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半自叙伝 河出文庫

古井由吉

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784309415130
ISBN 10 : 430941513X
Format
Books
Publisher
Release Date
February/2017
Japan

Content Description

見た事と見なかったはずの事との境が私にあってはとかく揺らぐ。あるいは、その境が揺らぐ時、何かを思い出しかけているような気分になる―空襲に怯え、敗戦の焼跡を走りまわった幼年期、文学との出会いと高度経済成長の時代、そして現在まで。老年と幼年、重なりゆく記憶の中に作家は何を読み、自身の創作をどう生きてきたのか。魂の往還から滲む深遠なる思考。

目次 : 1 半自叙伝(戦災下の幼年/ 闇市を走る子供たち/ 蒼い顔/ 雪の下で/ 道から逸れて/ 吉と凶と/ 魂の緒/ 老年)/ 2 創作ノート(初めの頃/ 駆出しの喘ぎ/ やや鬱の頃/ 場末の風/ 聖の祟り/ 厄年の頃/ 秋のあはれも身につかず)

【著者紹介】
古井由吉 : 1937年東京都生まれ。71年「杳子」で芥川賞、83年『槿』で谷崎潤一郎賞、87年「中山坂」(『眉雨』所収)で川端康成文学賞、90年『仮往生伝試文』で読売文学賞、97年『白髪の唄』で毎日芸術賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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Book Meter Reviews

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

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  • keroppi

    昨年2月に82歳で亡くなられた古井由吉さん。まだ、小説は少ししか読んでいないのだが、図書館に置かれていたこの本に手が伸びた。「半自叙伝」と題されているのは、いわゆる自叙伝ではないということだろう。過去の記憶が蘇り、それは今の時代とも響き合う。東日本大震災を「幼年と老年の間を魂が往復しそうなほどの長さにわたって揺れ続けた。」という感性に惹かれてしまう。もう少し小説も読んでみたい。

  • やいっち

    優れた作家の自叙伝。作家の悪戦苦闘ぶりがひしひしと感じられた。だが、読む順番を間違えた。吾輩はまだ、古井由吉の作品をわずかしか読んでいない。もっといろんな作品を読んでから再読、味読したい。

  • Bartleby

    古井由吉のあの身体感覚を細密に言語化した文章はどこから出てくるのだろうと、『沓子』を読んで衝撃を受けて以来、気になっていた。それは作者が登山を好み、よく体を動かすからだろうと思っていたが、本書に詳しいように、眼や頚椎をよく壊したからというのもありそうだ。一所にじっととどまることでしか見えないものがある。対して幼い頃に空襲から逃げ回った経験。彼の小説はいつも、動は静であり静は動であるという命題に貫かれている。そしてその両極はともに、狂気を招き寄せるおそろしい予感に満ち満ちている。

  • きくらげ

    文章の端々に常に戦災の影が潜んでいる。一応自叙伝である中にも人の訃報の記述が殊の外多く現れるのも、非常時が口を開ける時としてそこへ通じるからなのではないか。危機の訪れる喧騒と不安、その中での気怠さ、終わってまた元の日常に戻ろうとするあっけなさへの訝りは、直接戦火に脅かされた点を除けばコロナを経験した今なら素直に了解できる。非日常を消化しきれないまま反芻して日常が続いた結果、老いていくのだとすると、老いについて考えることは絡まりあった時間の受け止め方を探ることでもあったりするのだろうか。

  • kri

    古井由吉を敬愛してやまない小説家達が多くいて、その訳の一端でも掴めたら…と手始めに。相当の昔に作品を読んだ時は自分のリズムに合わず、頓挫した。自分の経た年月が多少でも理解力の肥やしになったのか、この作品には没頭。実は訃報で拝見した顔写真の意外に愛嬌ある笑顔がきっかけでもある。この「半自叙伝」にも底に流れるユーモアがある。深く自分を見詰める真摯さと隣り合わせに自分を俯瞰して笑いとばせる余裕を感じた。生死の極限的状況をくぐり抜けた戦時下での幼年体験が常に根本にあり、それ故の達観なのだろうか。次は小説を読む

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