Product Details
ISBN 10 : 4621312189
Content Description
法哲学は法学と哲学という二つの領域にわたる学問分野です。その学習・理解のためには、いずれの領域の最小限の知識も必要ですが、この分野で特に熱心に論じられている諸問題に関する知識が不可欠です。ほとんどの学問分野について言えることですが、研究に際しては、特に初期の段階で、信頼できる概説書や事典が大変有益です。それらの助けなしに、いきなり難解な専門書や党派的な論争に飛び込んだりして闇雲に学ぶことは一知半解の独善に陥りかねません。さいわい現在の日本では法哲学のすぐれた概説書が何冊も存在しますが、その一方、明治以来研究の歴史が長いにもかかわらず、これまで法哲学の事典は存在しませんでした。法学や哲学の事典の中には法哲学関係の項目が含まれていますが、それだけでは十分と言えません。海外でも法哲学の事典はごく僅かしかないようです。
このような状況で、日本で初めて法哲学の事典を刊行できることになったのは大きな喜びです。本書が日本における法哲学研究に寄与することを願っています。
本書の方針としては、各項目見開き2ページの中項目事典の形をとりました。内容を断片的な知識にとどめることなく、ある程度の分量をもって記述する方が、広く深い理解に至るでしょうが、その一方、長すぎる記述はかえって印象が散漫になりがちで、一般の読者には不親切だと考えます。また各項目の内容は現在の学界の知見を簡潔かつ明晰に述べることを目標としました。本書はレファレンス・ブックであって自説開陳の場ではありませんから、執筆者には独自研究の披瀝を避けてもらうようお願いしました。その一方、本書の項目は署名原稿ですから、執筆者の見解や個性がおのずと出てくることは無理に避けませんでした。このことは数百の項目の調子を単調にせず、全体の繙読を容易にすると期待します。
本書は第I部「法哲学の基礎理論」、第II部「法の一般理論」、第III部、「法学の方法論」、第IV部「正義論・法価値論」、第V部「法哲学と実践」、第VI部「法思想史」という6部から構成されています。「法哲学の諸分野」という項目で説明されているように、法哲学は法概念論・法学方法論・正義論という三つの分野に大別されることが多いのですが、本書の第II部は法概念論に、第III部は法学方法論に、第IV部は正義論に大体対応します。そして第I部は法哲学と他の学問分野との関係などごく一般的なテーマを、第V部は実践的な応用を、第VI部は法哲学上重要な思想家たちを、それぞれ取り上げました。(「刊行にあたって」より一部抜粋)
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