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100分間で楽しむ名作小説 文月の使者 角川文庫

皆川博子

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784041163924
ISBN 10 : 4041163927
Format
Books
Publisher
Release Date
June/2025
Japan

Content Description

昨夜の大雨で壊れた橋を見に、男が一人中州に来た。男は背後から「指は、あげましたよ」と、女の声を聞く。無人の場所でもちろん誰がいるわけでもない。男はきっと空耳だろうと捉えて川を見てみると、女枕がひとつ、川浪に揺れているのを見つけた。枕紙には何か文字が書いてある――「髪」だ。その枕を拾った男はやがて、とある女のことを思い出し・・・・・・。

【著者紹介】
皆川博子 : 1930年旧朝鮮京城生まれ。73年に「アルカディアの夏」で第20回小説現代新人賞を受賞し、幅広いジャンルで創作を続ける。『壁―旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞(長編部門)、『恋紅』で第95回直木賞、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞など多くの賞を受賞。2025年には旭日中綬章を受賞するなど、第一線で活躍する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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Book Meter Reviews

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

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  • 里愛乍

    いつか手に入れたいと思っていた本、『ゆめこ縮緬』。その中の三編が100分名作となって再編集。特に記憶に残っている表題作を読み出すと同時にすっかりこの耽美な世界に文体に酔いしれる。怖いというものではないけれど、このくらくらと気持ちの定まらない感じ、まさに晩夏の茹だりが神経に纏わりつくような。実にいい時期に読み終えた。この夏は幻覚を見てもおかしくないほどの暑さでしたが、幻想に浸るのはここでお終いといたしましょうか…

  • ぐうぐう

    揺らぐから妖しいのか。妖しいから揺らぐのか。冥界は、思ったよりも近く、親しい。真実から遠ざかることで、と思いがちだし、思いたくもなるのだが、実際のところはその逆で、真実に近付いてしまうことで、揺らぎは増し、妖しさは濃くなっていく。そのことに気付く皆川博子は、文体によって読者を絡め取り、だが引き摺り込むのではなく、やがて読者の意思を待って、扉を開放するのみだ。「九百九十九匹集めて、あと一匹というときに、冬になってしまって山には雪。玉虫はもう、どこにもいない。(つづく)

  • 秋良

    このページ数だと100分もかからないけど。表題作では「指は、あげましたよ」の冒頭の一文から引き込まれ、彼岸と此岸の境が曖昧になる場所で溺れる読み心地。胸焼けしないのは、からっとした話し方のおばちゃんとオカマが醜い争いを繰り広げるから(笑)ホラーコメディのようなすっとぼけた展開がほどよいバランス。玉虫抄は冷たい水に浸かっているとだんだん温かく感じてくるような、狂気が沁み入る一編。現実と違って、幻想の中で狂えるのはこの上なく美しい。

  • 混沌工房

    『100分間で楽しむ名作小説』シリーズってもう亡くなった作家の近代文学ばっかとりあげているのかと思ってた。本書は『文月の使者』『玉虫抄』『ゆめこ縮緬』の三作を収録。上野リチさんの装画が美しいものの、このページ数でいいお値段するなーと逡巡していたら、思いがけないところからお借りできた。舞台はどれも戦前?…幻想的で、美しいけれど妖しくて残酷で…文章が綺麗。元の『ゆめこ縮緬』、ちゃんと読みたいな。

  • APIRU

    短いながらも甘美で濃密な三篇だと思います。川浪で女枕を掬った男の業、娘が井戸底に見た緑金の光、蛇屋へ里子に出された少女の境涯。美しくも残酷さを覚える物語ばかりであり、坦々とした語り口に導かれて読み進めていけば、やがて見知らぬ場所に至ったような不安感と至上の美酒に酔いしれたような愉悦が齎されました。ハイライトは表題作。彼岸と此岸が綾なす好篇であり、想像だにしない展開と最後の余韻に嘆息するは必定です。全三篇。奇談とも怪談とも幻想談ともまた違う、カテゴライズすることさえ憚られる、唯一孤高の文芸と言えるでしょう。

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