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誰がために医師はいる クスリとヒトの現代論

松本俊彦

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784622089926
ISBN 10 : 4622089920
Format
Books
Publisher
Release Date
April/2021
Japan
Co-Writer, Translator, Featured Individuals/organizations
:

Content Description

ある患者は違法薬物を用いて仕事への活力を繋ぎ、ある患者はトラウマ的な記憶から自分を守るために、自らの身体に刃を向けた。またある患者は仕事も家族も失ったのち、街の灯りを、人の営みを眺めながら海へ身を投げた。いったい、彼らを救う正しい方法などあったのだろうか?ときに医師として無力感さえ感じながら、著者は患者たちの訴えに秘められた悲哀と苦悩の歴史のなかに、心の傷への寄り添い方を見つけていく。同時に、身を削がれるような臨床の日々に蓄積した嗜癖障害という病いの正しい知識を、著者は発信しつづけた。「何か」に依存する患者を適切に治療し、社会復帰へと導くためには、メディアや社会も変わるべきだ―人びとを孤立から救い、安心して「誰か」に依存できる社会を作ることこそ、嗜癖障害への最大の治療なのだ。読む者は壮絶な筆致に身を委ねるうちに著者の人生を追体験し、患者を通して見える社会の病理に否応なく気づかされるだろう。嗜癖障害臨床の最前線で怒り、挑み、闘いつづけてきた精神科医の半生記。

目次 : 「再会」―なぜ私はアディクション臨床にハマったのか/ 「浮き輪」を投げる人/ 生きのびるための不健康/ 神話を乗り越えて/ アルファロメオ狂騒曲/ 失われた時間を求めて/ カフェイン・カンタータ/ 「ダメ。ゼッタイ。」によって失われたもの/ 泣き言と戯言と寝言/ 医師はなぜ処方してしまうのか/ 人はなぜ酔いを求めるのか

【著者紹介】
松本俊彦 : 1967年生まれ。精神科医。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部長。1993年佐賀医科大学卒。横浜市立大学医学部附属病院精神科、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所司法精神医学研究部。同研究所自殺予防総合対策センターなどを経て、2015年より現職。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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Book Meter Reviews

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  • 鉄之助

    シンプルで一見、地味な装丁ながら、中身がギュッと詰まった1冊だった。薬物依存症の臨床医である著者の「荒れた中学」時代から書き起こされた半生記、の形式をとっているが”依存症の本質”を突く名著だ。覚せい剤事犯で逮捕された、のりピーの謝罪会見で、彼女が流した涙は「22滴」(芸能レポーターの故・梨本勝の観察による)など、読みやすい導入からスッと核心に入る構成は、素晴らしい。日本の薬物取締の限界と、これからあるべき姿が具体的、的確に示されていた。「ダメ、ゼッタイ」では「絶対だめ!」なのだ。

  • みっちゃん

    次男からのオススメ本。著者は私もテレビや新聞でお見かけした、依存症治療の第一人者。とても面白く読み易い文章。自虐も交えながら、可笑しみのある筆致で描かれたこれまでの人生にはしばしばぷぷっと吹き出してしまう。が、そこから浮かび上がる、離れたくても薬物に依存してしまう患者への真摯な姿勢。依存症の背後には必ず深い心の傷と孤独がある。それと向き合わずに徒に罰して刑務所に送り込んでも依存症は繰り返される。「アディクション(依存症)の反対語はしらふ、ではなくコネクション(つながり)」心に留めて報道等に接していきたい。

  • ゆいまある

    筆者は薬物依存症治療の第一人者。違法薬物に嵌まる人は快楽を求めているのではなく、苦しさを紛らわす為に使っている場合がほとんど。罰則強化は患者を追い詰めるだけであり、治療的ではないと声を上げ続けている。トラウマ治療にも詳しい。私と年が変わらないのに研究も啓蒙もこなすカリスマ医師。それまでの常識に囚われず、より患者さんに共感する姿勢が眩しい。自身の車依存やコーヒー依存にも触れ、人は誰しもクレイジーであると気付かせてくれる。何が違法かは国による。酒のほうが大麻より身体に悪いのよ。それはもっと知られていいと思う。

  • アキ

    依存症を専門にする精神科医のエッセイ。医師は免許を取って医師になるのではなく患者から教わって医師になる。担当の覚せい剤依存の若い女性が自殺したことで、患者のトラウマ体験を積極的に訊くようになった。医療者ができることは海で溺れている依存者に「浮き輪」を投げてやることしかできない。その浮き輪をつかんで泳いで陸に辿り着くのは依存症自身なのだ。「人間は薬物を使う動物である」アルコールを分解できる動物はヒト、ゴリラ、チンパンジーだけ。そういう医療者もまた患者に求められれば応じざるを得ない薬物療法依存症なのである。

  • ノンケ女医長

    多くの精神科医が苦手意識を抱きがちな、薬物依存症。「不本意な医局人事のせいです」と著者は冒頭で述べているが、医師半世紀を知ることができた。置かれた環境で奮闘しながら、さまざまな出会いも重ね、今の「精神科医なら誰もが知っている」大きな存在に到達した松本先生。講演は何度も拝聴した。卓越した、聴衆をぐっと引き込んでしまう話術の裏に、今作で記された苦難があるのだなと感動した。さらっと書いているが、立ち直れないほど心に深手を負うこともたくさんあったはず。敢えて、控え目な表現にされた点に、読み手への気遣いを感じた。

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