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老女マノン・脂粉の顔 他四篇 岩波文庫

宇野千代

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784003122228
ISBN 10 : 4003122224
Format
Books
Publisher
Release Date
June/2019
Japan
Co-Writer, Translator, Featured Individuals/organizations
:

Content Description

父親の暴力、継母と異母弟妹に感じる疎外感、幼すぎた不幸な結婚、代用教員時代に見た社会の不正義など、自らの生い立ちを主たるモチーフとした中短篇。大正10年のデビュー作「脂粉の顔」から昭和3年発表の「老女マノン」まで、全集未収録作品を含む、社会派的視点も鮮やかな、宇野千代(1897‐1996)の知られざる初期作品群。

(「BOOK」データベースより)

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Book Meter Reviews

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  • 藤月はな(灯れ松明の火)

    貧しい事、孤独である事、不誠実な過去の自分を引きずる事、そして女である事を抱えてこの世で生きていく辛さと静かな怒りに満ちた短篇集。どの短編も泣き怒り混じりの溜息が聞こえてきそう。「墓を発(あば)く」は唖の久太君が学校に来たくても来られなくなった理由に絶句。お偉いさんの気まぐれに翻弄され、効率主義の悪弊で苦しむ人はいつの世も変わらんのか・・・。そして亡くなった母に対して腹違いの姉の激しい憎悪の叫びは、親を憎んだ事がある人にとって泥むものがあるだろう。「巷の雑音」も夢でしか鬱憤が晴らせない現実が辛すぎる。

  • shizuka

    あの穏やかでお美しい宇野千代さんが若かりし頃の小説集。若さとは力を常に孕んでいる。そして弾ける時を待っている。この小説はとても強い。時に攻撃的でもある。彼女が感じていた憤りに直面し対処に困ることもあった。けれどその一方どこかで安堵している私もいる。ああ千代さんにも怒りの遣りどころに悩み、苦しんでいた時があったのだと。若さとは人間らしさをより感じられる時代でもあるんだ。その時代を通り抜けないと真の穏やかさにはたどり着けない。千代さんの生き様に私は私の指針を見出す。怒れ!暴れろ!そして、笑みを湛え全てを赦せ。

  • hasegawa noboru

    これが宇野千代作品か、ずいぶん印象が違うなと思いながら読んだ。一〇〇篇近くもある初期作品の中から、作者自らの意図で全集第一巻に収められたのはわずか一五篇だという(解説・尾形明子)。なるほど。本文庫も表題作二篇以外の四篇は全集に入っていないとのこと。その一つ「巷の雑音」(一九二二年作)。<呆れるほど安い工賃>ミシン縫い請負仕事や西洋料理店女給の過酷な労働の実態が女主人公お絹の直情を通して生々しく(観念的でなく)描かれる。<何処でも、金と白粉のある世界では、女は媚びを売らないでは生きて行かれなかった>その女性

  • 大臣ぐサン

    宇野千代の初期作品、『脂粉の顔』『墓を発く』『巷の雑音』『三千代の嫁入』『ランプ明るく』『老女マノン』の6作品を所収。大正時代の女性小説家らしく、プロレタリア文学とフェミニズム文学の合いの子という印象。フェミニズム文学と言えども大正時代は男性との対比を持ってしか女性のアイデンティティを表現することが出来ないという点が、皮肉でもある。大正デモクラシーの華やかかりし時代でありながらも、その文学には一様に曇りが見られ、後の世を暗示しているようにも思える。

  • たく

    抑圧と理不尽、それを憎む女主人公が生々しく描かれていた。生々しさに、眉間に皺を寄せながら読んだ。暴力や接待が社会的に当たり前ではなくなった今でも、型にハマった社会に残る悪習慣に男女問わず腹黒いことを考えていると思うと少し怖いが。でも耐えるのでなく訴えないと気づかれないのも確か。この本は当時の社会の一端を訴えてくれているので、「いい時代になった」で終わらせないようにしないといけない。 読んでいて気が重くなるけど良い。

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