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ISBN 10 : 4845924234
Content Description
アニメーターはいかに生まれ、アニメーションはどのように戦時下の国民文化となったのか?
社会学の視点からアニメーションと戦争、そして国家との関係を見つめ直す
現在、日本では年間300本以上のアニメーション作品が放映されており、その人気は国内にとどまらず、世界中で高い評価を得ている。
1963年に放映された『鉄腕アトム』以降、日本のアニメーション業界は大量生産が可能な体制を確立していく。その原動力となったのが、アニメーション制作における分業体制の導入である。そして、そのなかでも特に重要な役割を担い、大量生産に不可欠だったのが「アニメーター」だった。
この分業体制の確立と、専門職としての「アニメーター」の誕生は、戦時中にさかのぼり、そこで制作されたのはプロパガンダ映画だった。
アニメーションと戦争、そして国家は、きわめて密接な関係にあるといえる。
本書では、戦時期にアニメーションを取り巻く環境がどのように変化したのかを明らかにする。国家の文化政策、アニメーターという職業の誕生、配給システムの変化、そして戦時下に制作された『桃太郎 海の神兵』をはじめとするアニメーション作品の分析を通して、文化がいかに制度化されるか、つまりアニメーションが国民文化となっていく過程を浮き彫りにする。その流れのなかで、アニメーションの日本起源説、かわいい動物キャラクターが生む効果、アニメーションと教育の関係など様々な論点にふれ、より深くアニメーションと日本との関係を捉え直していく。
また、日本の状況だけでなく、戦時下のフランスのアニメーションについても論じるのが本書の特色だ。国家が介入することにより制作体制が確立されるだけでなく、植民地へのまなざしの変化、自国文化の優位性の確保、敵国人の描き方など、日本との共通性を明らかにする。加えて、高畑勲や宮ア駿が影響を受けたフランスの巨匠ポール・グリモーの『やぶにらみの暴君/王と鳥』についても論じ、戦時中から続くアニメーションにおける空間表現の特質を照らし出す。
こうした歴史的視点を踏まえ、戦中戦後の連続性を指摘するだけでなくアニメーションの舞台を巡る「聖地巡礼」や現代のアニメーターの労働状況、宮ア駿の監督最新作『君たちはどう生きるか』といった作品にも言及し、現代におけるアニメーション文化の展開についても考察する。
気鋭の社会学者による、アニメーションや戦時下の文化の研究者だけでなくアニメファンも必読の一冊。
【著者紹介】
雪村まゆみ : 関西学院大学大学院社会学研究科博士課程後期課程修了、博士(社会学)。現在、関西大学社会学部教授。専門は、文化社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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