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雪の階 上 中公文庫

奥泉光

User Review :4.0
(1)

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784122069992
ISBN 10 : 4122069998
Format
Books
Publisher
Release Date
December/2020
Japan
Co-Writer, Translator, Featured Individuals/organizations
:
奥泉光 ,  

Content Description

昭和十年。華族の娘、笹宮惟佐子は、富士の樹海で陸軍士官とともに遺体となって発見された親友・寿子の心中事件に疑問を抱き、調べ始める。富士で亡くなったはずの寿子が、なぜ仙台消印の葉書を送ることができたのか。寿子の足どりを追う惟佐子と探偵役の幼馴染、千代子の前に新たな死が…。二・二六事件前夜を舞台に描くミステリーロマン。

【著者紹介】
奥泉光 : 1956年山形県生まれ。国際基督教大学大学院比較文化研究科修了。86年『地の鳥 天の魚群』でデビュー。93年『ノヴァーリスの引用』で野間文芸新人賞、94年『石の来歴』により芥川賞を受賞。2009年『神器』で野間文芸賞、14年『東京自叙伝』で谷崎潤一郎賞、18年『雪の階』で毎日出版文化賞、柴田錬三郎賞をダブル受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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昭和10年の秋、伯爵令嬢の笹宮惟佐子は富士...

投稿日:2021/04/15 (木)

昭和10年の秋、伯爵令嬢の笹宮惟佐子は富士山の樹海で陸軍士官と心中した親友の宇田川寿子が、その直前に全く方向が違う仙台で葉書を投函していたことに疑問を抱く。そこで、真相を知るために、惟佐子の幼少期の「おあいてさん」だった女性カメラマン千代子に協力を依頼する。しかし、来日したドイツ人ピアニストの急死、調査に協力してくれていた男性の不可解な死が相次ぎ… 2.26事件の前夜を背景にした作品でミステリーの要素も兼ね備えている。ただ、ミステリー的な意味での面白さは、文庫版の上巻までで、下巻になると失われていく。上巻の末尾辺りから漂うある種の違和感、異様さは、下巻になると加速していく。下巻の半ばあたりでは五木寛之の『戒厳令の夜』を思い出す部分もある(ただ、同作はアナーキーなのに対し、本作には不気味だ)。提示された謎に関しても、最終的に未消化の部分もあるし、惟佐子という人格に関してもどこか納得できない。もちろん、その心性が不可解であっても構わないのだが、それを読者に納得させるものが必要なのであって、それが惟佐子にあるか、と問えば疑問である。 もちろん、あの時代を背景にこういった物語を構築した著者の力量は認めるものの、どこか釈然としない部分が残る作品だった。

ねも さん | 兵庫県 | 不明

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Book Meter Reviews

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

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  • rico

    独特の、少し古風な感じのする文体が最初ひっかっかたけど、すぐ気にならなくなる。ぐいぐい引き込まれる。大正デモクラシーの残滓が排斥され、軍部が力を持ち、挙国一致で戦いに向かうための準備が着々と整えられていた昭和初期。美しき伯爵令嬢を中心に、その一族、心中した親友、暗躍する政治家や軍人たち、幼なじみの女性カメラマン、ドイツの音楽家、ヒトラーの影、不思議な幻影・・・。様々な要素が重層的にからまり合い、不穏な空気をまといながら、加速していく。この先には87年前のあの事件が待っている。下巻へ進みます。

  • みつ

    数学と囲碁が得意な伯爵家令嬢を主人公に据えた戦前(昭和10年前後?)の物語。流麗な文章の美しさにまず魅せられる。青年将校たちの語る理想国家論は、この先間もなく起こる大事件を予期させながら、意外な展開へ。政界の黒幕でありながら娘に敬語で接する伯爵の描写も面白いが、二章になって初めて登場する女性カメラマン千代子と男性新聞記者蔵原がふたりで謎を追う際の会話で、物語は俄然魅力的に。殊に互いの「心の声」(「これほどいい音をさせて沢庵を齧る人を自分はかつて知らぬ」とは千代子の食べっぷりへの感想)が物語に生気を与える。

  • ゆきらぱ

    始まりのページからがっちり引き込まれてしまいました。明治神宮外苑近くの公爵邸の音楽会で華族の娘・惟佐子の登場が着ている色留、持っているキリムのバッグなど細かに描かれて鮮やかでした。その上、惟佐子は美しいが数学好きで虫も平気、自分の部屋は和室が好みという惹きつけられるギャップをばっちり持った二十歳の女性で行動が気になりひたすらに読みました。途中から出てくる千代子、女子美出の記者ですがこちらの登場で更に面白く。さて、舞台は日の光と書く日光。すごく気になるところで「つづく」になってしまった。下巻楽しみ〜

  • 白いワンコ

    冒頭から「ギュンター・シュルツ」「ピタゴラスの天体」「オルペウスの音階」そして「心霊音楽協会」…困惑と魅惑に激しく音立てる血流!そういえばこの時代性!!と沸き上がる歓喜を抑えられない!!!垣間に散らばるクラシック・ジャズの音楽要素に心踊らせ、一見固いが知る人にはこの上なくユーモラスな文体も嬉しい限りなのに、それでいて極上ミステリー作品なのだから、そりゃ血圧も上がるというものですわ…

  • Shun

    昭和10年、華族の娘・惟佐子は親友・寿子の心中事件を不審に思いひそかに調べ始める。報道によると傍らで亡くなった男は以前、茶の席で惟佐子に演説をぶった陸軍士官であったことが分かり、その印象から二人に何があったのか見当もつかない。この事件を追うと同時に父・笹宮伯爵が熱く弁を振るう天皇機関説だの国体だのと昭和初期の陸軍が増長してゆく風潮にも注目します。これから起きるであろう二・二六事件前夜という雰囲気が緊張を否応なく高め、また自然描写一つとっても厳かで張り詰めた世界を感じさせる表現凄まじく、とても雰囲気が良い。

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