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不連続殺人事件

User Review :5.0
(2)

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784041100196
ISBN 10 : 4041100194
Format
Books
Publisher
Release Date
October/2006
Japan
Co-Writer, Translator, Featured Individuals/organizations
:

Content Description

戦後間もないある夏、詩人・歌川一馬の招待で、山奥の豪邸に集まったさまざまな男女。作家、詩人、画家、劇作家、女優など、いずれ劣らぬ変人・奇人ぞろい。邸内に異常な愛と憎しみが交錯するうちに、世にも恐るべき、八つの殺人が生まれた!不連続殺人の裏に秘められた悪魔の意図は何か?鬼才安吾が読者に挑んだ不滅のトリック!多くのミステリ作家が絶賛する、日本推理小説史に輝く傑作。第2回探偵作家クラブ賞受賞作。

【著者紹介】
坂口安吾 : 明治39年(1906)、新潟生まれ。東洋大学印度哲学科卒業。昭和21年に発表した『堕落論』が反響を呼び、続く『白痴』によって太宰治、織田作之助らとともに新文学の旗手として文壇に特異な地位を築く。昭和30年、脳出血により48歳で急逝(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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“すべての真相が明らかになった瞬間の戦慄...

投稿日:2021/04/12 (月)

“すべての真相が明らかになった瞬間の戦慄”そして“物語そのものの面白さ”。この2点において、本作を超えるミステリをいまだかつて読んだことがない。東京から人里離れた山奥の大邸宅。戦後間もないある夏、詩人・歌川一馬の招待で集まった十数名の男女。作家、詩人、画家、女優、弁護士、劇作家など、アクの強い一癖も二癖もある奇人変人たちが一堂に会し丁々発止のやり取りを繰り広げる中、最初の夜から“事件”は起きてしまうーーーーーー。 読者は物語の端緒から一気に引き込まれてしまう。ここで1つ大きなポイントとして挙げたいのは、作品世界に読者を引き込む要因が、単に奇抜な設定や人物配置のみにあるのではないという点だ。グラスの触れ合う音と女たちの笑い声。煌々ときらめく洋館の灯りと屋外の暗闇が織りなす真夜中のコントラスト。口紅のついた吸いさしのタバコと、ため息。数年前の因縁の数々や、作家同士により熱を帯びて戦わされる芸術論。皮肉と怒声。事件そのもの(主線)と並行して描かれるこうした1つ1つのディテールやエピソード(副線)が紡ぎ合わされ映像として喚起されていくことにより、読者はこのひとつ異世界とも言うべき作品世界に深く没入させられていく。この没入への深さを裏打ちしているのは、作家・坂口安吾の変幻自在な描写力と展開力に他ならない。文庫版巻末の解説の中で高木彬光氏も触れているが、推理作家の斎藤栄氏による造語の1つに「ストリック」というものがある。ストーリーそのものが大きなトリックとなっている推理小説、探偵小説のことを指す。先に述べた事件そのもの(本線)と並行して展開される、事件とは一見無関係なエピソードやディテール(副線)の話に立ち返るならば、この「一見無関係」かつ、しかしながら読み手の興味を引いてやまない数多のエピソード群は、本作を牽引するストーリーそのものであると言える。そして、本作最大のトリックおよび一連の事件に対する最大の誤認は、この本作を牽引するストーリーそのものによってもたらされる。副線すべてが伏線、と換言することもできよう。ストーリー自体のリアリティによって、事件の真の目的やトリックそして真犯人は完璧に隠蔽され、最終局面で真相を知ることにより、読者はストーリーに立ち返る。そして、真相とストーリーを今一度照合し、戦慄とともに噛みしめることになる。確かにこの人物以外が犯人では絶対にありえなかった、と。その意味で、本作はこれ以上ない至上のストリックと言えるのではないかと感じる。強靱なリアリティを持ったストーリーが大きな装置として、トリックをトリックたらしめることに成功しているからだ。個人的なエピソードとなるが、初めて読了した夜のことをいまだにはっきりと覚えている。10代終わりのある冬の日、帰宅後の夕方に読み始め、食事もとらずに読み進め、読み終えた時は午前1時を回っていた。物語そのものへの戦慄、恐怖。冬の寒さによるものでない鳥肌がいつまでも消えず、これほど面白い小説があったのか、という驚きと興奮で朝方まで眠れなかったのだった。あの晩から20年近く経ち、その間に読んだ作品はミステリ含め他作者含め数えきれない。にもかかわらず、本作は個人的な特別な作品であり続けている。私にとって本作は、ミステリというジャンルに留まらず、小説というものの面白さや可能性を強く深く感じさせてくれた大切な1冊。ミステリファンのみならず、「とにかく面白い小説が読みたい!」と願うすべての人に、本作が届きますように。

チョコぞう さん | 神奈川県 | 不明

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 戦後の本格長編探偵小説界に純文学畑から...

投稿日:2009/11/28 (土)

 戦後の本格長編探偵小説界に純文学畑から挑戦状を送りこんだ、純粋本格探偵小説。  前半部で推理的要素を文章の中に織り込み、公判開始前に読者に推理を挑戦する純然たる体裁を持った本格物に、江戸川乱歩は、自身の作「陰獣」のように作品全体に流れるシチュエーションに騙されたとの事。流石「堕落論」の作者らしく登場人物を堕落したひと癖ある人物に仕立て上げ一種独特な雰囲気をかもっしだしたのは流石。  前半部分だけで、犯人を見破った人もいたようだが、その中の一人に横溝正史がいたのも流石。

白塗りのサル さん | 神奈川県 | 不明

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Book Meter Reviews

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

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  • 夜間飛行

    山奥の豪邸に集まった好色の文士や画家、美女醜女。まるで猛獣の集まりだが、解説にある如く、ミステリとはいえ安吾の小説作法を踏まえた作りになっている。語り手は「巨勢博士を同道せよ」との謎の招待状に呼び出される。この巨勢博士なる青年、人間観察が低い線で停まっているゆえ(文学の才はまるでないけれど)探偵の天才なのだそうだ。愛欲の縺れた糸と利害の見えづらい糸を見極め、8人もの人が殺された際の犯行可能性を一々考えての推理は難しい。が、メイントリックに気づけば犯人の見当はつく。後は巨勢博士の理路整然たる解明を待つのみ。

  • 青蓮

    Twitterのフォロワーさんから頂いた本。安吾といえば「堕落論」などが有名で些か取っ付き難いイメージがありますが、本作は娯楽的推理小説。第2回探偵作家クラブ受賞作品だけあって切れ味鋭く、グイグイと読ませます。登場人物が多く、関係も複雑なので理解するのにやや手間取りますが、一癖も二癖もある強烈なキャラクター達が織り成す愛憎が激しい渦となり、やがて物語が収斂していく様はとてもドラマチック。最後まで犯人が解らず、ドキドキしながら読みました。面白かったです。

  • aqua_33

    みなさんのレビューを見ると結構絶賛されてますが、私はトリックに辿り着く前に断念。登場人物が多くて最初の数ページで10人くらい出てくるのに、その後もどっかんどっかん増えて…それでいてキャラは男女問わず奇人変人ばかりで人の区別がつかない、かつ人間関係が複雑。そして何よりも妙に読み辛いのです。一番目についたのが「然し」という言葉の多用。「然し」を読む度に殺人事件の犯人とか動機とか知りたいという気持ちが萎えていきました…。この読み辛さは時代というのもあるのかな?《2018年43冊目》

  • Tsuyoshi

    登場人物が多く相関図をハッキリさせないと見えてこなかったので推理は早々に断念。出てくる人物たちがみな個性的なキャラだった分やり取りは面白く、結末や経緯に至るまでの意外性の連続で楽しめた。この手のもう少し丁寧に読んでより楽しめるようにしたい。

  • かえで

    推理小説として、完璧な作品なのではないかと思う。話そのものがトリックに関わってくる。解決編を読んでいるときの高揚と言ったら、言葉に書き表すことが出来ない。登場人物の多さ、変人の多さで惑わされてしまい投げ出しそうにはなったけど、そこを乗りきれば本当に楽しめる(そもそもこの二つも小説を形作る重要な要素になっている…と思う)。とにかく読んで欲しい、最高の推理小説です。さすがに坂口安吾だけあって、探偵小説ながら(文学性の排除を意図的に試みているにも関わらず)しっかり文学しているなと感じました。

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