War And Peace: Vick Gergiev / Kirov Opera Prochina Bogachova Gergalov Borodina

ゲルギエフ/プロコフィエフ：歌劇『戦争と平和』
[通常品番 DLVC-1107/税込￥10,290]
作品
　19世紀初頭のロシアを舞台に、戦争とさまざまな人間ドラマを絡めて描く類例のない規模に達した壮大なオペラ。トルストイの原作はきわめて長大なもので、プロットに忠実に映画化された1965年のソ連製映画ではその長さは実に7時間に達していましたが、オペラでは長さは5分の3ほどに刈り込まれて見やすいものとなっているのがポイント。
　さらに登場人物も明快な方向に整理され、原作では500を超えていたキャストも7分の1程に凝縮、ストーリーの流れをよりドラマティックなものとすることに成功しています。
　プロコフィエフの音楽も非常に優れたもので、『ロメオとジュリエット』の素材などを効果的に交えながら、美しくリリカルかつ強烈にスペクタクルという、レンジの広大な音楽を構築しています。合唱を多用して、マスとしての大きさや奥行きを巧みに演出しているのも見逃せないポイントで、平時と戦時、民衆と貴族、シリアスとコミカル、愛と憎しみといった具合に相対する要素を雄弁をきわめたオーケストラと共にコントラスト豊かにまとめあげていてまったくだれることがありません。

演奏＆演出
　当ディスクに収録された映像は、サンクト・ペテルブルグにあるロシアの名門、キーロフ歌劇場での1991年の上演を収録したもので、指揮はプロコフィエフの音楽を偏愛し、いまやそのエキスパートと目されるまでになった熱血指揮者ワレリー・ゲルギエフが担当。サイトウキネンの『イェヌーファ』でも話題をさらったプロキナや美声のボロディナなど、声に恵まれた歌手陣を率いて覇気に富む演奏を聴かせてくれています。
　演出は世界的なキャリアを誇る英国人演出家、グラハム･ヴィックによるもので、豊かな色彩と明快な象徴性を持たせたティモシー・オブライエンの美術をベースに混乱のない舞台構築を実現、グラインドボーンで鍛えた求心力の強い演出手法が、長大な作品の引き締めに効果も十分です。

あらすじ
　妻の死で失意のどん底にあった貴族アンドレイは、1810年のある夜、ロストフ伯爵家を訪れ、18才になった令嬢ナターシャの美しさに魅せられます。その年の大晦日、ナターシャはペテルブルグの社交界にデビューすることとなり、舞踏会でアンドレイと再会、親の反対を押し切って婚約するものの、一年間の猶予を命じられてニ人は引き離されてしまいます。
　その間、ナターシャはアナトール公爵の誘惑に負けて駆け落ち寸前の親密な関係にまで陥りますが、アンドレイの無二の親友であるピエールが彼女の無思慮な行動をやさしく諌めてなんとか事態を収拾。
　1812年、ナポレオン軍がロシアに侵攻し、各地でロシア軍が敗退する中、名将クトゥーゾフはモスクワ焦土作戦を決意。戦闘で重傷を負ったアンドレイは、不実の許しを求めにきたナターシャに愛を誓いながら息絶えます。
　やがて、ナポレオン軍はロシアの冬の過酷な寒さに耐え切れず敗退し、ロシア軍の戦勝と民衆の歓呼が続く中、ナターシャはアンドレイの親友、ピエールと結ばれて幕となります。

プロコフィエフ：歌劇『戦争と平和』全2部13場
ミハイル・クトゥーゾフ公爵：ニコライ・オクホトニコフ
アンドレイ・ボルコンスキー公爵：アレクサンダー・ゲルガロフ
ナターシャ：エレーナ・プロキナ
ピエール：ゲガム・グレゴリアン
エレン・ベズーホワ：　　オルガ・ボロディナ
マリア・ドミートリエヴナ・アフローシモア：　　イレーナ・ボガチョーヴァ
ニコライ・ボルコンスキー公爵：ウラディミール・オグノヴェンコ
合唱：キーロフ歌劇場合唱団
バレエ：キーロフ歌劇場バレエ団
演奏：キーロフ歌劇場管弦楽団
指揮：ヴァレリー・ゲルギエフ

演出：グラハム・ヴィック
美術：ティモシー・オブライエン
衣装：ヴァレンティナ・コモロワ

収録：1991年サンクトペテルブルグ・マリインスキー劇場

カラー/リニアPCMステレオ/4：3/片面2層2枚組/253分/日本語字幕（歌唱：ロシア語）