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小説家の帰還 古井由吉対談集 講談社文芸文庫

古井由吉

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784065372487
ISBN 10 : 4065372488
Format
Books
Publisher
Release Date
October/2024
Japan

Content Description

小説家としての新境地に至った『楽天記』の連載中の1991年2月から4月にかけて、古井由吉は頸椎間板ヘルニアにより約50日間の入院を余儀なくされる。その経験は小説『楽天記』そのものに影響を及ぼしたであろうことは予想に難くないが、直接的には連載完結後の1992年に次々と雑誌に掲載された対談において詳しく語られることになる。
本書冒頭に置かれた江藤淳との「病気について」はそのストレートな表題もさることながら、病が精神にいかに影響するかという体験を、一見嬉々として語り合っているだけのようだ。しかし、それは迂回しながら肉体というものの本質に迫ろうという試みであったろう。
次の吉本隆明との「漱石的時間の生命力」では直接的に古井の病については触れられていない。しかし、モチーフは「夏目漱石」である。非常に精神的に追い詰められた感のある文学者をめぐるやりとりである。また、漱石を扱うということで、先の江藤との対談をひそかにではあるが承けてもいる。ここでは静かに不穏な空気が満ちていくのである。
続く平出隆との「「楽天」を生きる」と松浦寿輝との「「私」と「言語」の間で」は、年少のきわめて鋭敏な感覚を持つ詩人と、胸襟を開いて会話を楽しんでいるように見える。平出とは『楽天記』という作品について、また松浦とは古井流の散文表現そのものについて、それぞれ深いところまで語っている。
解剖学者養老孟司との短い対談「身体を言語化すると‥‥」では、身体と文学作品の関係についてテンポよく展開されている。使われる表現も平易で、とてもわかりやすい。
掉尾を飾る大江健三郎との「小説・死と再生」は、同時代を生き、かつ年齢の近いもっともすぐれた小説家同士による対話であり、まさに談論風発、小説という表現についてあらゆる角度から話そうとする試みが、読む者を元気づけてくれる。この二人の小説家が歩んだのは、けっして楽な道ではなかったろうが、振り返ってみると素晴らしい旅だったのではないかと想像できるのである。
1990年代初頭という現代日本の曲がり角において作家古井由吉の感じていたリアルを追体験できる貴重な言葉の集積として、この『小説家の帰還 古井由吉対談集』は2024年に再生するのである。


【著者紹介】
古井由吉 : 1937・11・19〜2020・2・18。小説家。東京生まれ。東京大学大学院修士課程修了。大学教員となりブロッホ、ムージル等を翻訳。文学同人誌「白猫」に小説を発表。1970年、大学を退職。71年、「杳子」で芥川賞受賞。黒井千次、高井有一、坂上弘らと“内向の世代”と称される。77年、高井氏らと同人誌「文体」を創刊(80年、12号で終刊)。83年、『槿』で谷崎潤一郎賞、87年、「中山坂」で川端康成文学賞、90年、『仮往生伝試文』で読売文学賞、97年、『白髪の唄』で毎日芸術賞を受賞。長年競馬を愛好したことでも知られる。また、東京・新宿の酒場において2000年11月から10年4月まで10年近く計29回、毎回ゲストを招いて続けた朗読会でホスト役を務めた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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Book Meter Reviews

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

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  • amanon

    ちょうど今の僕と同じ年齢の時の対談を収めたものとということで、一抹の感慨を覚える。しかも、それが大病を患った後であるので尚更。いみじくも同じく大病から回帰した冒頭の江藤潤との病気談義はなまじ飄々とした語り口であるがため、その病状のヘビーさがリアルに伝わってくる感がある。そしてこの対談のもう一つのテーマである『楽天記』という小説のタイトルに込められた意味の深さに驚嘆。あの小説をもう一度読み返したくなった。また、本書で幾度となく私小説家であることの自負やその意義について語っているのが面白い。深掘りが必要。

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