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「日本型格差社会」からの脱却 光文社新書

岩田規久男

User Review :4.0
(1)

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784334045500
ISBN 10 : 4334045502
Format
Books
Publisher
Release Date
July/2021
Japan

Content Description

一九九〇年代以降、日本では格差が広がり続けている。例えば、非正規社員の増加は賃金格差を招き、ひいてはその子供世代の格差も助長している。さらに、世代ごとに受給額が下がる年金制度は、最大六〇〇〇万円超の世代間格差のみならず、相続する子供・孫世代の世代内格差の原因に。所得再分配政策は、高齢者への社会保障に偏っており、現役世代の格差縮小にはほとんど寄与していない。そして、こうした格差はすべて、戦後、世界で日本しか経験していない長期デフレが根本にあり、そういった意味で他国とは異なる「日本型格差」といえる特徴的な格差である。では、この「日本型格差」を縮小し、成長を取り戻すにはどうすればよいのか―。本書では、日銀副総裁を務めた著者が具体的な政策とともに提言。より生きやすい日本の未来を模索する。

目次 : 第1章 デフレ下で進む少子高齢化と格差の拡大(長期デフレによる日本の経済悪化/ 綻び始める社会保障制度と賃金格差の拡大/ 規制緩和とグローバリズムは雇用を悪化させたか)/ 第2章 「日本型格差」の特徴(日本の不均衡な所得の再分配/ 深刻化する日本の貧困問題/ 年金制度における世代間格差と世代内格差)/ 第3章 成長を取り戻すデフレ脱却と公正な競争政策(90年代以降、日本の生産性はなぜ低下したのか/ 労働生産性を引き上げるための正攻法/ 産業・企業保護政策から公正な競争政策へ)/ 第4章 雇用の自由化と女性が働きやすい環境の整備(労働の効率的配分を可能にする制度改革/ 就業率を高めるための戦略)/ 第5章 これからの所得再分配政策(新しい所得再分配制度で貧困を減らす/ 年金制度は世代で閉じる積立方式へ)

【著者紹介】
岩田規久男 : 1942年生まれ。東京大学経済学部卒業、同大学院単位取得満期退学。学習院大学経済学部教授などを経て、2013年4月から5年間、日銀副総裁を務める。上智大学名誉教授・学習院大学名誉教授。専門は、金融論・都市経済学。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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日銀副総裁を5年間務めた著者による日本に...

投稿日:2021/07/28 (水)

日銀副総裁を5年間務めた著者による日本における格差社会の現状とその解決策を提案する一冊。 日本の格差が拡大した理由として、まずは失われた20年の話から始まる。ここの話は著者の兼ねてからの主張どおり、バブル崩壊後に金利を引き下げる必要があったのになぜか金利引き上げをしてしまって以降、ディスインフレ政策をひたすら継続し続けた20年。この間に就職氷河期を迎え、世期非正規雇用という身分制が出来上がった上、非正規雇用であるがゆえに所得が明らかに少なく、貧困世帯の増加と婚姻率の減少という現在の日本社会の難点の一因となっている。 ここまでの議論を踏まえ、ここ数年で話題となっている日本の労働生産性が他の先進国と比べて低いことに関する原因分析を行う。ここでは政府の成長戦略会議の委員であるアトキンソンの主張に批判を加えていく。労働生産性自体の算定があまりにいい加減であること、為替レートで変わってしまうこと、さらに景気≒インフレ率で大幅にプラスとなることから、アトキンソンの主張は容易に論破できる。ラーメン一杯の価格を比較すれば簡単に分かることだが、アメリカでラーメン一杯食べると、日本に2倍はするが、日本とアメリカの接客含めて2倍の価値があるかというとない。このような指標をもってして、中小企業の淘汰を進めるのは論拠が弱い。 労働生産性の議論に続くは、日本型格差の打開策を提案する。インフレ目標の維持、緊縮財政の否定、社会保障の充実、過度の中小企業有利な制度の廃止、年金制度の見直し、その他所得に対する累進税率の導入等想像以上に範囲が広い。90年代後半からインフレ目標を訴え続けた著者の主張であるため、いつかは実現してほしいとは思う。 本書で惜しいのは、アベノミクスの第1の矢、金融政策は完全雇用を達成できたものの、インフレ目標2%にはほど遠い結果となっている。これを消費税率の引き上げとしているが、日銀サイドでももっと何かできなかったのかという点について触れてほしかった。また、第2の矢、積極財政の点についてももう少し触れてほしい。他のリフレ派の論者が各媒体で主張しているのでそちらの参照でもいいのだが、財務省を中心とする緊縮財政に関する積極的な否定も必要である。 ということで、新書にして読み応えたっぷりの一冊なので、万人にお勧めです。

DJもちお さん | 東京都 | 不明

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Book Meter Reviews

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

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  • Daisuke Oyamada

    1990年代以降、日本では格差が広がり続けているという。非正規社員の増加は賃金格差を招き、その子供世代の格差にも影響し始めている。  受給額が下がる一方の年金制度は、世代だけのみならずそれを引き継ぐ、子供や孫の世代へも波状していく。  こうした格差のすべては、戦後、世界で日本しか経験していない長期デフレが根本にあるという。他国とは異なるどころか、世界で誰も経験したことのない「日本型格差」・・・ https://190dai.com/2024/02/09/「日本型格差社会」からの脱却-岩田規久男/

  • 紫の煙

    日本の格差拡大の根本的原因は、90年代以降の長期デフレを招いた日銀の金融政策にある。デフレスパイラルを取り除かないといけないと気付いた政治家が、2012年にやっと現れた。安倍晋三である。デービッド・アトキンソンと自称リベラル政党を批判。などなど、面白い部分もあったが、概ね著者の意見に賛成である。アベノミクス礼賛だけでなく、所得分配政策を考え直さないといけない。

  • 小鳥遊 和

    カッコ付きで日本型と言うのは特有の長期デフレが生み出した格差だから。加えて所得再分配効果の小さい税制・年金制度が格差を固定化した(” 年金受給額の「世代間格差は6000万円」 “ でWeb検索して読める本書要約を参照)。アトキンソンの「人口減でデフレ」も、「最低賃金引き上げで労働生産性UP」も誤り。正しいマクロ経済政策は中小企業保護廃止と正社員整理解雇の規制廃止、就職氷河期世代への就業支援、働かない限り健康保険・年金保険に加入できないスウェーデン方式で女性の労働参加率を高めること。学説に忠実なのが良い。

  • まゆまゆ

    日本の格差問題は、ジニ係数だけ見ていては捉えられない。根本的原因はデフレによる長期経済停滞であり、解決の第一歩は一人あたりの生産性の向上、すなわち一人あたりのGDPの引き上げである、と語る内容。自身の日銀副総裁就任前の政策を批判しつつ、インフレ未達成は消費税増税のため、としているのはちょっと残念。同一労働同一賃金達成のための労働規制緩和や年金積立方式、ベーシックインカムといった解決策に特に真新しさはないので再確認といったところ。

  • shimashimaon

    谷本真由美氏の「日本は適切に弱者を保護できていない」との主張がずっと気になっています。所得再分配策としての税制は確かに不公平であることがわかりました。労働、保育、年金等の社会保障政策については、本書よりもそれぞれの専門家に教授を求めたい。宮崎市定『中国史』を読んで、貨幣と物価の現象は遠く古代からあり、財政の予算化は北宋時代の画期だと知りました。MMT理論をみても政策論に歴史の視点は欠かせないように思います。日銀副総裁の経験からなのか、肌で感じた政治というか、雰囲気がよく伝わります。変革の実現は甚だ困難。

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