楠都 第五巻 熊本の光と影の青春 万日山の誓い

秀彬は『チャタレー夫人の恋人』のノーカット版原書を速読で読破し速記録作成。D・H・ロレンスは主人公コニーのセックスを書くのが目的ではないかった。コニーの満たされない空虚さ、大尉だったメラーズとの森での邂逅、男女間の相手への第一印象の大切さ、姿見で全身の裸を見て��喜びを伴った性生活が必要�≠ﾆ自覚するコニー。森でメラーズがコニーに恋心を抱き始めるシーン、悲しい様子の女性を慰さめたいメラーズの本能の姿、メラーズの芯に小さな炎が燃え上がる様子、コニーの不能の夫への絶望、雛鳥を抱く雌鳥に女性性の喪失を苦悩するコニー、二人は徐々に親密になる。メラーズを受け入れるコニーの準備の描写、男への賛美の念、好意を持ち始めるコニー、初回、眠りの中でメラーズを受け入れた姿、重荷に耐えきれず安らぎをうる為与えてしまったコニー、最初安らぎと慰めを得たが二回目は遠く取り残され自信を失ったコニー。次の人目のない繁みでの受け入れ。二回も共に同時に済ませた感覚に感動するコニー。新しい生命の宿りを意識、身体に生じた恍惚感。男は��好きな女と抱き合って眠る夜の幸せ�≠�思う。淑女が本心を隠さず相手に相対する姿は感動的。快感の痙攣を味わい尽くすコニー。作品は不能の夫に隠れ愛人と逢い引きを重ねる恋物語ではない。真に愛せる相手を見出す迄の真剣な恋の物語だった。溶ける歓びを味わい尽くすコニー、相手の全てを愛しあう二人、コニーの大雨の中の裸のダンスと雨の中での溶け合い、官能的な情熱の夜。コニーは男が与えてくれたものを大事にする決意を抱くという処で物語は終る。ロレンスの執筆意図は、搾取階級に虐げられた庶民の側からの、反骨の作品を描く事にもあった印象だった。ルガーノへの奈美さんとの愉しい旅が描かれる。ロカルノ、マッジョーレ湖のホテル。　モンタニョーラのヘッセの終の棲家訪問、スイス人の母と画家の娘、孫同伴の紳士、ルマン湖畔で老夫婦と知己に、ローマへ列車の旅を終えて、日本に帰国。　吉田司家ご当主から��はっけよい残った�≠ﾌの意味を知る。奈美さんとは、人生探求の旅を遥か遠くまで手を携えて進んで行くのだ、という決意を抱く秀彬だった。だが、親友の本山から清水亜樹子の存在を聞く。由子と似た素晴らしい女性だった。北原瑤子に相似る写真を見て「もう若い者同士でやりなさい」という奈美さんがいるが、結局、自分を偽れない秀彬は、知力を尽くし亜樹さんと恋人になる。だが、奈美さんと離れる等考えられない。秀彬は、決断を下し、熊本で光と影の青春を、亜樹さんとの結婚迄過ごしていくと決心した。消された歴史の話、海野老師のツガル（東日流）の古文書研究、弘前の研究者の人、現代の状況について話を聞く。秀彬がフランク・ロイド・ライトのタリエセン・ウエスト建築スクールの大学院入学予定を決めると、その期間、奈美さんのセドナ移住が決まる。亜樹さんが三田家を訪問し、家族全員が亜樹さんのファンになる。亜樹さんと寸前まで行ったとき、愛の儀式を亜樹さんが提案。三日間の愛の儀式を終えて、二人を完全に結ばれる。仲秋の名月の日、亜樹さんと万日山へ登頂。『万日の誓い』が為された。