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ラディカル・オーラル・ヒストリー 岩波現代文庫

保苅実

Product Details

ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784006003807
ISBN 10 : 4006003803
Format
Books
Publisher
Release Date
April/2018
Japan
Co-Writer, Translator, Featured Individuals/organizations
:
保苅実 ,  

Content Description

「ケネディ大統領がカントリーに来た」。一見「誤った」アボリジニ長老の物語りに直面したとき、試されているのは彼らではなく私たちである。その語りに耳を澄ませば、それが私たちが日常で行う“歴史実践”と本質的に等価であることが浮かび上がる。近代知の権力性を超えて、異なる他者と対等に繋がり合う―困難な問いを、楽しさと喜びに満ちた挑戦として鮮やかに描き出す。

目次 : 第1章 ケネディ大統領はアボリジニに出会ったか―幻のブック・ラウンチ会場より/ 第2章 歴史をメンテナンスする―歴史する身体と場所/ 第3章 キャプテン・クックについて―ホブルス・ダナイヤリの植民地史分析/ 第4章 植民地主義の場所的倫理学―ジミー・マンガヤリの植民地史分析/ 第5章 ジャッキー・バンダマラ―白人の起源を検討する/ 第6章 ミノのオーラル・ヒストリー―ピーター・リード著『幽霊の大地』より/ 第7章 歴史の限界とその向こう側の歴史―歴史の再魔術化へ/ 第8章 賛否両論・喧々諤々―絶賛から出版拒否まで

【著者紹介】
保苅実 : 1971年生まれ。新潟大学教育学部附属小・中学校、新潟県立新潟高等学校、一橋大学経済学部卒。1996年一橋大学大学院経済学研究科修了。2001年オーストラリア国立大学歴史学博士号取得。1999年から2003年まで、オーストラリア国立大学太平洋・アジア研究所(人類学科、歴史学科)、人文学研究所に客員研究員として、2002年からは日本学術振興会特別研究員として慶應義塾大学に所属。2004年5月、病気によりオーストラリア・メルボルンにて逝去。同年7月、オーストラリア国立大学にて豪州の先住民族研究者対象の保苅実記念奨学金が設立された。研究領域:オーストラリア先住民族、少数民族、多文化主義、ポストコロニアル研究、サバルタン研究、オーラル・ヒストリー、「記憶と歴史」論、歴史人類学、エスニック・アイデンティティーなど(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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Book Meter Reviews

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  • ほし

    読むと自らの歴史観、ひいては価値観が揺さぶられる一冊。アボリジニの長老が、ケネディ大統領が過去に村に来た、という明らかに「史実」と異なる歴史を語る時、それをどう聞くことが出来るのか。筆者はアボリジニがいかに日々の中で身体を媒体とした「歴史実践」を行っているかを明らかにし、そこには近代実証主義とは異なる仕方での「歴史への真摯さ」があるとしています。ギャップごしのコミュニケーションを志向する筆者の姿勢は、エビデンスがしばしば他者の排除に使用される現代において、ひとつの希望として見出させるように思います。

  • かんがく

    素晴らしい一冊。歴史を専門にしてきた人間だからこそ、著者によって伝えられるアボリジニの歴史叙述には大きく揺さぶられた。自分のいる座標が大きくズレるような読書体験は気持ちが良い。史実、事実、真実などの前に極めて「誠実」な本と著者。その誠実さに親しみと好感を持っていただけに、後書きを読んで癌で夭逝したことを知り、友人の死のように衝撃を受けた。次はスピヴァクに挑戦しよう。

  • 柳田

    つぶやきに書いたが、刺激的な本だった。オーラル・ヒストリーの試み自体は、歴史学の中でも行われていたらしいが、著者は、アボリジニの語る歴史を人類学のように神話として包摂するのではなく、近代歴史学の実証的歴史記述と同じように位置づけることができないか、と問う。博士論文をもとにした本で、博論の書評とか、「幻のブック・ラウンチ」とか色々載っているが、博論の中身は二章分くらい。具体的な分析も載っているのだけれど、本書は新しいプロジェクトの「序説」であって、単行本は2004年だが、後続の研究状況はどうなのだろう。

  • Mentyu

    本書は相対主義による断絶を乗り越えるための、誠実な傾聴を軸とした、コミュニケーション・ツールとしての歴史学の、実践の書ということになるだろう。もっとも、西洋の合理的歴史学と異なる、人間以外の様々なアクターが介在する歴史実践については、アボリジニ同様、西洋ではない日本でも伝統的に存在してきたものとも言える。そこに煩悶したことが、日本の近代化だったはずである。本書にあった違和感としては、筆者の立場性が完全に西洋に立脚しており、筆者自身を構成するはずの、非西洋である日本が感じられなかったところだったかと思う。

  • Ñori

    本書は歴史学の存在論的転回であり、転回前と転回後の対話の可能性を示唆したものである。フィールドに出れば、必ず史実としては成立していない「語り」と出会う。しかし、史実性を伴うものだけが「歴史」であるとして客観性のみを追求するのではなく、「尊重」という多文化主義的ゆえに新植民地的な思考に陥るのでもなく、サバルタンの歴史実践に真摯に向き合うというのはどういうことなのか、本書は語る。 保刈氏と自分が重なるように感じるところも多く、終盤にいくにつれ、胸が詰まった。今年出会った本の中で最高の1冊。

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