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スミヤキストqの冒険

倉橋由美子

User Review :5.0
(1)

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784061960060
ISBN 10 : 4061960067
Format
Books
Publisher
Release Date
February/1988
Japan

Customer Reviews

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滑稽なまでに“思想”を妄信するQが、Q以...

投稿日:2009/05/12 (火)

滑稽なまでに“思想”を妄信するQが、Q以上に滑稽でグロテスクな生物が生息する“社会”を旅する冒険談(笑)。雑然とした想念の砂漠を突き進むQの姿は、「ヒト」という生物と「ヒトの棲む社会」の虚無と悲哀を浮かび上がらせる。デビュー作『パルタイ』では記号に過ぎなかった“Q”が、本作では生命感をもって描かれている。重層的に解釈が可能な、読み応えのある長編。

M さん | 所在地 | 不明

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Book Meter Reviews

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

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  • ヴェネツィア

    近代以降の日本文学史上屈指の奇書である。これに比肩するものは即座には思いつかないが、しいて言えば『家畜人ヤプー』か。ヤプーにしても、これに比べればマイルドなのだが。本書が生理的なまでに読者に嫌悪と強い違和感をもたらすのは、それが自己の内なるものが残酷なまでに暴き出されたからである。この文学空間は安部公房のそれと一見似ていなくもないようだが、その質において大いに違う。安部の明るく乾いた世界に対して、これはほの暗く陰湿な世界である。しかも、そこでは徹底して意志の疎通が拒絶されている。この世界の背後にあるのは⇒

  • HANA

    「党」からの指令によって孤島の感化院に就職したQ。ただその感化院が尋常ではなく…。いや凄いわ、この内容。Q自体はイデオロギーを除けば普通の言動なのだが、感化院内部の登場人物の言動や行動が独特の論理で貫かれていて、まさに奇想小説の域まで達してしまっている。読みながら想像するのはやはりカフカの『城』や阿部公房。独特の感化院の構造からラストまで目が離せない。登場人物の思想や行動は発表当時の社会情勢やイデオロギーを鑑みるに深読みできそうだが、本書を一番楽しむにはやはり著者の言うようにそのままを受け取る事だと思う。

  • いたろう

    本日(2014/4/18)開催の奥泉光×いとうせいこう「文芸漫談」のお題となっていたため再読。一見、マルクス主義の諷刺のように見えて、作者自身が言及している通り、この小説の意図は全くそこにはない。奥泉、いとう両氏の『主人公Qが、とんでもないことを色々「体験」するが、「経験」(=知識の蓄積)には全くならない。登場人物たちの浮遊する思弁も全く意味をなさず、言葉も小説の文体も全てイロニーで覆われている。』という話がすごく腑に落ちた。

  • おたま

    スミヤキ党から密命をおびてH感化院に到着したスミヤキストQ。しかし、そこで待っていたのは、スミヤキストの観点からは完全に逸脱した生活だった。常軌を逸した人々の在り方や発言に、Qは時に嘔吐感をもよおし、時に不条理を感じる。退廃しきった(とQに感じられる)H感化院で、Qは革命を起こすべく画策し始めるが、その「革命」すらQの思惑を超えた狂乱と不気味さを帯びて進行する。Qは目の前の存在を受け止めることができずに、ひたすら空転する。それがQの「冒険譚」。

  • なる

    『ドグラ・マグラ』を彷彿とさせるような孤島における感化院を舞台にしたクローズド・サークル然とした幻想小説。オリジナルの言葉であるスミヤキズムという単語を前面に、その思想を持つスミヤキストの主人公Qによる感化院での騒動という一連の流れを持っているストーリーではあるけれど、スミヤキズムという信念がありながらもQの感情は恐ろしく淡白で、登場する感化院の職員たちも純粋悪の象徴たる院長を除いてキャラ立ちはありながらも上滑りする不思議な感覚に陥る。最初から最後まで脳が二つの階層で認識しているような不思議な本。

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