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他界心理学 井上亮の臨床への予見

井上亮

Product Details

ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784422118536
ISBN 10 : 4422118536
Format
Books
Publisher
Release Date
November/2025
Japan
Co-Writer, Translator, Featured Individuals/organizations
:

Content Description

本書は、優れた心理臨床家でありながら54歳という若さで早逝した著者が、1985〜95年にかけておこなった極めて独創的かつ予見的な内容の講義録から抜粋編集したものである。

著者の「他界心理学」という発想は、生と死の境界で自我が揺らぐ離人症という重篤な病の研究を起点として生み出された。従来の心理学の理論や概念だけでは捉えきれない病の根源にあるものを理解しようとするとき、この40年近くも前に生み出された「他界心理学」の構想が、心理臨床実践にとって今なお古びることなく、むしろ新たな視点と多くの気づきを与えてくれることに、きっと驚かされることだろう。

「他界」とはいったい何なのか。
自分は今なぜここに居るのか、現世だけでなく生まれる前や死んだ後まで含めて人間の存在を広く深く考える視点。見えない世界や宇宙的なつながりを通じて自分がどこにいるのかを見つめ直す透明なまなざし。現実の世界だけではなく、それを支える見えない世界(=他界)への観点なくして現代の心の病は捉えられないのではないか、現代社会におけるさまざまな精神疾患の背景には、「他界」との断絶によるたましいの問題があるのではないか、著者はそう指摘している。

生と死は一方向ではなく循環し、儀礼や祭りはこの循環を維持し「他界」とつながる役割を果たしてきた。しかし、現代ではその機能が弱まり、見えない世界を想像することで支えられていた心の現実感が失われてしまい、さまざまな心の病を生み出している。

日本の民俗文化では他界は「青(おう)の世界」として、祭りや儀礼を通じてたましいが往還するとされている。心理臨床の現場では、セラピストは現実の世界と目に見えない世界(=他界)とを行き来してその媒介的役割を担い、見えない世界の支えを感じながらクライエントとともに歩むことが重要なのだというのが、この「他界心理学」構想の中心にある。

著者は、そうした「媒介的役割」の生きた姿を求めて頻繁にアフリカや東南アジアにフィールドワークに出かけ、呪医(シャーマン)になるためのイニシエーションまで受けて現代の心理療法の本質的な問題を探究しようとした稀有な臨床家であった。志半ばにして病に倒れたが、臨床心理学の枠を超え、異文化や伝統的な治療法に関心を持ち続けた彼の業績は、今なお多くの人々に影響を与え続けている。

【著者紹介】
井上亮 : 大阪女子大学学芸学部人間関係学科教授(1985〜2002年)。京都大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。1989年8月〜1990年7月までの1年間、西アフリカ・カメルーン共和国にて在外研究に携わる。2002年1月16日逝去

井上靖子 : 兵庫県立大学大学院教授。大阪女子大学大学院文学研究科社会人間学専攻修士課程修了。博士(人間科学)学位授与(大阪府立大学大学院人間社会システム科学研究科)。臨床心理士。公認心理師

森岡正芳 : 立命館大学人間科学研究科客員教授。京都大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。京都大学博士(教育学)。臨床心理士。公認心理師

濱野清志 : 京都大学法学部および教育学部を卒業後、京都大学大学院に進み臨床心理学を学ぶ。京都大学助手を経て、九州大学助教授。2002年4月から京都文教大学教授。臨床心理士。京都大学博士(教育学)。「気」をめぐって心理臨床のあり方を考えることを研究と実践の軸としている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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