信頼責任の原理

本書は、損害賠償責任としての信頼責任を論じたものである。本書で主張する信頼責任とは、契約の一方当事者が（法によって認められる）信頼をしたから相手方が損害賠償責任を負うという論理の責任であり、「そこでは、責任が、合意や債務者の過失（すべき行為をしないこと）と結びつくのではなく、契約で予定した結果発生を不可能・困難ならしめる事情に対する相手方の主観的態様と結びつく」のである。その信頼責任を担う責任（制度）には、少なくとも売主の担保責任と契約締結上の過失責任の一部がある、というものである。このような責任がある（を認めるべき）ことを、本書を通じて論証する。

目次 : 第１部　日本民法典における信頼責任―売主の債務不履行責任と担保責任（旧民法典の立場について/ 現行民法典の立場について）/ 第２部　対価的均衡の維持論と信頼責任―性状錯誤と担保責任（前提的検討―性状についてのどのような期待が表示を通して契約内容になりうるのか？/ 性状についての期待の保護）/ 第３部　契約責任（損害賠償責任）の再構成と信頼責任―責任原理論の展開と責任制度の見直し（契約で想定した結果の不発生に対する損害賠償責任の論理構造/ 債務不履行責任（第四一五条以下）の構造/ 学説による批判/ 契約責任の再構成）

【著者紹介】
戸田知行 : 昭和３５年（１９６０年）生まれ。中央大学法学部卒業。早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程を経て、現在、民法を中心に法の研究をしている（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）