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無調の誕生 ドミナントなき時代の音楽のゆくえ

柿沼敏江

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784276132054
ISBN 10 : 4276132053
Format
Books
Publisher
Release Date
January/2020
Japan
Co-Writer, Translator, Featured Individuals/organizations
:

Content Description

「現代音楽」とセットで語られることの多い「無調」は実在したのか? 「無調」という言葉に作曲家や音楽評論家は何を託そうとしたのか? 古典的な調性システムから離れた音楽は、時間軸をどこに求めたのか? 「調性の崩壊」という言葉でくくられがちな20世紀以降の音楽に本当は何が起こったのか? 音の縦の関係性、すなわちピッチと和声、音階や旋法に関連する問題を中心に、音楽史の再考を迫る画期的な論考。書き下ろし。「調性がなく、ひたすら難解で、聴くと頭が痛くなる音楽が現代音楽だ」と思い込んでいる人にこそお勧めの一冊。

目次
プロローグ――ドミナントなき時代

第一章 「無調」とは何だったのか
無調という語/無調とは?

第二章 シェーンベルクを読み直す
『シェーンベルクの誤り』/シェーンベルクの信念/単一調性(モノトナリティ)/調性とジェンダー/ゲーテの原植物

第三章 無調と調性の間
浮かび上がる調性/一二音音楽における調性

第四章 無調と調性の修辞学
非芸術〜狂気/調性の死/不気味/自由・解放/無調と革命/誠実さと倫理

第五章 クルシェネクの「転向」(無調の政治学1)
政治的芸術/《カール五世》への道/アドルノとの往復書簡/《カール五世》と一二音技法/独自の一二音技法/一二音技法と調性/ローテーションと旋法/避難所としての一二音技法

第六章 もうひとつのダルムシュタット(無調の政治学2)
前衛音楽批判/結節点としてのゼロ時/ヘルマン・ハイスと一二音技法/ヘルベルト・アイメルトと無調音楽/ゴリシェフ、フーイファールツとセリアリズム/創られたウェーベルン像

インテルメッツォ――ニコラス・ナボコフと「無調」

第七章 隠れた水脈――八音音階という魔術
半音階と全音階の狭間/全音音階/オクタトニック(八音音階)/媒介する音階/オクタトニックと半音階/移高の限られた旋法/オクタトニックと日本の現代音楽/オクタトニックとスペクトル、ポスト・スペクトル楽派/オクタトニックと実験音楽、ジャズ

第八章 調性の回路
調性批判――シベリウス問題/人々のための現代音楽――ハンス・アイスラー/軽いクラシック(あるいはダダとしての調性)――クルト・シュヴェルツィク/「ポスト」の美学(あるいは追伸としての音楽)――ヴァレティン・シルヴェストロフ

第九章 音律と倍音がつくる世界
一二平均律からの逸脱――三分音と四分音/純正律にもとづく調性――田中正平、ハリー・パーチ/倍音への眼差し――シュトックハウゼンとリゲティ/スペクトル音楽と「無調」/倍音の広がり――テニー、ラドゥレスクほか

第十章 時間の軌道
時間軸をつくるもの/物語の痕跡――シェーンベルク、ペンデレツキ/エピソード的な時間――サティ、ストラヴィンスキー、フェルドマン/時間の幾何学――セリアリズムとスペクトル音楽/循環する時間――パッサカリアと平方根リズム構造

エピローグ――中心のない現代

あとがき

参考文献


【著者紹介】
柿沼敏江 : 静岡県出身。カリフォルニア大学サンディエゴ校博士課程修了。ハリー・パーチの研究で博士号取得。主要訳書:アレックス・ロス『20世紀を語る音楽』(みすず書房、2010年、ミュージック・ペンクラブ音楽賞)ほか。2019年3月まで京都市立芸術大学音楽学部教授。現在、京都市立芸術大学名誉教授。江戸時代に広まり、現代に伝承されている「一絃琴」の名取でもある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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Book Meter Reviews

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  • へくとぱすかる

    12の半音を平等に全部使えば「無調」になる? 最初の7つが「ドレミファソラシ」でもいいのか? と、昔から変だな、と思ってましたが。シェーンベルクの12音技法をメインに、「無調」が生んだ波紋や騒動、20世紀音楽への影響と余波を述べた、大変おもしろい本。確かに、全音音階は鉄腕アトム。8音音階のメシアンを聞くと、素人耳には武満徹みたいに聞こえ、シェーンベルクの弦楽四重奏も、何かの調で一貫しているかのよう。無調ではなく汎調性というのもうなづける論。ぜひ聞きたい20世紀末以後の曲も多く紹介されている。調性は幅広い!

  • ひばりん

    シェーンベルクファンとしては、ようやくこういった本が出たか〜という感想。ただシェーンベルク周辺(シェーンベルクのやったことが〈無調〉と要約されていく過程)はよく整理されているものの、シェーンベルクじたいについて何らか新しいことが言われている本ではない。現代音楽論をゆるく書く方向に本の構成が流れてしまった。もっと渦を巻くようにシェーンベルクという不思議の原点を深堀りしてほしかったところ。惜しい論点がいくつもある。

  • おだまん

    現代音楽(20世紀音楽)のよき指南書。そばに置いて色々聴きたいなぁ!

  • Nepenthes

    調性も無調も感性なんだなという感想。乱調の美、無調の美。

  • 毒モナカジャンボ

    面白いが、現代音楽とはなんだったのか、という気持ちになり、それはもう現代音楽が(顧みるものの少ない)歴史になったということだろうなという気持ちにもなる。

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