Book Meter Reviews

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

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• さてさて

  読了日：2025/02/04

  『風が吹いている。川のような、鳥の大群のような、私を別の場所に押し出す見えない流れがやってきている』。そんな感覚を見る主人公を描く〈ひと匙のはばたき〉を含め6つの短編が収録されたこの作品。そこには”食”を絶妙なアクセントとしてトッピングした彩瀬さんらしい物語が描かれていました。それぞれの短編に見るバラエティ豊かな物語に飽きることなく読めるこの作品。最小限の”食”の表現にも関わらずどこか”食”が印象に残るこの作品。“食”を取り上げた小説を描いても彩瀬さんはどこまでいっても彩瀬さんだったと実感する作品でした。

• アッシュ姉

  読了日：2024/09/12

  美味しそうな料理に心踊る小説ではない。彩瀬まるさんだから。食べることは生きること、心に染みる物語だ。いろいろ大変な時に読んだので、なかなかしんどかった。ゆとりがある時に読んだ方が心にじんわり効くかもしれない。

• piro

  読了日：2023/10/20

  食べものに纏わる6作の短編集。少し疲れた人たちにじんわり沁みて、心を温めてくれる料理の話が多かった。まだ温かさが残る鍋は明日になれば冷めてしまうけれど、一夜越え、また温め直せば一段旨みが増す。そして人もまた食べて、夜を越えて熟していくのだろうな。決して豪華ではないけれど、日々を生きていくために必要なエネルギーを心に与えてくれる一冊でした。『ひと匙のはばたき』のちょっとだけ異界を感じさせる所が好き。一番彩瀬さんらしいと感じた一編です。

• よっち

  読了日：2023/10/27

  今がどれだけキツくても、おいしいがいつかきっとあなたの力になる。大切なあのひと口の記憶が紡ぐほろ苦く心に染み入る６つの連作短編集。手伝っている叔父の店を訪れる女性の苦悩、一緒に住む相手が時折頼んでくる悲しい思い出のパン、うっかり不倫してしまった妻の複雑な想い、仕事と家事の日々に疲れた妻と保育園仲間の逃避行、子供に先立たれたのに周囲に気を遣う友人、娘も構ってくれた趣味仲間の入院。辛く苦しい時に寄り添ってくれる人たちや優しく温かく癒してくれる料理の存在と、救いが垣間見えるそれぞれの結末が印象的な物語でしたね。

• のんちゃん

  読了日：2025/07/19

  ここ数年流行りの食べ物、料理を話の準主役に置いた短編集。だが、巻末の寺地はるなさんの解説にもある様にこの作品集の中の物語は明るい前向きな料理小説ではなく、ある食べ物と苦しい記憶がその時の感情と共に押し寄せてくる様な話だ。人は生きていく限り、食事をしなければならない。それはその時、自身や家族や親しい友人に耐え難い悲しみが訪れてしまった時でさえだ。食事と悲しみの時間は相反する位置にあると思うが、その時の無理矢理の食事という行為に関する様を、その感情を作者はとても切なくしかし力強く表現する。静かに心に残る物語。

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