L'enfant Et Les Sortileges: Maag / Rome Rai.so, Mesple, Etc +ma Mere L'oye

ペーター・マークのラヴェル！
『子供と魔法』＆『マ・メール・ロワ』

ユニークなオペラ『子供と魔法』は、母親に叱られた少年が、腹いせに食器や壁紙、本、時計など、部屋中のものに八つ当たりし、さらにペットまで虐待するという蛮行の果てに、壊されたものや苛められたペットに復讐されるという幻想を主軸とした物語。最後は、暴力的な少年も優しい心に目覚めてハッピーエンドという筋書きですが、登場する役柄がユニークで寓意に富んでいることや、オーケストレーションがきわめて精緻で雄弁であることから、通常のオペラ・ファンだけでなく、コンサート物のファンの方にも人気が高い作品となっています。そういえばかの吉田秀和氏もこの『子供と魔法』を高く評価していましたし、ＣＤも、いわゆる「コンサート指揮者」の録音が多いのがユニークなところです。

　アンセルメのアシスタントも経験したスイス人、語学の達人ペーター・マークの指揮ぶりは、どちらかというと劇場的側面よりも室内楽的な繊細なものですが、共演のRAIの歌心というのか、時として騒がしくなることも辞さない、愉悦がそこここにあふれ出る魅力的な組み合わせといえるでしょう。歌手陣も、常にアンサンブル重視というマークの厳しい眼の光る中、器楽的な精妙さに腐心する様子はなかなかのもの。
　カプリングの『マ・メール・ロワ』も美演。チェリビダッケやジュリーニの神経質なそれでいて雄大な大河的演奏の対極にあるテンペラメントに富んだ輝かしくも慶びに満ちた演奏で、思わぬ拾い物。

ラヴェル
■歌劇『子供と魔法』(全15トラック)
坊や：アンドレ・オーブリー・ルッキーニ(Ms)
お姫様：マディ・メスプレ(S)
中国の茶碗他：ジェニヴィヴ・マコー(Ms)
小人の老人：ミシェル・セネシャル(T)他
ペーター・マーク指揮ローマRAI響
（1963年3月16日、ローマにおける演奏会形式上演のライヴ録音（ステレオ）

■組曲『マ・メール・ロワ』
ペーター・マーク指揮ローマRAI響
（1963年3月16日　ローマにおける演奏会形式上演のライヴ録（ステレオ）