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オールカラー 北海道の廃線記録(室蘭本線、日高本線、根室本線沿線編)

辻良樹

User Review :5.0
(1)

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784802132299
ISBN 10 : 4802132298
Format
Books
Release Date
February/2021
Japan
Co-Writer, Translator, Featured Individuals/organizations
:

Content Description

目次 : 胆振線/ 富内線/ 万字線/ 夕張線/ 士幌線/ 広尾線/ 池北線/ 白糠線

【著者紹介】
安田就視 : 1931(昭6)年2月、香川県生まれ、写真家。日本画家の父につき、日本画や漫画を習う。高松市で漆器の蒔絵を描き、彫刻を習う。その後、カメラマンになり大自然の風景に魅せられ、北海道から九州まで全国各地の旅を続ける。蒸気機関車をはじめとする消えゆく昭和の鉄道風景をオールカラーで撮影(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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「室蘭本線、日高本線、根室本線沿線編」と...

投稿日:2021/04/13 (火)

「室蘭本線、日高本線、根室本線沿線編」とある通り、本書の掲載対象となっているのは、すでに廃止されたこれらの線の支線群である。すなわち、胆振線、富内線、万字線、夕張線、士幌線、広尾線、池北線、白糠線となる。最近、書類上の廃止となった日高本線は、対象となっていない。これらの路線の沿線風景の美しさは、本当に素晴らしい。今となっては残された写真でしか往時の姿を見られないことが惜しくてならない。特に、取り上げられた線区では、胆振線、富内線、万字線は本当に美しい車窓に満ちていたと思う。一般的に、万字線の車窓は、車窓の美しさが有名だった士幌線と比べて、それほど取り上げられる機会はないだろう。しかし。私は、「スイッチバック 北の鉄道」という映像作品のコメンタリーで、北海道で長年車掌を務めてきた田中和夫氏が、万字線の山側の車窓風景の美しさは素晴らしかったと繰り返し言及し、特に、深い渓谷を何度も高い橋梁で跨ぎ、谷を覗き込むようにして走る路線は、「それだけでも観光資源としての価値があった」と感じたほどとお話させるのを聴き、加えて廃線跡を訪ね歩くことで、その実感を濃くした。もちろん、士幌線も素晴らしかったが、私がこの線に乗車したとき、すでに糠平以北は運転していなかった。もちろん、それでも急峻な山間で、音更川の渓谷を高い橋梁で越えるところなど、本当に凄かった。北海道は、車窓風景だけで、十分な観光資源になりうる鉄路を、これほど多く持っていた。しかし、それらは失われた。さて、私の言いたいことを書かせていただくと、本来鉄道の価値は、単体の収支で図るべきものではない。まず、北海道の様に気候風土の厳しい土地において、冬季の主要都市間移動のための安定的交通機関は、基本インフラであり、収支で図るべきものではない。加えて言うと、その多くが未開の地であった北海道が、国土強靭化計画の一環として移住を進め、開拓者とそれを継いだ人々の努力により、食料生産基地となったことを知らぬものは少ないと思うが、その彼らのいざというときの交通手段を、収支の観点で奪うことは適切ではない。次に、鉄道の経済効果というのは、単に収益と費用の差額で計算できるものではない。鉄道により、人が地域を訪問し、人々と交流する機会を高めるとは、交流人口の増加、地域経済の底支えに大いに活用できるものである。2019年に夕張支線が廃止となった夕張市の市域のその後の衰退の加速ぶりは現地の人であれば実感しているだろう。沼ノ沢駅に入っていたレストランは廃業し、スキー場も営業を終了した。鉄道廃止ばかりが理由ではないだろうが、トリガーの一つであったことは大いに考えられる。(実際、私も廃止前は年に3,4回訪問していた夕張を、廃止後は1度も訪問していない・・・さすがに薄情な感じもするので、そろそろ訪問したいとも思っているが、やはり鉄道がないのは寂しい)。また、鉄道は観光資源としても利用できる。利用・啓発の方法によって、大きく地域に貢献するポテンシャルを持っている。まもなく廃止となる日高線だって、あれほど美しい車窓を持つ路線は、国内外を探してもそうはないだろうと思わせる線路であったが、そのことを知っている人がどれほどいただろうか。そして、そのポテンシャルは、地域の観光開発計画という枠組みの中で、その価値を図るべきものである。ほかにもいろいろあるが、地方の鉄道というのは、収益を維持・廃止の目安にしては成り立たないし、そういうものではないのである。例えば、ヨーロッパの多くの国が、鉄道を国営化したり、線路・駅等の施設を公有物とし(道路と同じ考えだ)、鉄道の運行のみを民間委託するなどの方法により、路線網を維持し、地域経済の組み込まれているのは、この「考え方」があるからである。ひるがえって日本では、そのような公的発想が乏しく、単にJRという私企業の交通事業としてしか認識されていない。これでは、地域の衰退は加速し、最終的には国が疲弊化するばかりである。「考え方」を改めなくてはならない。いろいろ書いてしまったが、本書に話を戻すと、その観光面、風光明媚な風景という「ポテンシャル」を記録した良書、と言う以外になく、美しく、そしてもの悲しさも感じてしまう一冊である。胆振線では、尻別川、長流川、昭和新山、羊蹄山といったこの路線ならではの風景の中、蒸気機関車や気動車たちの姿が捉えられている。雪を頂く昭和新山が美しい。鉄鉱石の搬出拠点であった脇方駅では、レールバスが停車している写真が紹介されており、貴重な一枚だ。富内線では、鵡川、そして分水嶺を越えて沙流川流域の谷あいの美しい風景が紹介されている。日高町駅は私も訪れたことがあるが、小さな町の端にある終着駅で、特有の旅情があった。本書で紹介されている写真も、その雰囲気を良く伝えている。万字線では、幌向川を越していた橋梁群、そして炭鉱街特有の万字炭山駅の様子がうかがわれる。駅の奥には選炭機をはじめとした工場建築物が並ぶが、現在かの地は、最後まで残っていた万字炭山駅の駅舎も取り壊され、林の中、ただホームの跡があるのを見出だせるのみである。夕張線では、歴史ある運炭路線にふさわしい風格と歴史を感じさせる写真が多い。夕張川を渡るD51が牽引する石炭列車の写真。よく見ると橋梁の手前に橋脚跡があり、夕張線複線時代の名残が刻まれている。1981年に廃止された登川駅の、駅舎、構内を俯瞰した写真も、フアンにはありがたいもの。士幌線では、やはり十勝川や音更川を渡る橋梁群が象徴的な風景であり、本書でも紹介される。また、十勝三股−糠平間が、バス転換される前の、貴重な列車風景も紹介されている。(ただし、タウシュベツ橋は、ダム建設に伴って1955年に付けけられた旧線にあるので、本書の紹介対象とはなっていない)。広尾線では、縁起切符で全国区の知名度を誇った愛国駅、幸福駅の現役時の姿、大正駅、広尾駅などの写真も掲載されている。結氷した札内川を渡る9600形蒸気機関車の姿も印象的。池北線は、第3セクターとしてちほく高原鉄道として長らえた路線であり、そのため90年代の写真も掲載されている。十勝平野、北見盆地のおおらかな風景の中、蒸気機関車や気動車の活動する姿が収められている。1999年に撮影された境野駅を発車していく気動車の風景に、郷愁の情をもよおす。白糠線では、なにもない終着駅、北進駅の風景に胸打たれる。本来であれば、足寄を経由し、北十勝線とともに、札幌と釧路を結ぶ高速鉄道路線の一端を担うことになっていた高規格での設計路線であるが、上庶路炭鉱の石炭の搬出に一定の活躍を果たしたとはいえ、国鉄再建法下の第1号廃線となったのは、この路線の哀しい現実であり、それが北進駅の風景に詰まっているように思われる。

ココパナ さん | 北海道 | 不明

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Book Meter Reviews

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

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  • kaz

    個人的には、車両もさることながら、大自然の風景や駅舎の周囲等も興味深い。図書館の内容紹介は『北海道の鉄道には、本州の鉄道にはない魅力が詰まっている。室蘭本線、日高本線、根室本線から分岐した懐かしい路線、計8路線の現役時代をオールカラー写真で紹介する』。

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