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ISBN 10 : 4794812914
Content Description
「2割の生徒が2割しか考えていない」。「いったいどういうこと?」と疑問を持ちながら手にした『答えのない教室―3人で「考える」算数・数学の授業』(梅木卓也・有澤和歌子著、新評論、2024年)。読み終えて「こんな授業にしたい」と思い、さっそく自分の授業に取り入れた。本書は、その実践記録である。
「答えのない教室」、まず私の授業を全職員が参観し、その後、梅木先生から答えのない教室の背景の説明をいただいた。「考える」という行動はそもそもどういうことなのか、生徒が授業中に見せる4つの思考停止行動とはどのようなものか、それらを15年以上にわたり40を超える学校、400を超える北米の小中高の教員と協力して研究したリリヤドール教授の導き出した2割の壁とは何か、をわかりやすく解説していただいた。そして、それらのことを踏まえて、「授業をより多くの生徒がより長い時間考えたくなるようなものにするにはどうしたらよいのか」ということを考えるきっかけとして、教職員を対象に模擬授業を実施してくださった。
模擬授業は、「なぜドライアイスは霧や煙のような特殊効果を生み出すのか」という内容であった。参加した教職員はトランプをひいて3人一組となり、意見を出し合いそれぞれのホワイトボードに自分たちの考えを書き出していった。その様子は、私の授業で生徒の見せる姿と全く同じで、楽しそうで生き生きとしていた。知っていそうで実はよくわからない内容であったためか、3人の活動は大いに盛り上がっていた。やがて、梅木先生からドライアイスが霧や煙のようになる解説が手渡され、それを読んだ先生方からは「あってた、あってた」「ほら、そうでしょ」「そういうことか」などの言葉があちらこちらから聞かれ、皆笑顔となっていた。
そして、いよいよ答えのない教室の仕組みについての説明に入っていくわけであるが、ここでも梅木先生が単に解説するのではなく、体験した先生方自身に考えてもらった。課題や3人での取り組み方や、それを見ている先生の動きなど、体験をしてみて感じたことを3人で再度話し合った。これら一連の「考える」流れこそが、答えのない教室そのものであり、先生方は与えられた課題を考える中から答えのない教室の仕組みを知ることになったのである。
単に講義を聴くだけならば、先生方の生き生きとした姿、主体的に参加する姿は見られなかったかもしれない。研修会後、「おもしろかった。体験してみて答えのない教室が少しわかってきた」「研修が短く感じられた」「3人での話し合いが想像以上に盛り上がった」などの感想が聞かれた。おそらく授業はこうであるべきだと多くの先生方が感じたのではないだろうか。
取り組んできた授業が「生徒にとって有益なものなのか」と不安を抱きながらこの1年間実践を積み重ねてきたが、今回の研究授業は、その成果を発表する場であったとともに、参観者から忌憚のないご意見をいただく機会となった。要するに、私にとっては「答えのない教室」という授業をより良いものに進化させていく研修の場となったわけである。
【著者紹介】
池田吉久 : 千葉県流山市公立学校教員。中学、高校で出会った数学教員にあこがれ教員を目指した。流山市立八木中学校で教員生活をスタートし、37年間多くの生徒と関わり、流山市立東部中学校で定年を迎える。2022年4月から新設校である「流山市立おおぐろの森中学校」で再任用教員として勤務し、2025年3月末で教員生活40年となる。数学教員として経験を重ねていくなかで、「数学において思考・判断・表現力を伸ばすにはどうしたらよいか」と自問自答し、様々な取り組みを実践してきたが、2024年3月に出合った『答えのない教室』(梅木拓也・有澤和歌子、新評論、2024年)に魅了され、現任校で実践中。「答えのない教室」を通して、一人でも多くの生徒に数学を好きになってもらうことが現在の目標(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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