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新版 歌集てのひらを燃やす

大森静佳

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784048841832
ISBN 10 : 4048841831
Format
Books
Release Date
June/2018
Japan

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Book Meter Reviews

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  • ちぇけら

    種のない葡萄の果汁滴れるきょうという日にきみがいること。はなれていくからだにきもちが追いつかないので、きょうも2人ぶんの夕食をたべる。きみがいつか死ぬことを思うと、軽石を川に投げこんで安心したふりをする。もう失うことのない空が暮れはじめたら、鈴蘭灯が赤く光っていて綺麗だね。って話したいきみはああずっと遠い。夕暮れの間だけは、遮光カーテンの奥で一緒にくっついていたかったし。綺麗なものが消えきったあとで、わたしを見て微笑むきみが欲しかったし。性愛がさびしくて、きみのはきだす震えた夜が、だいすきだったんだ。

  • 碧緑(あおみどり)

    大学四年間の、自身の恋愛を詠んだ短歌が多く収められている。学問について詠んだ歌もあるが、わずか。友人や旅行など、学生生活を正面から詠んだものは皆無と言っていいのでは。ほとんどが恋と自分の内面関連、なのにそれほど鬱陶しさを感じないのは、著者独特の大胆なスタイルがあるのかも。女子大生のプライバシーを無理やり覗かせられている感じはない。個人的な経験を詠みながら、景が大きい、広い。豆腐やてのひらを詠んだとしても、果てしない広がりを感じさせるのが作者の力だと思う。上手い歌人の、みずみずしい底力をみた気がした。

  • かなしみはいつも怒りを追い越して水田の面に輪を落とす雨|塗り絵のように暮れてゆく冬 君でないひとの喉仏がうつくしい|忘れていい、わたしが覚えているからと霙の空を傘で突きゆく|マネキンの脱衣うつくし夜の隅にほの白い片腕をはずされ|ひとの頬打つ熱を知らぬてのひらが風中に白き櫂となりぬ|憎むということがあまりにたやすくて素足を水辺に残して来たり|声変わりせぬおとうとと別れ来て真冬の万華鏡のしずけさ|声は舟 しかしいつかは沈めねばならぬから言葉ひたひた乗せる|ひらがなは漢字よりやや死に近い気がして雲の底のむらさき

  • 双海(ふたみ)

    著者は平成元年、岡山県生まれ。「京大短歌」「塔」短歌会所属、現在編集委員。平成22年に第56回角川短歌賞を受賞。第一歌集『てのひらを燃やす』で、歌人協会賞、歌人クラブ賞、歌人集会賞受賞。「約束はもっとも細きゆびでせり白詰草の辺の夕明かり」「言葉より声が聴きたい初夏のひかりにさす傘、雨にさす傘」「手鏡を折りたたむとき閉じ込めたあれがほんとうの月夜だった」

  • マコ

    ひかり、風、雨、植物、町、傘、夏などの単語が印象的だった。たまにキリスト教的な雰囲気の歌があった気がした。背景にやがてなりたしこの街をあなたと長く長く歩いて/途切れない小雨のような喫茶店会おうとしなければ会えないのだと/雨脚が細くなりゆくつたなさにふたりはひとりよりもしずかだ/ひかりをあたえるように檸檬へ包丁の刃を差し込みぬ君を帰して/言葉より声が聴きたい初夏のひかりにさす傘、雨にさす傘/その声の箒のようなさみしさの奥まで夏の雨沁みてゆく/生きている間しか逢えないなどと傘でもひらくように言わないでほしい

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