは、一体どのようなものなのだろうか。ここではひとつだけアングルを提示しておこう。われわれは、「いま」というときを、未来の目的のために費消されるものとして措定することに慣れ切ってしまっている。進学のために、就職のために、出世のために、成功のために、「いま」を我慢して、「あす」を夢見る。現在の課題や不足を声高に叫び、改善を求め、対策を促し、完遂することを鼓舞し、そうして結局、目の前にいる人をあるがままに見ることができなくなっていく。「いまは忙しい」、「あなたに付き合っている暇などない」。「そんな話、あとにしてくれ」。「合格したら考えてあげる」。「昇進したら、きっと‥‥」。社会が見ているのは、立てられた「目標」であり、その進捗を示す「数値」のほうである。
流行りの防災・減災の取り組みも、また同じではないだろうか。いや、もっと極端かもしれない。激烈な「想定」を提示し、現時の課題と不足をあげつらい、リスク情報のシャワーで包囲して取り組みを要請する。未来の幸福を追求するためには、現時の不幸を一身に引き受けなければならない。この「脅しの防災」の身構えは、果たして真正だと言えるだろうか。
自己や社会を解放したコンサマトリー(現時充足的)な「こころある道」を求めて、本書では、通時的・共時的な「災害観」・「世界観」・「死生観」に配視していく。生のグルントに根差した防災の哲学を探求する「災害情報学」の最前線に立って、次代を切り拓くための旅に出よう。
【著者紹介】
近藤誠司 : 関西大学社会安全学部 教授。1994年にNHKに入局。約20年間、ディレクターとして災害報道などに携わる。NHK神戸放送局「震災メッセージ」シリーズの企画・制作で、2004年、総務省消防庁の「防災まちづくり大賞」(消防科学研究センター理事長賞)を受賞。NHKスペシャル「メガクエイク 巨大地震 〜KOBE 15秒の真実〜」(2010年)で、科学技術映像祭・内閣総理大臣賞、中華人民共和国・国際科学教育番組コンクール・銀獅子賞を受賞。2013年に京都大学大学院情報学専攻(博士後期課程)指導認定退学、博士(情報学)。翌年NHKを退職し、関西大学社会安全学部安全マネジメント学科の助教となる。2015年春に、同・准教授、2022年春に、同・教授。2023年春から、京都大学防災研究所・客員教授を兼務。人と防災未来センター・リサーチフェロー、日本災害情報学会理事、日本災害復興学会理事、社会貢献学会理事、地区防災計画学会幹事などを務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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