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幽女の如き怨むもの ミステリー・リーグ

三津田信三

User Review :5.0
(1)

Product Details

Genre
ISBN/Catalogue Number
ISBN 13 : 9784562047963
ISBN 10 : 4562047968
Format
Books
Publisher
Release Date
April/2012
Japan

Content Description

戦前、戦中、戦後にわたる三軒の遊郭で起きた、三人の花魁が絡む不可解な連続身投げ事件。誰もいないはずの三階から聞こえる足音、窓から逆さまに部屋をのぞき込む何か…。大人気の刀城言耶シリーズ最新書き下ろし長編。

【著者紹介】
三津田信三 : 2001年に『ホラー作家の棲む家』でデビュー(文庫化の際に『忌館ホラー作家の棲む家』と改題)。ホラーでありながらミステリ的な仕掛けにもこだわる独特の語り口で注目を集める。『厭魅の如き憑くもの』にはじまる刀城言耶シリーズの長編第5作『水魑の如き沈むもの』で第10回本格ミステリ大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

(「BOOK」データベースより)

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三津田信三の作品にはいつも舌を巻かされる...

投稿日:2013/01/07 (月)

三津田信三の作品にはいつも舌を巻かされる。今回だってそうだ。ほんの一つの鍵、そのとっかかりは何度となく明瞭に提示されているのに、その姿は巧妙に覆い隠されている。だまされることの快感、最初から、眼前にぶらさがっていた答を、あらためて指摘される屈辱に似た快感。それは、読者をまるで子供時代に誘うかのよう。多くのことに興味を示し、多感で、簡単に驚くことができた子供時代に。生来の感性に沿った興奮の喚起。それが三津田作品の神髄だろう。 この作品も良くできている。読んでいて、最初、少し長いように思う前半の様々な記述は、結局は、いずれもが必要なピースとなる。最後になって、何もないと思われたとこところに、それらのピースが組み合わさって、見事なモザイク画が完成する。 ホラーの要素を含ませるため、たっぷりとした味付けや演出は施されているが、その演出が決して過剰で唐突なものではなく、舞台の雰囲気を醸成するのに存分な効果を上げている。屋敷の中にある闇は、目の前にあるなにかを覆う読者の心の壁と通じ、なんとも暗示的。この煙幕の張り方はどうだ? 作者は、物語を巧妙に練り上げる一方で、その舞台となる遊郭について、よく勉強もしている。花魁を取り巻く閉鎖世界について、真摯に精緻に描いており、その成果は、多層的に引き出されている。登場人物たちが、その世界をどのように認識しているか。そこを描けるかが大きなポイントだったに違いないが、作者はこれに成功した。 事象の積み重ねによって現象を解釈していく論理性をスコラ的厳密への歩み寄りだとるすと、幻想の奔放を交えた本書の物語は、ゴシック精神への畏敬とも読み取れよう。これからも、この作家の作品からは、目が離せない。

ココパナ さん | 北海道 | 不明

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Book Meter Reviews

こちらは読書メーターで書かれたレビューとなります。

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  • 藤月はな(灯れ松明の火)

    最初の手記で遊女の客を取る前の「儀式」や「寝る」という意味、堕胎の描写に自分の中で痛さと屈辱と恥ずかしさ、哀しみなどのごちゃごちゃしたもので目の前が真っ暗になりそうになりました。苦界に身を沈める意味とその壮絶さと諦めを様々な人々が経験したという事実が今もある。このシリーズ特有の「齟齬を埋めて真相に辿り着くが真の怪異は知らず」というパターンが失われていて残念です。

  • stobe1904

    刀城言耶シリーズの最新作。戦前、戦中、戦後の遊郭で起きた事件を作中作を読み解きながらストーリーが展開される。前作までのホラー色が全面に出るようなトーンから一転して、綿密な取材で積み重ねた遊郭や花魁の詳細が異様なほどのリアリティで迫ってくる。それでもやはり刀城言耶シリーズなので、ホラー色はないが、不可思議な謎をきれいに収束させる力量はさすがなもの。前作まで読んでいる読者にはぜひおすすめ。次作を首を長くして待っているのだが、いつ出版されるのだろうか?

  • 瑞佳

    「花魁は時間を越え 繰り返し 身を投げる――」ミステリとしてよりも当時の風俗絵巻として興味深く読んだ。彼女らにとっては、まさに生き地獄のような日々。なぜ女性がこれほどまでに理不尽な目に遭わなければならなかったのだろう。同性として耐えがたい憤りと恐怖と屈辱にふるえる。それはそれとして、あんなとんでもな謎に対してどうやってオチをつけるのかと思ったらば、はー、そういうことかー。おみごと。怪異としてはじゃっかん薄めな印象だったが、ひじょうに読みごたえがあり重く辛い物語だった。

  • ヒロユキ

    言耶シリーズおなじみの多重どんでん返しがないのは少し物足りないけど、その分謎解きが一つのキーワードに集約されていて一度のどんでん返しだけでも充分な衝撃でした。一章の日記では一冊の小説になりそうなほどの文量なのにそれを感じさせない面白さ。推理小説としてだけでなく花魁、遊廓を描いた物語としても興味深い作品です。

  • *maru*

    シリーズ長編6作目。戦前、戦中、戦後の三つの時代。金瓶梅楼、梅遊記楼、梅園楼の三軒の店。初代、二代目、三代目の三人の緋桜。別館三階の特別室からの身投げ。“三”尽くしの不可解な連続身投げ事件を、初代緋桜の日記、梅遊記楼女将の語り、作家佐古荘介の原稿の三つの視点で描いた本書。大好きな花魁や遊廓が絡む事件なので前半はとても読み応えがあったし、刀城さんの解釈が物足りなく感じるほど佐古氏の原稿の余韻も格別だった。怪異色は薄れたが、現実味のある着眼点でミステリとしては納得できる結末なのも好印象。お見事でした。

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