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あとは切手を、一枚貼るだけ 中公文庫

小川洋子

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784122072152
ISBN 10 : 4122072158
Format
Books
Publisher
Release Date
June/2022
Japan
Co-Writer, Translator, Featured Individuals/organizations
:

Content Description

きみはなぜ、まぶたを閉じて生きると決めたの―。かつて愛し合い、今は遠く隔たった「私」と「ぼく」。交わす言葉、ぬくもりの記憶、十四通の手紙から、やがて浮かび上がる哀しい秘密に、どこであなたは気づくでしょうか。互いの声に耳を澄まして編み上げた唯一無二の物語。その執筆過程を振り返る著者対談を収録。届くはずのない光をとらえ、偶然が必然に変わる、純水のように豊かな小説世界。

【著者紹介】
小川洋子 : 1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞

堀江敏幸 : 1964年、岐阜県生まれ。「熊の敷石」で芥川賞、『雪沼とその周辺』で谷崎潤一郎賞、『正弦曲線』で読売文学賞、『その姿の消し方』で野間文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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Book Meter Reviews

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

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  • あすなろ@no book, no life.

    魅力的なお二方が手紙をそれぞれ綴るという形式で構想・構成された作品。いきなり後書からであるが、書き出し手の小川氏は何も堀江氏に構想を告げずに描いた物を送って、堀江氏はそれを受けて描き始めたとの事。それでこれだけの作品となる事が凄い。内容としては、お二方が投げられたボールを柔らかく受け止めながら、内に秘めたる狂おしい愛を描き表していく様が読者の胸に迫る。ある種のもどかしさと共に。これに対峙するには読み手として、静謐な一定の長い時間を用意した方が良い、という作品だった。これだけのお二方の文通を読むのだから。

  • rico

    かつて愛し合い今は逢えなくなった、一組の男女がかわした14通の手紙。それは、小川さんと堀江さんが互いの知と精神をもって全力で対峙し、つくりあげた結晶のような世界。言葉と思考がきらめく光の粒となってふりそそぐ。つかもうと伸ばした手をすりぬけ、二人が出会ったあの湖の深奥に消えていく。身体機能の一部を失うことで、より純化された形で世界の真実に近づけるのだろうか。チェレンコフ光、アンネの日記、まど・みちおの詩。繰り返されるいくつかのモチーフ。終わりの予感、その先にほの見える永遠。静かな哀しみの予感が満ちてくる。

  • aika

    まぶたを閉じて生きることに決めた「私」から、光を失った「ぼく」へと送られた一通の手紙。別れから永い時を経た再会の往復書簡は、大空を飛んでいく鳥の翼を想起させます。かつて愛し合ったふたりの手紙に宿る、アンネの日記やまど・みちおの詩など「点」としてそこに存在するはずのモチーフからどんどん線が伸びて繋がっていくようすに、星座が散りばめられた夜空のような果てのなさと深さを感じました。読者は、時には「私」になり、「ぼく」になり、そのどちらでもない外縁で世界をぽうっと眺めている。そんな読書時間は、至福のときでした。

  • エドワード

    ブラタモリで見た、ニュートリノを測量するカミオカンデ。巨大な研究施設でボートに乗り合わせた男女が文通を始める。男は怪我で失明し、女は自分の意思でまぶたをおろす。二人の驚くほどインテリジェンスあふれる手紙の旅。文系の私にはついていけないよ。宇宙飛行士から始まり、実験動物、チェレンコフ光、船舶気象通報に渡り鳥(梨木香歩さんの名前が嬉しいね。)、飛んで飛んで途切れない話題に脱帽だ。それでいて、二人は音楽を愛する詩人である。来世で二人は、塩分を求めてカメの涙を飲むアマゾンの蝶とカメに転生していることだろう。

  • JADE

    女と男の往復書簡。読み始めは、とりとめのない話の連続に戸惑った。切手の縁のギザギザ、アンネ・フランク、ニュートリノを検出する大水槽。よくわからないながらも、物静かで美しい文章に惹かれて読み進めた。少しずつ、二人の過去や関係が明らかになる。高齢者であること、かつては共に暮らしていたこと、不幸な事故がきっかけで別れたこと、女性の寿命が尽きかけていること。言葉の端々から、この二人は、今も深く愛し合っていることが伝わってくる。二人の生涯が幸せだったかは分からないけれど、こんな人生の終い方も素敵だなと思った。 ☆4

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