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廃駅ミュージアム

笹田昌宏

User Review :5.0
(1)

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784408111506
ISBN 10 : 4408111503
Format
Books
Publisher
Release Date
July/2015
Japan

Content Description

鉄道が廃止になるとき、人は駅を残そうとする。車両とともに、鉄道があったよすがとして。他の用途に転活用して。モニュメントとして。いくつかは忘れられ、傷み、やがて解体される。あるいは、土の中に埋もれていく。車両の保存活動で知られる著者が探訪した全国の廃駅の記録。丸田祥三氏撮り下ろし廃駅写真収録。

目次 : 1 北海道の廃駅(天北線・歌登町営軌道・興浜北線・宗谷本線(智東駅ほか)・美幸線/ 名寄本線・渚滑線・湧網線 ほか)/ 2 東北の廃駅(下北交通大畑線・大間線(未成線)・南部縦貫鉄道・十和田観光電鉄/ 岩手開発鉄道(旅客部門)・小坂製錬(小坂線)・くりはら田園鉄道 ほか)/ 3 関東・中部の廃駅(東野鉄道・鹿島鉄道・鹿島臨海鉄道(鹿島臨港線)・九十九里鉄道・京成電鉄(寛永寺坂駅ほか)・鶴見臨港鉄道・京浜電気鉄道/ 新潟交通・越後交通(長岡線)・松本電鉄・池田鉄道・上田交通(真田傍陽線・青木線・丸子線・西丸子線)・長野電鉄(木島線・屋代線)・善光寺白馬電鉄 ほか)/ 4 近畿・中国・四国の廃駅(柳ヶ瀬線・江若鉄道・近江鉄道(土田駅)・北丹鉄道・近畿日本鉄道(東信貴鋼索線)・有田鉄道/ 鍛冶屋線・三木鉄道・姫路市営モノレール ほか)/ 5 九州の廃駅(漆生線・上山田線・勝田線・筑肥線(旧線)・島原鉄道(島原外港以南)・雲仙鉄道/ 大分交通(耶馬溪線)・宮原線・高千穂鉄道 ほか)

【著者紹介】
笹田昌宏 : 1971年大阪府生まれ。医師、作家。第10回旅のノンフィクション大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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趣味の鉄道研究に関する著作も多くある医師...

投稿日:2021/04/15 (木)

趣味の鉄道研究に関する著作も多くある医師、笹田昌宏氏による「廃駅ミュージアム」と題した一冊。写真集であり、写真付き解説本的な部分もある。カラーページと白黒ページの混合で、全国各地の廃駅の「今」の姿が紹介されている。また、廃墟写真家としても著名な丸田祥三氏による写真が巻頭を飾る。私の住んでいる北海道には、私鉄線、国鉄線を含め、無数と言っていいくらいの廃駅がある。それらの総数は、現役の駅を軽く凌駕するくらいだ。70年代の時刻表を見ると、廃止された路線の多さとともに、例えば石北線の上川-北見間など、当時存在した駅の過半数が鬼籍に入っていることがわかる。そもそも、国鉄再建化の名目で行われた民営化という手法に、北海道に関しては相当な無理があった。交通という地方を支えるインフラを、他の付加価値から切り離して、単独の収支だけを目安とする手法がいびつで不合理なものだったのだ。地方線の廃止は、地方の過疎化に拍車をかけ、その結果、他の幹線の利用者まで減少するという負のスパイラルに陥り、地方は惨澹たる状況だ。国鉄再建化法の下、廃止対象とされた路線以外にも廃止の触手は延びる。運営する会社も、いかに自治体や国から補助金を得るかの口実を探すことに一生懸命。魅力的な列車を走らせたり、利便性の高い駅を設置したりする経営努力も、「自治体負担ありき」で開き直り、開発もすすまない。その上、自治体側の理解も低い。そのような状況だから、鉄道に乗るのが好きな私も、乗る機会が増えているとは言い難い。魅力的な路線や駅が続々と消えていく状況で、それでも、もちろん残った路線に乗るのは楽しいが、そこには痛々しい切なさが同居するようになった。そんな痛々しさを緩和するように廃駅を巡る様になった。私の場合、自分自身がかつて乗った路線や乗りたかったけどついに乗る機会に巡り会えなかった路線への思いとともに、私の父が70年代に蒸気機関車などの撮影に訪れていた各地への思いがあって、廃駅や路線跡を訪ねることになる。しかし、廃駅というのは、そう都合よく残っていてはくれない。周辺管理の面から撤去され、あっさりと更地になり、荒野へと戻っていくものがザラだ。自分が幼少のころおとずれた駅に想い出の痕跡を探そうと思って再訪しても、がっかりさせられることが多い。あまりにも何もないから。 本書には、幸いにもその痕跡を最近まで伝える駅たちが紹介されている。駅の中には、地元の人たちの愛情により、なんらかの形で保存されているものもある。また、単に撤去の必要がないという後ろ向きな理由によって痕跡を残しているものもある。その双方が、本書では紹介されている。いずれにしても、私は鉄道に乗るとともに、そういった駅たちを訪ねることを始めた。廃駅には列車で行くのは難しい場合が多く、そうなると、どうしても車で出かけてしまうので、列車にのる頻度が下がってしまうのだけれど、そこは痛しかゆしである。そんな私にとって、本書は、廃駅たちの、かなり新しい状況を伝えてくれる手引きとしても、とても有用なものだと思う。旅情と郷愁を誘う美しい写真集である、というだけでなく、旅の案内書でもある。本書に取り上げられている駅から、いくつか私にとって感慨深い駅を紹介しよう。胆振線の蟠渓駅は、廃止2年前に列車で来たことがある。曲線状のホームが印象的な、長流川の渓流に近い駅。集落から階段を上がったところにそのホームはあった。私はこの駅跡が大好きで、何度も訪問したのですが、新しく造成される道路に胆振線の路盤が提供されるため、最近解体されてしまった。もう行くこともないかもしれない。標津線の奥行臼駅は、開拓に功績のあった駅として、別海町によって保存されていて、すぐ近くには別海町営殖民軌道のDL機関車と自走客車も静態保存されていて素晴らしい。ぜひとも訪れるべき施設となっている。幌内線の唐松駅、万字線の朝日駅なども良好に保存され、最近では空知地方の産炭地を舞台にしたアート展の会場などにも利用されていて、廃駅の利用形態の一つとして、望ましいものを示してくれている。また、深名線の鷹泊、政和、沼牛、添牛内といった駅たちは、廃止からまだ20数年しか経っていないことや、付近の人口密度が低いこともあって、まだその雰囲気を色濃く残しており、駅舎も別の目的で利用される形で残っている。しかし、毎年の豪雪を経るごとに、痛みは増しており、興味のある人は、是非とも早くに訪問することをオススメしたい。美幸線の終着だった仁宇布駅跡は、駅舎は残っていないが、仁宇布駅から線路約5km分が保存されていて、観光客がエンジン付きの自走カートで走れる施設となっている。私も乗ったことがあるが、緑の中、いくつもの渓流を越えて走るのはとても清々しく、気持ち良かった。これも好ましい利用例の一つに違いない。それにしても、北海道の場合、無数と思える廃駅のリストは、旅情や過去への思いを誘う一方で、この地の厳しさをも強く印象付けるものである。

ココパナ さん | 北海道 | 不明

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Book Meter Reviews

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

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  • おいしゃん

    「この一冊読めば、あなたも今日から廃駅マニア」と言えるくらい、全国の廃駅が、美しい写真と共に、網羅されている。利用者の減により廃駅、廃線が発生するのは寂しいことだが、その跡を大切に残されていたり、憩いの場になっていたりするのは嬉しい。

  • 常磐条

    ここ数年、「寂しげな風景」の中に我が身を置いたという記憶がない。つまりは、当たり障りのない景色を選んで渡り歩いてきたということか。今ならまだ耐えることができるような気がする。寂しさに耐えられなくなると考えると、一種の恐ろしさのようなものを感じてしまう。旅に行きたい季節です。

  • けんとまん1007

    駅。懐かしい響き、温もり、往来・・いろんなことが浮かぶ言葉。時代の流れと言ってしまうとそれまで。こうやって1冊を見てみると、人の暮らし・営みの変遷が、伝わってくる。支線という響きも独特だ。今も、姿を変えて生きている駅もあるし、そうでないのも多い。しかし、かつては、そこに確実に人の行き来があったことだけは、まぎれもない事実。ふと、訪れてみたいという衝動にも駆られる。

  • Uzundk

    駅と鉄道、その廃墟になったもの達。およそ1/3を北海道の廃駅が締めており、当時の植民や炭鉱などの盛り上がりをうかがわせる。それ以外にも都市のすぐそばでも需要がない、あるいは拡張するスペースが内などで使われなくなったり、工業用途のために作り倒産と同時に閉じるなどそれぞれ歴史があって面白い。

  • 羊男

    近所の廃駅を探すのは面白そうだけど、いつかいくかなあ。それよりも廃駅だから心に残っている昔の風景を思い出して浸る方がいいいな。小さい頃に行った筑波駅の駅舎は覚えていた。たぶん写真が良いから、思い出せたのだろう。あとは、もっと駅舎についての建築学的なウンチクがあると均一的な光景も楽しめたと思う。

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